政策保有株式の縮減が経営会議の議題に上がると、話はだいたい同じ場所で止まる。「あの取引先は売れない」。営業本部が反対し、社長も歯切れが悪くなり、結論は「引き続き検討」になる。この会議が三年続いている会社は珍しくない。だが、その三年のあいだに前提のほうが動いた。縮減が進まない理由を「取引関係」で説明できる期間は、そう長く残っていない。 そして本当に効くのは、売るかどうかの議論ではなく、売る順番と、売った金を何に使うかを先に決めることだ。

POINT
金融庁のフォローアップ会議での議論を踏まえ、東京証券取引所は2026年7月21日、コーポレートガバナンス・コードの2026年改訂版を公表した。改訂の骨格は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則の内容を概念的・抽象的なものに限定し、各原則への対応を支援する具体的な内容や趣旨を記載した「解釈指針」を新設したことにある。補充原則という区分は廃止され、コードの序文は、従前の補充原則を再整理し、ガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする、と述べている。なお、改訂後のコードの適用開始時期と、それに基づくコーポレート・ガバナンス報告書の提出時期は上場規程側の取扱いで定まる。本稿執筆時点でその内容は未確認であり、自社の対応時期は取引所の規則改正で必ず確認してほしい。政策保有株式については、旧来の補充原則1-4①・1-4②が【原則1-4.政策保有株式】の本体に組み込まれ、同原則は(1)から(4)の四項で構成されている。(1)は縮減に関する方針・考え方を含む政策保有に関する方針の開示と、毎年の取締役会での個別銘柄の精査(保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等)および検証内容の開示。(2)は議決権行使の具体的基準の策定・開示。(3)は「上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない」。(4)は政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない、である。(3)が意味するのは、自社が「売られる側」に立つ場面が制度的に守られたということだ。相手はいつでも動ける。自社が売却順を決めていなければ、順番は相手が決める。 そして売却益の扱い。全部純資産直入法でその他有価証券を時価評価している限り、期末時価で売っても純資産の合計はほとんど動かない。動くのは内訳(評価・換算差額等から利益剰余金へ)と、資産の中身(株式から現金へ)だけである。売却は価値を生む行為ではなく、資本の形を変える行為だ。だから使途を先に決めていないと、一過性の売却益で本業の収益力の弱さが隠れる。決めるのは二つ。取引関係への影響で並べた売却順と、売却代金を成長投資・株主還元・負債返済のどれにいくら振るかという事前の紐付けである。

2026年改訂で、「売らせない」は原則そのものになった

改訂前のコードでは、政策保有株主からの売却意向を妨げるなという規律は補充原則1-4①に置かれていた。補充原則もコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではあったが、原則本体に比べれば重みの位置づけが一段下だった。

2026年改訂版では、その補充原則という区分自体が無くなった。改訂の趣旨は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則の内容を概念的・抽象的なものに絞り、具体的な内容や趣旨は新設の解釈指針に移すことにある。コードの序文は、従前の補充原則を再整理し、ガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする、と述べている。旧補充原則1-4①と1-4②は、この整理のなかで解釈指針へ落ちず、原則1-4の本体の(3)(4)になった。抽象化の方向へ整理された改訂で、この二つは中核として原則側に引き上げられた。

実務への影響は、条文の文言より運用の場面に出る。売却意向を伝えられた側は、取引の縮減を示唆して思いとどまらせる、という交渉手段を持てない。持てば、コードの原則に対する説明責任が生じる。つまり、政策保有株式の関係は、片方が動くと止められない構造になっている。

ここから、縮減の議論の順序が変わる。「売るか売らないか」を全銘柄について合議で決める運用は、相手が先に動いた瞬間に無意味になる。決めるべきは、自社が主導権を持てるうちに、どの順で売るかである。

売却順を決めないと、順番は相手が決める

売却順の設計を、資本コスト充足度だけで組むと現場が動かない。「便益が資本コストに見合っていない」という判定は正しいが、その判定だけでは営業本部の反対を越えられないからだ。実務で機能するのは、取引関係への影響と、相手の同意の取りやすさで並べた順序である。

