科目が細かい予実管理表は、会議で使いにくい。行が増えるほど、どの差異について何を決めるのかが読み取りにくくなるからだ。筆者は、会議に出す表の科目を、打ち手を決める単位まで束ね、明細は別の表に置く作り方を勧めている。この記事では、その考え方に沿って、予実管理表に載せる項目、科目と部門の並べ方、表計算ソフトでの作り方を設例で示す。

この記事の要点
  • 予実管理表に載せる項目は、予算・実績・差異・着地見込み・コメントの5つである。
  • 筆者は、科目を会議で打ち手を決める単位まで束ね、明細は別の表に置く作り方を勧めている。
  • 表計算ソフトで作るときは、入力・集計・表示のシートを分ける。

予実管理そのものの意味と、月次の会議の進め方は予実管理が形骸化する3つの理由と、差異を打ち手につなぐ進め方で扱った。この記事は、そこで使う表の設計に絞る。

予実管理表に載せる項目

予実管理表とは、予算と実績を同じ科目と同じ期間で並べ、差異と年度末の見通しを1枚で確かめるための表である。行には損益計算書の科目を上から置き、列には比較する数字を置く。

予算、実績、差異の3つを並べれば、差異を出すところまではできる。そこから打ち手を決めるところまで追うには、着地見込みとコメントが要る。載せる項目を5つに分けて、定義を表にまとめた。

項目置く列定義
予算当月、累計、年度期初に決めた月別の予算。年度の途中では原則として書き換えない
実績当月、累計会計システムで確定した月次の数字
差異当月、累計売上と利益は「実績 − 予算」、費用は「予算 − 実績」。利益を増やす向きをプラスで示す
着地見込み年度当月までの実績の累計に、残りの月の見込みを足した年度末の予測。予算との差を隣に置く
コメント行ごと差異の種類と原因、打ち手、担当、期日
筆者による整理。列の呼び方と並べ方は会社によって異なる。

列は、左から当月、累計、年度の着地、コメントの順に並べる。左から右へ読むと、今月起きたこと、続いていること、年度末の見通し、次に行うことの順に確かめられる。

予実管理表は、左から当月、累計、年度の着地、コメントの順に並べる
STEP 1
当月
予算・実績・差異。今月起きたことを確かめる
→
STEP 2
累計
期首からの予算・実績・差異。続いている差異を確かめる
→
STEP 3
年度の着地
年度の予算、着地見込み、その差。残りの期間で埋める差を確かめる
→
STEP 4
コメント
差異の種類と原因、打ち手・担当・期日。決めたことを残す
右の2つが無い表は、差異を出すところで役目を終える。

設例で示す。4月に年度が始まる会社の、6月の予実管理表である。1枚の表のうち、当月と累計、年度の着地の部分を2つに分けて載せる。コメント欄は、あとの「コメント欄」の節で示す。

科目(単位:百万円)当月の予算当月の実績当月の差異累計の予算累計の実績累計の差異
売上高10092△8300285△15
売上原価6056+4180172+8
売上総利益4036△4120113△7
人件費2020060600
販売促進費68△21821△3
その他の販管費87+12423+1
営業利益61△5189△9
科目(単位:百万円)年度の予算着地見込み予算との差
売上高1,2001,165△35
売上原価720702+18
売上総利益480463△17
人件費2402400
販売促進費7275△3
その他の販管費9695+1
営業利益7253△19
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。差異は利益を増やす向きをプラス、減らす向きを△で示した。

当月の営業利益は予算より5百万円少なく、累計では9百万円少ない。年度の着地見込みは53百万円で、予算の72百万円に19百万円届かない。会議で話す対象は、当月の5百万円の説明よりも、年度で19百万円の差をどう埋めるかである。

達成率と前年同月の実績は、足してもよい列である。達成率は売上と利益の行で予算への届き方を見るのに使える。前年同月の実績は、季節による増減が大きい事業で、予算の月別の配分が妥当だったかを確かめる材料になる。列を足すほど表は横に広がるので、会議で使わない列は載せない。

科目と部門の並べ方

行に置く科目は、会計システムの勘定科目をそのまま並べない。会議で打ち手を決める単位まで束ねる。設例の表では、販売費及び一般管理費を、人件費、販売促進費、その他の販管費の3行にまとめている。

束ねる単位の目安は、差異が出たときに動く人が決まるかどうかである。販売促進費はマーケティングの責任者が、人件費は採用と配置を決める責任者が動く。旅費交通費と通信費を別の行に分けても、それぞれに別の打ち手を決める場面が無いなら、1行にまとめてよい。

