期末を過ぎて数日たったころ、経理の誰かが去年のスケジューリング表を開く。前期の行をコピーして、今期の残高に置き換え、消えた差異を消し、新しい差異を探す。探すというのが実態で、総勘定元帳を上から眺めながら、税務調整が入りそうな科目に当たりをつけていく。この作業に毎期二日から三日かかり、そのあいだ税理士は待っている。この会社が遅いのは、税効果の計算が難しいからではない。計算に入る前の工程を、決算のたびにゼロから作り直しているからだ。

POINT
企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」第11項は、回収可能性を判断する具体的な手順を定めている。その(1)は「期末における将来減算一時差異の解消見込年度のスケジューリングを行う」である。以降、(2)将来加算一時差異のスケジューリング、(3)解消見込年度ごとの相殺、(4)繰戻・繰越期間の将来加算一時差異との相殺、(5)将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額との相殺、(6)繰戻・繰越期間の課税所得見積額との相殺、(7)相殺し切れなかった分の控除、と続く。一時差異の一覧を作る工程は、この手順のどこにも書かれていない。あることが前提になっている。 決算のたびに洗い出しから始める会社は、基準が定めた手順の入口に立つ前で毎回止まっていることになる。もう一つ、決定的な性質がある。同適用指針第3項(5)は、スケジューリング不能な一時差異を、税務上の益金又は損金の算入時期が明確でない一時差異として二つに定義する。①将来の一定の事実が発生することによって損金算入要件を充足することが見込まれるもので、期末に将来の一定の事実の発生を見込めないもの。②企業による将来の一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等の存在により損金算入要件を充足することが見込まれるもので、期末に一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等が存在していないもの。判定の基準時点は、いずれも期末である。期末を過ぎてから意思決定や実施計画を作っても、その期のスケジューリングには使えない。 そして(分類2)に該当する企業では、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は原則として回収可能性がないものとされる(第21項)。決算後に慌てて作る運用は、作業が遅いだけでなく、計上できる金額そのものを落としている。工程を変える。発生源の科目を指定し、伝票が立った時点で差異台帳に一行を足し、解消見込年度と根拠を同時に埋める。月次で更新し、決算では突合するだけにする。

基準の手順は、一覧があるところから始まっている

適用指針第26号を通しで読むと、繰延税金資産の回収可能性について、判断の考え方(第6項)、手順(第11項)、企業の分類(第15項から第32項)、項目別の取扱い(第35項以降)が、かなり細かく書き込まれていることが分かる。書かれていないものが一つある。一時差異をどうやって網羅的に把握するか、である。

これは基準の欠陥ではない。会計基準は、財務諸表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の金額との差額を一時差異と定義しており(第3項(2))、その差額は帳簿と申告調整から機械的に出るはずのものだからだ。基準の側から見れば、一覧は最初から存在している。

現実がそうならないのは、申告調整が期末にまとめて作られているからである。帳簿と税務の差は伝票の時点で発生しているのに、それを記録する場所が期中にない。だから期末に、記憶と経験で拾い直すことになる。拾い漏れが出れば繰延税金資産が過小になり、拾いすぎれば監査で戻される。どちらも、工程の設計の問題であって担当者の能力の問題ではない。

申告調整そのものを期中に分担する取り組みは、この問題の上流にある(税務申告と決算をつなぐ|申告調整を期末に慌てて作らない期中の分担)。一時差異の台帳は、その分担から自然に落ちてくる副産物として設計するのが早い。

スケジューリング可能かどうかは、期末時点で決まる

工程を前倒しすべき理由のうち、最も重いのがここだ。第3項(5)の定義は、判定の基準時点を期末に固定している。

条文の構造を追うと、二つの類型が置かれている。第一は、将来の一定の事実が発生することで損金算入要件を充足するもので、期末にその事実の発生を見込めないもの。第二は、企業による将来の一定の行為の実施についての意思決定または実施計画等の存在により損金算入要件を充足するもので、期末にその意思決定または実施計画等が存在していないもの。

第二の類型が実務では効く。期末時点で意思決定や実施計画が「存在していた」ことを、後から作ることはできない。 決算作業中に「そういえば来期売る予定です」と口頭で確認しても、期末に存在していた意思決定にはならない。