売却順は、資本コストの判定だけでは決まらない。取引関係への影響と、相手が動く可能性で並べる。
STEP 1
相互保有を同時に解消する
相手も自社株を保有している先。双方が同時に売れば片務にならず、取引条件の交渉材料にもならない。ここが最も摩擦が小さく、しかも縮減額としては大きい
STEP 2
取引の薄い先から外す
過去の経緯だけで残っている銘柄、取引がない、あるいは金額が僅少な先。説明コストが低く、検証表で保有目的を書けなかった銘柄と大きく重なる
STEP 3
契約で守られている取引先を外す
取引はあるが、基本契約・品質実績・供給責任で関係が支えられている先。契約更改の時期に合わせると、株の保有と取引条件が切り離されていることを確認しながら進められる
STEP 4
取引が株の保有に依存している先を最後に扱う
売れば取引条件が動く、と社内で認識されている先。ここは売却の前に取引条件の再交渉が要る。原則1-4(4)が禁じる「経済合理性を十分に検証しないままの取引継続」に最も近い区分でもある
土台土台=相手はいつでも先に動ける。改訂コーポレートガバナンス・コード原則1-4(3)は、政策保有株主から売却等の意向が示された場合に、取引の縮減を示唆することなどにより売却等を妨げるべきではないとしている。自社が順番を設計していなければ、順番は相手の都合で決まる。
第四区分を先に議論するから、三年たっても一銘柄も動かない。第一・第二区分は今期中に処理できる。

四区分に分ける利点は、会議の議題が変わることだ。「売れない銘柄」の議論に全時間を使う会議から、「今期どこまで進めるか」の議論に変わる。第一区分と第二区分は、多くの会社で保有銘柄数の相当部分を占める。ここを処理するだけで、銘柄数は目に見えて減る。

第四区分をどう扱うかは、資本配分の問題であると同時に取引条件の問題になる。株を持っているから取れている条件があるなら、それは事実として認識し、株を手放した場合に条件がどう動くかを見積もる。見積もった影響額が、保有株式に対する要求利回りを上回るかどうか。ここまで数字にして初めて、営業本部と同じ土俵に立てる(資本コストを「自社の数字」で語れるか|WACCの出し方と経営での使いどころ)。

自社の有価証券報告書が、すでに売却候補を公表している

売却順の第一区分と第二区分を作るのに、新しい調査は要らない。自社の直近の有価証券報告書に、答えの大半が書いてある。

企業内容等の開示に関する内閣府令 第二号様式 記載上の注意(58)dは、有価証券報告書の「株式の保有状況」において、特定投資株式およびみなし保有株式のうち、銘柄別による貸借対照表計上額が提出会社の資本金額の100分の1を超えるものについて、銘柄ごとの開示を求めている。1%を超える銘柄が60に満たない場合に、貸借対照表計上額の大きい順に60銘柄まで埋める。60は上限ではなく下限である。 1%超が八十社あれば、八十社すべてが並ぶ。

開示項目には、保有目的、業務提携等の概要、提出会社の経営方針・経営戦略等や事業の内容・セグメント情報と関連付けた定量的な保有効果、株式数が増加した理由、そして当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無が含まれる。そして、定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨と、保有の合理性を検証した方法を記載することが求められる。

ここが実務上の急所になる。定量的な保有効果を書けている銘柄は、実際にはそう多くない。多くの会社の有報には、「定量的な保有効果の記載が困難であるため、保有の合理性を検証した方法を記載する」という趣旨の文言が並んでいる。

書けないと自社で開示した銘柄が、そのまま売却候補の一覧である。 投資家はこの一覧を読んでいる。社内で「まだ検討中」と説明している間も、外には「効果を定量化できない保有」として公表され続けている。