束ね方は、対応表として残しておく。対応表の設例を示す。

表の行束ねる勘定科目差異が出たときに動く人
人件費役員報酬、給料手当、賞与、法定福利費、福利厚生費採用と配置を決める責任者
販売促進費広告宣伝費、販売促進費、販売手数料マーケティングの責任者
その他の販管費地代家賃、減価償却費、旅費交通費、通信費、支払手数料、消耗品費管理部門の責任者
設例。科目名と束ね方は架空のもので、実際の対応は各社の科目体系と責任の分け方に合わせて決める。

勘定科目ごとの明細は捨てない。別のシートに同じ月の予算と実績を持っておき、束ねた行で差異が出たときに、内訳を確かめるために開く。会議に出す表と、原因を調べるための表を分けるということである。

同じ数字でも、行の束ね方で会議での使いやすさが変わる
細かい表勘定科目をそのまま並べる
販管費が勘定科目の数だけ行になる。小さな差異が並び、どの行について打ち手を決めるのかが読み取りにくい。行ごとに責任者が決まっていない。
束ねた表打ち手を決める単位で並べる
販管費を人件費、販売促進費、その他の3行にまとめる。行ごとに動く人が決まっている。内訳は明細のシートで確かめる。
会議に出す表は束ね、勘定科目ごとの明細は別のシートに置く。

部門の並べ方も、同じ考え方で決める。部門別の表は、売上や費用に責任を持つ人が決まる単位で分け、行の並びは全社の表と同じにする。行の並びがそろっていれば、全社の表で差異の大きい行を見つけ、同じ行を部門別の表でたどれる。

全社の表と部門別の表の合計が一致することも確かめる。本社の費用を各部門に配賦している場合は、配賦する前の利益と、配賦した後の利益を別の行にしておく。部門の責任者が自分で動かせる費用と、配賦で決まる費用が混ざると、差異を自分の課題として受け取りにくくなると筆者は見ている。

月次と累計、着地見込みの見せ方

当月の列だけでは、その差異が今月だけのものか、続いているものかが分からない。累計の列を隣に置くと、見分けやすくなる。

計上する月が予算と前後しただけの差異は、翌月以降に反対の向きで出て、累計では消える。設例の売上高は、当月の差異が△8、累計の差異が△15である。4月と5月の合計でもすでに7百万円の未達があり、当月だけの差異ではないことが読み取れる。差異を時期のずれ、数量、単価に分ける方法は予算未達の差異を数量・単価・構成・タイミングに分解し、翌期の打ち手につなぐ手順にまとめた。

着地見込みは、当月までの実績の累計に、残りの月の見込みを足して出す。設例の売上高は、累計の実績285に、7月以降の9か月の見込み880を足して1,165である。同じ9か月の予算は900なので、見込みは残りの期間でも20の未達を織り込んでいる。累計の未達15と合わせて、年度では35の差になる。

着地見込みの列は、予算の列を書き換えて作らない。予算は目標として残し、見込みは予測として別の列に持つ。2つを別に持つから、差が出せる。見込みの置き方と精度の上げ方はフォーキャスト(着地見込み)の精度を上げる、予算と分けて毎月更新する予測で扱った。

12か月を横に並べた月別の推移表は、会議に出す1枚とは別のシートに置く。月別の推移は、季節の動きや、差異がいつから始まったかを確かめるときに使う。会議に出す1枚に12か月分の予算と実績を並べると、列が増えて当月の差異が埋もれる。

表計算での作り方

表計算ソフトで予実管理表を作るときは、数字を入れる場所、集計する場所、見せる場所を分ける。1枚のシートに貼り付けと数式と手入力が混ざると、どのセルを直してよいかが分からなくなる。

作る順番

作る順番は次の6つである。

  1. 行を決める。会議で打ち手を決める単位まで科目を束ね、対応表に書く
  2. 列を決める。当月、累計、年度の着地、コメントの順に置く
  3. 入力のシートを作り、月別の予算を入れる
  4. 月次が締まったら実績を貼り、集計のシートで束ねた行ごとに合計する
  5. 表示のシートに差異の式を入れ、基準以上の差異に色を付ける
  6. コメント欄を置き、書く人と期限を決める

行と列を先に決めるのは、表の形が会議で決めることに合っていないと、あとの式をすべて作り直すことになるからである。この記事の設例の表は、行と列の並びをそのまま雛形として使ってよい。行の科目は、自社の会議で打ち手を決める単位に置き換える。