具体例が条文に置かれている。第36項(2)は、土地等の非償却資産の減損損失に係る将来減算一時差異について、売却等に係る意思決定または実施計画等がない場合にはスケジューリング不能な一時差異として取り扱うとしている。第37項は、役員退職慰労引当金に係る将来減算一時差異について、役員在任期間の実績や社内規程等に基づいて役員の退任時期を合理的に見込む方法等によりスケジューリングが行われている場合はその結果に基づいて判断し、行われていない場合はスケジューリング不能な将来減算一時差異として取り扱うとしている。

第13項ただし書きも同じ構造を持つ。期末において税務上の損金の算入時期が明確ではない将来減算一時差異のうち、貸倒引当金等のように、将来発生が見込まれる損失を見積もったものであるがその損失の発生時期を個別に特定してスケジューリングすることが実務上困難なものは、「過去の税務上の損金の算入実績に将来の合理的な予測を加味した方法等によりスケジューリングが行われている限り」、スケジューリング不能な一時差異とは取り扱わない、とされる。

裏を返せば、過去の損金算入実績のデータを持っていない会社は、この救済を使えない。実績は期中に積み上げるしかない。決算の三日間で作れる資料ではない。

発生源の科目を指定して、伝票の時点で一行足す

やるべきことは単純で、拾う場所を科目で先に決めることに尽きる。指定した科目に伝票が立ったら、差異台帳に一行を足す。埋める項目は五つでいい。科目、金額、解消見込年度、スケジューリング可否、そしてその根拠の所在(どの承認、どの規程、どの計画に基づくか)である。

一時差異の一覧は決算の成果物ではなく、月次で更新する台帳である。
STEP 1
発生源の科目を指定する
引当金・未払費用・評価損・減損・資産除去債務など、税務調整が発生する科目を先に列挙する。列挙は一度きりの作業で、以後は追加だけ
STEP 2
伝票の時点で台帳に一行
指定科目に起票したら、科目・金額・解消見込年度・スケジューリング可否・根拠の所在を同時に埋める。根拠は後から思い出せない
STEP 3
月次で残高と突合する
台帳の合計と勘定残高を月次で照合する。ずれた月に原因を潰す。期末にまとめて照合すると、どの月にずれたかが分からない
STEP 4
決算は突合と分類の適用だけ
差異一覧は既にある。決算で行うのは、当期の課税所得見積りを当てて分類ごとの取扱いを適用し、税理士へ渡すことだけになる
土台土台=スケジューリング可能かどうかは期末時点の事実で決まる。適用指針第26号第3項(5)は、スケジューリング不能な一時差異を、期末に将来の一定の事実の発生を見込めないもの、または期末に一定の行為の実施についての意思決定・実施計画等が存在していないものと定義している。決算後に意思決定を作っても、その期の判定には使えない。
工程を前に倒す目的は時間短縮ではない。期末時点で存在していた根拠を、期末までに残すためである。

台帳を作る手間を心配する声は必ず出る。実際には、指定科目の伝票は月に数件から十数件で、一件あたりの入力は一分もかからない。重いのは初回の棚卸しだけで、前期のスケジューリング表があれば、それが初期値になる。

問題は、根拠の欄を埋める習慣が定着するかどうかだ。金額と年度は後から復元できるが、根拠は復元できない。「なぜその年度に解消すると判断したのか」を書けない行は、監査で必ず戻ってくる。 引当金の見積り水準を誰が決めるかの社内ルールと同じ構造で、判断した人と記録する人を分けておくと定着しやすい(引当金の見積りは誰が決めるか|数字を作る人と水準を決める人を分ける社内ルール)。

運用上の注意が一点ある。スケジューリングの可否は期末時点の事実で決まるため、起票時に書いた可否は暫定値にすぎない。台帳には「起票時の可否(暫定)」と「期末の可否(確定)」の二列を持たせ、期末に再判定する。伝票の時点で埋めるべきなのは判定そのものではなく、判定に必要な根拠がどこにあるかである。ここを一列で運用すると、期末に意思決定が取り消された差異が可能のまま残る。

