
インフレ局面の投資判断、キャッシュフローは実質で割引率は名目という不整合を正す
物価と金利が上がり始めると、同じ投資案件でも去年より評価が悪く出る。多くの場合、原因は案件より計算の前提にある。割引率を名目で置くなら、キャッシュフローも名目で組む。そのうえで、価格転嫁できる費目とできない費目を分け、減価償却の節税効果は膨らませない。

物価と金利が上がり始めると、同じ投資案件でも去年より評価が悪く出る。多くの場合、原因は案件より計算の前提にある。割引率を名目で置くなら、キャッシュフローも名目で組む。そのうえで、価格転嫁できる費目とできない費目を分け、減価償却の節税効果は膨らませない。

粗利率は同じなのに、回収に4か月かかる大口顧客のほうが本当に儲かっているのか。売掛金の残高に資本コストを掛けると、顧客の順位は入れ替わる。回収条件の差を採算に載せ、値決めと条件交渉に使う手順をまとめる。

買った設備は減価償却費として部門損益に載り、資産として部門のバランスシートにも載る。リースの設備は賃借料として費用に載るだけだ。定率法なら使い始めの数年は買った部門の利益が大きく沈み、ROIC評価ではさらに不利になる。物差しをそろえる方法を示す。

利益率で評価すると、部門長は今の率を下回る新規事業や大口受注を避け、率の低い顧客を切って率を上げる。額で評価すると、資本を積み増して額を買う行動に歯止めがかからない。率は価格と原価の規律、額は投資と資源配分を見る指標として役割を分けて使う。

買収した子会社は、のれん償却と買収資金のコストを載せなければ永久に好調に見え、載せれば責任者が自分で決めていない買収価格の責任まで負う。償却額は回収の物差しにならないため、運営成績と買収の成否を別の損益で測り、宛先も分ける。

確定給付を続けることは、本業の外に運用ポートフォリオを一つ持ち続けることでもある。金利上昇で積立比率が改善した会社ほど判断を先送りしやすい。期待運用収益率や割引率、資本コストを並べて考えたい方へ。

部門評価に資本チャージを一行足すと、在庫と売掛は初めてコストになる。使用資本の範囲、レートの刻み方、評価に使う在庫の数字を会計と税務のどちらで作るか。この三つを決めずにROICを掲げても現場は動かない。

時価評価済みの株を売っても純資産の合計はほとんど動かないため、使い道を資本配分方針に紐づけないと一過性の利益で終わる。自社の有価証券報告書は、すでに売却候補を公表しているとも言える。政策保有株式の縮減を進める会社のための手順。

還元は残余ではなく順序の設計である。成長投資が資本コストを超える限り内部留保を優先し、案件が枯れた分を還元に回す。総還元性向を軸に、一貫した方針を投資家に示したい会社のための考え方。

投資家が見ているのは過去の業績ではなく資本の未来である。全社平均で語る説明や「すべて重要」という配分方針では伝わらない。業績報告のIRを資本市場との対話に変えたいCFOのための手引き。