
現場にどこまで数字を見せるか|部門損益の公開範囲を決める判断軸
公開範囲を機密性で切ると、現場が動かせる数字まで落ちる。管理可能性で切ると、残すべきものが残る。ただし外側に二つの壁がある。社内の報告単位は事業セグメントの判定材料になり、未公表の全社数値を配ることは受け取った側の立場を変える。

公開範囲を機密性で切ると、現場が動かせる数字まで落ちる。管理可能性で切ると、残すべきものが残る。ただし外側に二つの壁がある。社内の報告単位は事業セグメントの判定材料になり、未公表の全社数値を配ることは受け取った側の立場を変える。

実際原価の確定を待つ限り締めは遅れる。原価計算基準は標準原価によるたな卸資産評価と記帳の迅速化を目的として挙げており、原価差異は原則として当年度の売上原価に賦課する。決めるべきは精度ではなく、どの差異なら概算のままで月次の意思決定を誤らせないかという線引きである。法人税基本通達5-3-3は、原価差額が総製造費用のおおむね1%相当額以内なら調整を要しないとしており、外から与えられた数値基準はここにしかない。

購買の報告額と粗利の改善額が合わないのは、購買が盛っているからではない。値下げの効果は在庫の中に入り、標準単価の改訂で基準に飲まれ、数量の増減と混ざる。三つの出口をそれぞれ数字で切り分けないと、コストダウンは毎年報告されて毎年消える。

外注のほうが安いという試算は、たいてい単価表の読み違いから出ている。社内原価には止めても消えない固定費が入っており、外注単価と並べた瞬間に内製が負ける。比べるべきは、止めれば実際に消える現金支出と、外注で新たに出ていく現金支出の差だけだ。空いた人と設備の使い道が決まるまで、削減額は計上しない。

実地棚卸の差異を経理が雑損で吸収している限り、来年も同じ差異が出る。監基報501は、継続記録と実地棚卸数量の差異を内部統制の運用が有効でないことの示唆と位置づける。原価性の判定も原因が特定できなければ下せない。経理が処理してよいのは、原因が付いた差異だけである。

設計段階の原価は原価計算基準の外にある。基準二は特殊原価調査を制度の範囲外と明記しており、月次の仕組みからは出てこない。だから原価企画は改善活動でなく、目標原価の合意と未達時の判断を開発ゲートの決議事項に置く設計問題になる。

標準原価の年1回改訂は慣行であって制度の要請ではない。原価計算基準四二のトリガーは事象であり、材料価格や賃率に重大な変化が生じたときは期中でも改訂する。ただし動かすのは価格標準だけ。物量標準を期中に動かすと、差異が能率を測れなくなる。