拾う科目と、伝票の時点で取るべき情報

指定する科目は、業種によって多少入れ替わる。骨格は次のようになる。右端の列が、期中にしか取れない情報である。

発生源の科目差異の性格伝票の時点で取る情報
貸倒引当金将来減算。第13項ただし書きの対象になりうる対象債権の相手先と評価区分、過去の損金算入実績を積む集計単位
賞与引当金将来減算。翌期に解消支給予定日
未払事業税将来減算。翌期に解消納付予定期
退職給付引当金(退職給付に係る負債)将来減算。第35項が例示する解消見込年度が長期にわたる差異数理計算上の支払見込みと、分類ごとの取扱いの前提
役員退職慰労引当金第37項。スケジューリングの有無で扱いが分かれる役員ごとの在任期間と、社内規程上の退任時期の見込み
棚卸資産評価損将来減算対象在庫の処分または販売の予定時期と、その決裁
減損損失(償却資産)第36項(1)。減価償却を通じて解消するためスケジューリング可能対象資産の残存耐用年数(固定資産台帳から取得)
減損損失(土地等の非償却資産)第36項(2)。売却等の意思決定・実施計画等がなければスケジューリング不能売却の意思決定または実施計画の有無と、承認した機関
資産除去債務将来減算除去の予定時期と、その根拠となる契約・法令
その他有価証券の評価差損第38項。銘柄ごとのスケジューリングが原則銘柄、期末時価、売却の意思決定の有無
減価償却超過額(建物等)第35項の長期差異固定資産台帳の償却スケジュール
税務上の繰越欠損金第11項後段。繰越期間にわたる控除見込年度のスケジューリング発生事業年度と繰越期限

固定資産に起因する差異は、台帳の設計次第で自動化できる領域が広い。会計上の簿価と税務上の簿価を資産単位で並べて持てていれば、償却を通じて解消する差異は解消年度まで機械的に出る。ここを手作業で持っている会社は、まずシステム側の設計を見直したほうが早い。

一方、意思決定に依存する差異(非償却資産の減損、役員退職慰労引当金、棚卸資産の処分予定)は、自動化できない。ここだけは、期末までに人が判断して記録するしかない。だから決算日程のなかに、期末より前に置くべきタスクとして立てる(決算スケジュール表の作り方:5日締めを支えるWBSとクリティカルパス)。

分類が、必要なスケジューリングの深さを決める

台帳をどこまで作り込むかは、自社がどの分類に該当するかで変わる。適用指針は、企業の分類ごとに取扱いを分けている。

両端は単純だ。(分類1)では繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとされ(第18項)、スケジューリングは金額の妥当性の確認に近い意味しか持たない。(分類5)では原則として回収可能性がないものとされる(第31項)。台帳の作り込みが効くのは、その間にある三つである。

(分類2)では、一時差異等のスケジューリングの結果に基づいて見積もった繰延税金資産に回収可能性があるとされる(第20項)一方、スケジューリング不能な将来減算一時差異は原則として回収可能性がないものとされる(第21項)。ただし書きにより、損金算入時期を個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、その時点で回収できることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合は回収可能性があるとされる。この「合理的な根拠」を用意できるかどうかが、(分類2)の会社にとって最大の論点になる。 根拠は期中に積む以外にない。

(分類3)では、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づき、その期間の一時差異等のスケジューリングの結果として見積もった繰延税金資産に回収可能性があるとされる(第23項)。5年を超える期間についても、課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)および当期の課税所得の推移等を勘案して合理的な根拠をもって説明する場合は回収可能とされる(第24項)。逆に、業績予測期間や予測能力、経営環境等を勘案した結果、5年以内のより短い期間が合理的な見積可能期間になる場合もある(第25項)。

(分類4)では、翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づく翌期のスケジューリングの結果によって見積もる(第27項)。ただし第28項・第29項により、要件を満たす説明ができる場合は(分類2)または(分類3)として取り扱われる。

分類が一つ下がると、必要なスケジューリングの期間は短くなるが、根拠の要求水準は上がる。 業績が揺れている局面ほど、台帳と説明資料の重みが増す構造になっている(繰延税金資産の回収可能性|業績が揺れた期に損益が二重に振れる仕組み)。