シートの分け方

シートは、入力、集計、表示の3種類に分ける。

シートは入力・集計・表示の3種類に分ける
STEP 1
入力のシート
月別の予算、会計システムから出した実績、残りの月の見込み、科目の対応表を置く
→
STEP 2
集計のシート
対応表に沿って、束ねた行と月ごとに合計する。数式だけを置く
→
STEP 3
表示のシート
会議に出す1枚。集計のシートを参照し、差異と着地見込みを計算する
土台金額は入力のシートにだけ入れ、集計と表示のシートでは上書きしない。
数字を直すときは入力のシートに戻る。表示のシートで直すと、翌月に同じ修正が要る。

入力のシートには、予算、実績、見込みを別々に持つ。実績は、会計システムから出した科目別・月別のデータを、形を変えずに貼る。貼ったデータの右に列を1つ足し、対応表から束ねた行の名前を引く。この列があれば、集計のシートでは行の名前と月を条件にして合計できる。

集計には、条件に合う金額を合計する関数を使う。ExcelではSUMIFS関数がこれに当たり、Microsoftのサポートページは、複数の検索条件に一致するすべての引数を合計する関数だと説明している。実績のシートのA列に月、B列に勘定科目、C列に金額があり、足したD列に束ねた行の名前を引いてあるとすると、当月と累計の式は次のようになる。月は、各月の1日の日付で持つ。

当月:=SUMIFS(実績!$C:$C, 実績!$D:$D, $A5, 実績!$A:$A, $B$1)
累計:=SUMIFS(実績!$C:$C, 実績!$D:$D, $A5, 実績!$A:$A, ">="&$B$2, 実績!$A:$A, "<="&$B$1)
出典:Microsoft サポート「SUMIFS 関数」(Microsoft、2026年10月2日確認)。式は設例で、集計のシートのA5に行の名前、B1に対象の月、B2に期首の月を入れた場合である。B1とB2も、実績のシートのA列と同じく各月の1日の日付で入れる。

対象の月をB1の1か所に持つと、月が替わったときに直すセルが1つで済む。月ごとにシートを複製する作り方に比べ、式の直し漏れが起きにくい。

差異と達成率の式

差異は、行の種類で式の向きを変える。売上と利益の行は「実績 − 予算」、費用の行は「予算 − 実績」にすると、どの行でもプラスが利益を増やす向き、マイナスが減らす向きになる。行ごとに式を書き分けると直し漏れが出やすいので、符号の列を持ち、売上と利益の行には1、費用の行には−1を入れておく。5行目のB列に予算、C列に実績、D列に差異、K列に符号があるとすると、式は次のようになる。

差異 :=(C5-B5)*$K5
差異率:=IF(B5>0, D5/B5, "")
達成率:=IF(B5>0, C5/B5, "")

設例の当月の売上高は、差異が△8、差異率が△8.0%、達成率が92.0%である。営業利益は予算6に対して実績1なので、達成率は16.7%になる。

予算が0かマイナスの行では、差異率と達成率を空欄にする。0では割れず、マイナスの予算で割ると率の意味が読み取れなくなるためである。こうした行は差異の金額で見る。

費用の行の達成率は、高いほど予算を超えている
達成率を「実績 ÷ 予算」で計算すると、売上の行では100%を超えるほど良く、費用の行では100%を超えるほど予算を超えて使ったことになる。設例の販売促進費は、予算6に対して実績8で、達成率は133.3%である。同じ列に向きの違う数字が並ぶと読み違えやすい。費用の行には達成率を表示しないか、列の名前を消化率に変えて区別する。

色は、基準以上の差異にだけ付ける。表計算ソフトの条件付き書式を使い、差異の金額と率があらかじめ決めた基準以上になった行を目立たせる。マイナスの差異をすべて赤くすると、色の付いた行が増え、どの行から見ればよいかが分かりにくくなる。

コメント欄

コメント欄は、差異の列の隣に置く。書く内容は、差異の種類、原因、打ち手、担当、期日である。設例の表のコメント欄を示す。

行当月の差異差異の種類原因打ち手担当期日
売上高△8時期△3、数量△6、単価+1検収が翌月になった案件が3百万円分。新規の受注が計画に届かなかった既存の顧客20社に追加の提案を出す営業部長7月末
売上原価+4時期、数量検収が翌月になった案件の原価と、売上の数量の減少に伴う減少売上高の行で扱う--
販売促進費△2数量展示会の出展を1回追加した下期の出展計画を見直し、年度の予算に収める案を出すマーケティング部長7月15日
設例。単位は百万円。内容は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