第一区分の相互保有も、同じ表から出る。開示項目に「当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無」が含まれているからだ。売却順の第一区分と第二区分は、いずれも有価証券報告書一枚から機械的に抽出できる。 社内から足す必要があるのは、直近三期の取引金額と基本契約の有無だけである。取締役会の検証表と、有報の開示文言と、売却順の四区分を同じ一枚に載せると、不整合はすぐに見える(有価証券報告書の作成体制:開示府令対応と社内データ集約の分業設計)。

原則1-4(1)が求める毎年の取締役会での精査も、この表があれば形式で流れなくなる。精査すべきは、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等であり、検証の内容は開示される。検証表と開示文言が同じ根拠から作られていない会社は、二つの文書が別々に育っていく。そのずれは、いずれ株主総会の質疑で突かれる(取締役会に出す財務資料|説明のための資料から、決議を取るための資料へ)。

売却益は、純資産を増やさない

ここを取り違えている経営会議は多い。政策保有株式を売ると、特別利益が立ち、当期純利益が押し上げられる。だから「今期は縮減を進めて利益を確保する」という会話が成立してしまう。

会計上、何が起きているかを確認しておく。その他有価証券は時価評価され、評価差額は税効果を考慮したうえで純資産の部に計上される(全部純資産直入法の場合)。含み益は、売る前から既に純資産に載っている。売却すると、その評価差額金が取り崩され、売却損益が損益計算書に計上される。

つまり、期末時価で評価済みの銘柄を時価で売った場合、純資産の合計はほとんど動かない。動くのは内訳と、資産の中身だけだ。 評価・換算差額等が利益剰余金に振り替わり、貸借対照表の左側で株式が現金に変わる。価値が生まれたわけではない。

この理解が共有されていないと、二つの弊害が出る。第一に、売却益が本業の不振を覆い隠す。営業利益が落ちた期に政策保有株式を売って最終利益を保つ運用は、投資家から見れば透けている。第二に、売却のタイミングが業績の都合で決まるようになる。良い年に売れず、悪い年に売る。縮減の方針とは無関係に、損益の穴埋めとして株が使われる。

縮減の進捗は、売却益ではなく、銘柄数と貸借対照表計上額と、純資産に対する比率で語る。 損益計算書で語り始めた瞬間に、この施策は資本配分から業績調整に滑り落ちる。

使途を先に紐づけると、税効果の側にも効く

売却代金の使途を事前に決めておくべき理由は、説明責任だけではない。技術的な効き目がある。

改訂コーポレートガバナンス・コードの原則4-1は、取締役会が経営戦略や経営計画の策定・公表に当たり、自社の資本コストを踏まえて収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために成長投資や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて説明すべきである、としている。同原則の解釈指針は、機会コスト、すなわちある選択を行った場合に失われる他の選択肢から得られる利益にも言及している。なお解釈指針は、コードの序文によればコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではなく、各原則についての実質的な対応を支援する役割を担うものとされる。説明義務は原則の側にあり、道具立てが解釈指針の側にある。 政策保有株式を持ち続ける判断は、その資金で他に何ができたかという機会コストの判断でもある――その道具立てが、コードの側から名指しで示されたということだ。

もう一つ、税効果会計の側にも接点がある。企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」第34項は、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の見積額を将来の課税所得の見積額に織り込める条件を、企業の分類ごとに定めている。(分類2)に該当する企業については、資産の売却等に係る意思決定が事業計画や方針等で明確となっており、かつ経済的合理性があり実行可能であること、および売却される資産の含み益等に係る金額が契約等で確定しているか、有価証券については期末の時価等の公正な評価額によっていること、の二つをいずれも満たす場合に織り込めるとされる。(分類3)でも、将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)等について同様の条件が置かれている。

要求されているのは、「縮減を進める」という方針表明ではない。明確でなければならないのは売却等に係る意思決定であり、それに加えて経済的合理性と実行可能性が要る。 どの銘柄を、いつまでに。ここまで書けていない縮減方針は、この要件を満たさない可能性が高い。なお(分類1)に該当する企業は、そもそもタックス・プランニングに基づく課税所得の見積額を将来の見積額に織り込む必要がない(第34項(1))。効くのは(分類2)と(分類3)の会社である。縮減を経営会議の口頭合意で止めるか、銘柄と時期まで書いた計画として承認を取るかで、期末の税効果の結論が変わりうる(繰延税金資産の回収可能性|業績が揺れた期に損益が二重に振れる仕組み)。