将来課税所得は、承認された数字からしか作れない

台帳が整っても、もう一つ用意が要る。相殺の相手方になる将来の課税所得である。ここも条文が出所を指定している。

第32項は、企業を分類する場合および繰延税金資産の計上額を見積もる場合において、合理的な仮定に基づく業績予測によって将来の課税所得または税務上の欠損金を見積もることとしたうえで、具体的には**「適切な権限を有する機関の承認を得た業績予測の前提となった数値」**を、経営環境等の企業の外部要因に関する情報や、企業が用いている内部の情報(過去における中長期計画の達成状況、予算やその修正資料、業績評価の基礎データ、売上見込み、取締役会資料を含む)と整合的に修正して見積もる、としている。業績予測は中長期計画・事業計画・予算編成の一部等、呼称を問わないとされる。

ここから二つのことが決まる。第一に、税効果のために別途作った「税効果用の利益計画」は使えない。承認を経た予算や中期計画が出発点になる。第二に、決算後にスケジューリングを作ると、承認済みの計画と食い違いやすい。期末後に作る数字は、期末までに承認された数字と整合させる作業を必ず伴う。期中に台帳を回していれば、この整合は予算編成の段階で取れている。

予算・中計と税効果を別々に運用している会社は、この接続を一度確かめたほうがいい。中計の数字が税効果の根拠になっている以上、中計の達成状況も監査の関心事になる。過去の未達が続いていれば、同じ計画を根拠に使うことは難しくなる。

現場では
税効果の作業が毎期の決算のボトルネックになっている中堅製造業があった。担当は課長と担当者の二名。期末後、前期のスケジューリング表を開き、総勘定元帳を上から追って新規の差異を探すところから始める。三日かかり、税理士への提出はいつも予定より遅れた。監査法人からは毎期、非償却資産の減損に係る差異と役員退職慰労引当金について、スケジューリングの根拠を問われていた。会社は(分類2)に該当しており、スケジューリング不能とされれば繰延税金資産が落ちる。前期は、遊休地の減損に係る差異について「売却を検討中」という説明で押し切ろうとして戻され、結果的に数千万円の繰延税金資産を取り崩している。取締役会にも稟議にも、期末時点で売却の意思決定を示す記録が無かったからだ。翌期に変えたのは工程だけだった。まず、税務調整が発生する科目を十二個に絞って指定した。指定科目に伝票が立ったら、経理の担当者が差異台帳に一行足す。項目は科目・金額・解消見込年度・スケジューリング可否・根拠の所在の五つ。根拠の所在は、稟議番号か規程名か固定資産台帳の資産番号を書く欄にした。月次で台帳の合計と勘定残高を照合する手順を、月次締めのチェックリストに一行加えた。もう一点、遊休地については第2四半期の取締役会で売却方針の決議を取り、実施計画を文書化した。期末時点で意思決定が存在する状態を作るためである。翌期の決算では、税効果の作業が決算日程の枠内に収まった。差異一覧は既にあり、やることは当期の課税所得見積りを当てることだけだったからだ。監査法人からの質問も、根拠の所在欄に書かれた稟議番号を示すだけで済んだ。作業時間が減ったことより、前期に落とした繰延税金資産が今期は落ちなかったことのほうが、金額としては大きかった。

決算の三日間を、期中の一分に割り直す

税効果の作業が重い会社に共通しているのは、作業量そのものではなく、作業のタイミングである。同じ情報を、最も忙しい時期に、最も情報が薄くなった状態で集めている。

期中に一行足す作業は一分で終わる。期末に同じ情報を復元しようとすると、担当者への確認、稟議の検索、過去資料の掘り起こしで数十分かかる。そして根拠の一部は、どれだけ時間をかけても復元できない。復元できない情報が、そのまま繰延税金資産の取崩しになる。

着手は、前期のスケジューリング表を開くところから始まる。そこに載っている差異の発生源を科目に落として一覧にする。次に、その科目に伝票が立ったときの入力項目を五つ決め、可否の列を暫定と確定の二本に割る。三つ目に、月次締めのチェックリストに、台帳合計と勘定残高の照合を一行足す(決算チェックリストの設計:ミスを止めるのは網羅でなく順序と粒度)。最後に、意思決定に依存する差異について、期末より前に決議を取るべきものを洗い出し、取締役会や稟議の日程に載せる。この四つは、第2四半期までに終わっていれば期末に間に合う。