この設例では、コメントを書く基準を「当月の差異が予算の5%以上、かつ2百万円以上」と置いた。プラスの差異も対象にする。売上総利益と営業利益は内訳の行で説明が付くので、対象から外している。その他の販管費は差異率が12.5%だが、金額が1百万円なので書かない。基準は設例であり、金額と率をどこに置くかは、自社の科目と部門の規模に合わせて決める。

コメントを書くのは、その行の差異に責任を持つ部門の責任者である。表を取りまとめる経営企画や経理が代わりに書くと、原因が表の数字の言い換えになりやすいと筆者は見ている。打ち手、担当、期日の3つは、会議で決まったことを会議のあとに書き入れ、翌月の会議の最初に確かめる。

表が使われなくなる原因

作った予実管理表が会議で開かれなくなることがある。筆者は、原因を3つに分けて見ている。

1つ目は、行が細かすぎることである。勘定科目を足すたびに行が増え、1枚に収まらなくなる。直し方は、科目の束ね直しである。直近の3か月で、打ち手を決めた行と、決めなかった行を分ける。決めなかった行は、近い行にまとめて明細のシートへ移す。表が大きくなりすぎたときは、行を減らすところから始める。

2つ目は、数字の出どころが追えないことである。表示のシートで金額を上書きすると、会計システムの数字と表の数字が合わなくなる。合わない理由を説明できない表は、会議で数字そのものの確認に時間を使うことになる。入力のシートにだけ金額を入れる決まりにし、表示のシートのセルは保護しておく。

3つ目は、差異の先を書く列が無いことである。予算、実績、差異だけの表は、読んだあとに何をするかが書かれない。着地見込みとコメントの列を足し、空欄のまま会議を終えないようにする。

表計算の限界とシステムへの切り替え

表計算ソフトの予実管理表は、入力する人と表の種類が少ないうちは十分に使える。弱点が出るのは、部門と予算の版が増えたときである。

切り替えを考える兆しは4つある。ファイルが部門と版の数だけ増え、どれが最新かを人に聞かないと分からない。締めから差異の報告までの日数の大半を、集計と転記が占める。製品別や案件別の軸を1つ足すと、表の作り直しになる。数式を組んだ担当者が異動すると、表を直せる人がいなくなる。

当てはまるのが1つだけなら、この記事で示したシートの分け方と科目の束ね直しで解消することがある。複数が当てはまるなら、集計を仕組みに任せる検討を始めてよい。筆者は、表を作る時間が、差異を読んで打ち手を決める時間を上回ったときが、検討を始める目安になると考えている。

仕組みを替える前に、表の側で決めておくことがある。会議で何を決めるか、科目をどの単位まで束ねるか、着地見込みを誰がいつ更新するかである。この3つが決まっていない状態でシステムを入れると、決まっていない運用を画面に移すことになる。

よくある質問

表計算で予実管理表を作るには

行に束ねた科目、列に当月、累計、年度の着地、コメントを置く。シートは入力、集計、表示の3種類に分け、金額は入力のシートにだけ入れる。集計は条件に合う金額を合計する関数で行い、表示のシートで差異と着地見込みを計算する。対象の月を1つのセルで持つと、月が替わったときの直しが少なくて済む。

どの科目まで載せるか

会議で打ち手を決める単位までである。差異が出たときに動く人が決まる行は残し、別々に打ち手を決める場面が無い科目は1行にまとめる。勘定科目ごとの明細は別のシートに置き、束ねた行で差異が出たときに内訳を確かめるために使う。

差異率の許容範囲は

一律には決められない。同じ5%でも、売上高と少額の費用では金額の重みが違う。原因の説明を求める基準は、率と金額の両方で、自社の科目と部門の規模に合わせてあらかじめ決めておく。基準が無いと、説明する範囲が担当者によって変わる。

雛形はあるか

この記事の設例の表は、行と列の並びをそのまま雛形として使える。使うときは、行の科目を自社の会議で打ち手を決める単位に置き換える。ほかの雛形を使う場合も同じで、着地見込みとコメントの列が無ければ足す。

まとめ
  • 予実管理表に載せる項目は、予算・実績・差異・着地見込み・コメントの5つである。左から当月、累計、年度の着地、コメントの順に並べる。
  • 筆者は、科目を会議で打ち手を決める単位まで束ね、勘定科目ごとの明細は別のシートに置く作り方を勧めている。
  • 表計算ソフトでは、入力・集計・表示のシートを分け、金額は入力のシートにだけ入れる。

次に読むなら、月次の会議の進め方を扱った予実管理が形骸化する3つの理由と、差異を打ち手につなぐ進め方と、差異の分け方を扱った予算未達の差異を数量・単価・構成・タイミングに分解し、翌期の打ち手につなぐ手順を勧める。