使途の紐付け方は難しくない。売却代金を、成長投資・株主還元・有利子負債の返済・手元資金の四つに割り、それぞれの比率と判断基準を資本配分方針に書く。決めるのは、売却の前である。売った後に決めると、その時々の業績と社内の力関係で使途が決まり、方針は事後の説明文になる(資本配分の設計図|成長投資・株主還元・現預金のバランスをどう決めるか)。

現場では
売上千数百億円規模の上場メーカーで、政策保有株式の縮減が四年間ほぼ進んでいなかった。保有銘柄は五十社を超え、貸借対照表計上額は純資産の一割強。毎年の取締役会では全銘柄の検証表が回覧され、「継続保有」に丸が付いて終わっていた。担当役員に事情を聞くと、検証の議論はいつも上位数銘柄で止まっていた。上位はいずれも主要顧客で、営業本部が強く反対する。そこで時間を使い切り、下位四十数銘柄には誰も触れなかった。CFOが変えたのは、検証表の並べ方だった。資本コストに対する充足度で並べる列を残したまま、取引関係の区分列を足した。相互保有の有無、直近三期の取引金額、基本契約の有無。この三列を入れて並べ替えると、四十数銘柄のうち、取引金額がゼロまたは僅少で基本契約もない銘柄が二十社を超えていた。多くは十年以上前の経緯で保有が始まり、担当者が代わるうちに理由が失われていた。有価証券報告書を確認すると、その大半が定量的な保有効果の記載が困難である旨を開示していた。同社は当期、この第二区分から着手した。同時に、売却代金の使途を先に決めて開示した。半分を設備更新の前倒しに、残りを有利子負債の削減に充てるという内容で、金額の目安も添えた。上位の主要顧客については、この期は一株も売っていない。それでも銘柄数は年度末までに三割強減り、次の株主総会では「なぜ売れないのか」ではなく「上位銘柄の判断はいつか」という質問に変わった。議論の焦点が動いたことが、この年の実質的な成果だった。

明日、開くべき資料は決まっている

やることは三つで、いずれも新しい調査を必要としない。

第一に、自社の直近の有価証券報告書の「株式の保有状況」を開き、定量的な保有効果の記載が困難である旨を書いた銘柄を抽出する。これが売却候補の初期リストになる。自社が既に公表している内容なので、社内の合意も取りやすい。

第二に、取締役会の検証表に取引関係の区分列を足す。相互保有の有無は、同じ有価証券報告書の開示項目として既に載っている。社内から足すのは直近三期の取引金額と基本契約の有無だけで、この三列で四区分に並べ替えられる。上位銘柄の議論に入る前に、第一区分と第二区分の処理方針を決める。

第三に、売却代金の使途を資本配分方針に書き、開示する文言まで用意する。成長投資・株主還元・有利子負債の返済・手元資金への配分と、その判断基準。銘柄と時期まで書いた売却計画とセットにしておけば、税効果のタックス・プランニングの議論にもそのまま使える文書になる。

政策保有株式の縮減は、開示対応の宿題として扱うと永遠に終わらない。これは資本配分の意思決定である。 どの資産に会社の資本を置くかという問いに、株式という形で置き続ける理由を毎年説明できるか。それだけの話だ。説明できない銘柄から順に外し、外して得た資金を、説明できる場所に置き直す。