適用指針が定める手順は、一時差異の一覧があるところから始まっている。 その一覧を、決算の成果物ではなく月次の台帳として持つ。それだけで、税効果は決算のクリティカルパスから外れる。

まとめ
企業会計基準適用指針第26号第11項が定める繰延税金資産の回収可能性の判断手順は、(1)期末における将来減算一時差異の解消見込年度のスケジューリングから始まり、(2)将来加算一時差異のスケジューリング、(3)解消見込年度ごとの相殺、(4)繰戻・繰越期間の将来加算一時差異との相殺、(5)将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額との相殺、(6)繰戻・繰越期間の課税所得見積額との相殺、(7)相殺し切れなかった分の控除、と続く。一時差異の一覧を作る工程は手順のどこにも書かれておらず、あることが前提になっている。決算のたびに洗い出しから始める会社は、手順の入口に立つ前で止まっている。より重いのは、スケジューリング可能かどうかの判定時点である。第3項(5)は、スケジューリング不能な一時差異を、①将来の一定の事実が発生することで損金算入要件を充足するもので期末にその事実の発生を見込めないもの、②企業による将来の一定の行為の実施についての意思決定又は実施計画等の存在により損金算入要件を充足するもので期末にその意思決定又は実施計画等が存在していないもの、と定義する。判定の基準時点はいずれも期末であり、決算後に意思決定や計画を作ってもその期の判定には使えない。具体的には、第36項(2)が土地等の非償却資産の減損損失に係る差異を売却等の意思決定又は実施計画等がない場合にスケジューリング不能とし、第37項が役員退職慰労引当金についてスケジューリングが行われていない場合をスケジューリング不能としている。第13項ただし書きは、貸倒引当金等のように損失の発生時期を個別に特定してスケジューリングすることが実務上困難なものについて、過去の税務上の損金の算入実績に将来の合理的な予測を加味した方法等によりスケジューリングが行われている限りスケジューリング不能とは取り扱わないとするが、その損金算入実績は期中に積むしかない。(分類2)に該当する企業ではスケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は原則として回収可能性がないものとされる(第21項)ため、決算後に作る運用は作業が遅いだけでなく計上額そのものを落とす。工程の組み替えは四段になる。第一に、税務調整が発生する科目を先に列挙して指定する。第二に、指定科目に伝票が立った時点で、科目・金額・解消見込年度・スケジューリング可否・根拠の所在の五項目を差異台帳に一行足す。根拠は後から復元できないため、この欄が最も重要になる。ただし可否は期末時点の事実で決まるため、起票時の可否は暫定値として扱い、台帳には暫定と確定の二列を持たせて期末に再判定する。第三に、月次で台帳の合計と勘定残高を照合し、ずれた月に原因を潰す。第四に、決算では当期の課税所得見積りを当てて分類ごとの取扱いを適用するだけにする。分類による深さの違いも押さえる。(分類1)は繰延税金資産の全額に回収可能性がある(第18項)。(分類2)はスケジューリングの結果に基づき、スケジューリング不能分は第21項ただし書きの合理的な根拠を用意できるかが論点になる。(分類3)は将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内が基本で(第23項)、5年超は第24項の説明、5年以内のより短い期間になる場合は第25項による。(分類4)は翌期のスケジューリング(第27項)だが、第28項・第29項の説明ができれば(分類2)または(分類3)として取り扱われる。(分類5)は原則として回収可能性がない(第31項)。相殺の相手方となる将来の課税所得についても、第32項が出所を指定している。適切な権限を有する機関の承認を得た業績予測の前提となった数値を、外部要因に関する情報や内部の情報(過去における中長期計画の達成状況、予算やその修正資料、業績評価の基礎データ、売上見込み、取締役会資料を含む)と整合的に修正して見積もる。税効果のために別途作った利益計画は使えず、承認を経た予算や中期計画が出発点になる。したがって、期中に台帳を回して予算編成の段階で整合を取っておくことが、そのまま期末の作業短縮と計上額の確保につながる。

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