まとめ
東京証券取引所は2026年7月21日、金融庁のフォローアップ会議での議論を踏まえたコーポレートガバナンス・コードの2026年改訂版を公表した。改訂は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象となる原則の内容を概念的・抽象的なものに限定し、各原則への対応を支援する具体的な内容や趣旨を記載した解釈指針を新設するもので、補充原則という区分は廃止された。序文は、従前の補充原則を再整理してガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする、としている。解釈指針自体はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではなく、実質的な対応を支援する役割を担う。適用開始時期と、改訂後のコードに基づくコーポレート・ガバナンス報告書の提出時期は上場規程側の取扱いで定まり、本稿執筆時点でその内容は未確認である。政策保有株式については【原則1-4.政策保有株式】が(1)から(4)の四項で構成され、旧補充原則1-4①・1-4②の内容は解釈指針へ落ちず原則本体へ格上げされた。(1)は縮減に関する方針・考え方を含む政策保有に関する方針の開示と、毎年の取締役会における個別銘柄の精査(保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等)および検証内容の開示を求める。(2)は議決権行使の具体的基準の策定・開示。(3)は政策保有株主から株式の売却等の意向が示された場合に、取引の縮減を示唆することなどにより売却等を妨げるべきではないとする。(4)は政策保有株主との間で取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではないとする。(3)が置かれている以上、相手はいつでも先に動ける。自社が売却順を設計していなければ、順番は相手の都合で決まる。売却順は資本コストの充足度だけでは動かない。取引関係の区分を足して四段に並べる。相互保有を同時に解消できる先、取引が薄い先、契約や実績で関係が支えられている先、取引が株の保有に依存している先の順である。第四区分から議論するから三年たっても一銘柄も動かない。第一区分と第二区分の抽出に、新しい調査は要らない。企業内容等の開示に関する内閣府令 第二号様式 記載上の注意(58)dは、有価証券報告書の株式の保有状況において、特定投資株式およびみなし保有株式のうち、銘柄別による貸借対照表計上額が提出会社の資本金額の100分の1を超えるものについて銘柄ごとの開示を求め、1%超の銘柄が60に満たない場合に貸借対照表計上額の大きい順に60銘柄まで埋めるとしている。60は上限ではなく下限であり、1%超が八十社あれば八十社すべてが並ぶ。開示項目には、保有目的、業務提携等の概要、経営方針・経営戦略等や事業の内容・セグメント情報と関連付けた定量的な保有効果、株式数が増加した理由、そして当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無が含まれ、定量的な保有効果の記載が困難な場合はその旨と保有の合理性を検証した方法を記載させている。書けないと自社で開示した銘柄がそのまま売却候補の一覧であり、相互保有の有無も同じ表から機械的に取れる。社内から足すのは直近三期の取引金額と基本契約の有無だけである。売却益の性質も押さえる。その他有価証券は時価評価され、評価差額は税効果考慮後に純資産の部へ計上されるため(全部純資産直入法の場合)、期末時価で評価済みの銘柄を時価で売っても純資産の合計はほとんど動かない。動くのは内訳が評価・換算差額等から利益剰余金へ移ることと、資産が株式から現金へ変わることだけである。売却は価値創造ではなく資本の形態変換であり、進捗は売却益ではなく銘柄数・貸借対照表計上額・純資産に対する比率で語る。使途の事前紐付けには技術的な効き目もある。改訂コードの原則4-1は、取締役会が経営戦略・経営計画の策定・公表に当たり資本コストを踏まえた収益計画や資本政策の基本的な方針を示し、成長投資や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分について具体的に何を実行するのかを説明すべきとし、解釈指針は機会コストにも言及している。加えて企業会計基準適用指針第26号第34項は、タックス・プランニングに基づく課税所得の見積額を織り込める条件として、(分類2)については資産の売却等に係る意思決定が事業計画や方針等で明確であり経済的合理性があって実行可能であること、および含み益の金額が契約等で確定しているか有価証券については期末の時価等の公正な評価額によっていることを求めている。(分類1)はそもそも織り込む必要がなく(同項(1))、効くのは(分類2)と(分類3)である。求められているのは「縮減を進める」という方針表明ではなく、売却等に係る意思決定の明確性・経済的合理性・実行可能性の三点であり、どの銘柄をいつまでにという水準まで書けていない方針は要件を満たさない可能性が高い。使途は売却の前に決める。売った後に決めれば、方針は事後の説明文になる。

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