わらべや日洋ホールディングスが2026年10月7日に発表した2027年2月期中間期(2026年3月1日から8月31日まで)の連結決算は、売上高が前年同期比1.0%増の1,208.5億円、営業利益が25.0%減の39.7億円だった。減益の理由として会社は、原材料価格と労働コストの上昇に加え、札幌工場の操業休止の影響を挙げている。札幌工場は2026年2月に火災で操業を止めた。この出来事の影響は、2026年2月期の特別損失に火災損失として出たあと、当中間期には営業利益の減益要因と営業外費用の科目に分かれて表れている。同じ日には、米国オハイオ州に建設を進めてきた新工場の稼働中止も決まり、約7億円の特別損失を見込むと発表された。筆者は、工場の休止や閉鎖、稼働中止のような出来事が重なる会社では、損益計算書の段ごとの数字とは別に、出来事ごとに費用を束ねた表を月次報告と予想修正の説明に添えるべきだと考えている。どの費用をどの段に出すかの基準も、出来事が起きる前に社内で決めておくほうがよい。この記事では、何が起きたか、数字の出どころ、CFOの論点、自社に置き換えるとどうなるかの順に整理する。
- 中間期の営業利益は約13.2億円減った。会社の増減分解では、原材料価格などの製造コストの増加58.0億円を、商品規格の見直しと増収の47.6億円が補い、札幌工場の項目は2.1億円の減益要因である。
- 札幌工場の火災による費用は、2026年2月期に火災損失5.66億円として特別損失に出た。当中間期には、営業利益の増減分解の2.1億円とは別に、操業休止関連費用1.77億円が営業外費用に出ている。オハイオ工場の稼働中止の損失約7億円は、特別損失に計上する見込みである。
- 筆者は、一度きりの出来事の費用をどの段に出すかの基準を先に決め、段ごとの表示とは別に出来事ごとの合計を示す表を、月次報告と予想修正の説明に置くことを勧める。
何が起きたか:増収で、営業利益は25.0%減った
わらべや日洋ホールディングスのグループは、米飯、調理パン、調理麺、惣菜、和菓子などの調理済食品を、主にコンビニエンスストア向けに作って売っている。中間期は売上高がほぼ前年同期並みで、利益は各段階で前年同期を下回った。
| 項目(単位:百万円) | 前年同期 | 当期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 119,634 | 120,853 | 1.0%増 |
| 売上総利益 | 23,501 | 23,016 | 2.1%減 |
| 販売費及び一般管理費 | 18,212 | 19,047 | 4.6%増 |
| 営業利益 | 5,289 | 3,969 | 25.0%減 |
| 経常利益 | 5,237 | 4,203 | 19.7%減 |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 4,000 | 2,638 | 34.1%減 |
会社は決算短信で、食品関連事業の営業利益が、伊勢崎工場の収支改善があったものの、原材料価格と労働コストの上昇、札幌工場の操業休止の影響で24.7%減ったと説明している。同じ日に通期の業績予想も下方修正した。営業利益の予想は77億円から60億円に、親会社株主に帰属する当期純利益の予想は48億円から35億円に下げている。
数字の出どころ:工場を止める影響は3つの段に出ている
営業利益の中:札幌工場の項目は2.1億円の減益要因
決算説明資料は、営業利益の前年同期からの増減を要因ごとに分けて示している。工場に関わる項目は3つあり、伊勢崎工場が増益要因、工場再編と札幌工場が減益要因である。
| 要因(単位:億円) | 金額 |
|---|---|
| 前年同期の営業利益 | 52.8 |
| 原材料価格、人件費、水道光熱費と物流費 | △58.0 |
| 商品規格の見直しと増収 | 47.6 |
| 伊勢崎工場 | 6.8 |
| 工場再編 | △1.0 |
| 札幌工場(操業休止) | △2.1 |
| システム、メンテナンス費用、その他 | △2.3 |
| 海外 | △3.2 |
| グループ関連事業等 | △1.0 |
| 当期の営業利益 | 39.6 |
製造コストの増加58.0億円のうち、8割強を商品規格の見直しと増収の47.6億円で補っている。営業利益の減益13.2億円のうち、札幌工場の項目は2.1億円である。
営業外費用:操業休止関連費用と工場閉鎖費用
損益計算書の営業外費用には、工場に関わる科目が2つ載っている。
| 営業外費用(単位:百万円) | 前年同期 | 当期 |
|---|---|---|
| 支払利息 | 196 | 165 |
| 固定資産除却損 | 121 | 15 |
| 賃貸収入原価 | 78 | 55 |
| 工場閉鎖費用 | 212 | 16 |
| 操業休止関連費用 | - | 177 |
| その他 | 110 | 36 |
| 営業外費用合計 | 719 | 467 |
決算説明資料は、操業休止関連費用を札幌工場の費用として示している。営業外費用の合計は前年同期より2.5億円少なく、経常利益の減り方は営業利益より小さい。会社の説明では、営業外損益は前年同期より2.8億円の改善で、内訳に工場閉鎖費用の減少1.9億円、固定資産除却損の減少1.0億円、札幌工場の操業休止関連費用の発生1.7億円が挙がっている。
特別損失:前期の火災損失と、今期に見込む稼働中止の損失
札幌工場の火災は2026年2月16日に起きた。2026年2月期の有価証券報告書によると、会社はこの火災の被害による損失566百万円を特別損失に計上した。内訳は固定資産328百万円、棚卸資産40百万円、その他関連費用197百万円である。決算期末は2月28日なので、火災から2週間足らずで期が締まったことになる。
当中間期の特別損失は減損損失187百万円で、前年同期の37百万円から増えた。決算短信と半期報告書には、この減損の対象の記載は無い。
もう1つの出来事が、オハイオ工場である。会社は10月7日、米国オハイオ州コロンバス市に建てた新工場の稼働中止を決め、保有資産の売却に向けて交渉していると発表した。2027年2月期に、この資産に関わる損失として約7億円を特別損失に計上する見込みで、修正した業績予想に織り込んでいる。
CFOの論点
ここからは、この決算を材料にした筆者の見方である。会社の業績の良し悪しや、会社が選んだ表示の当否を評価するものではない。
どの段に出すかは、規則の例示だけでは決まらない
連結財務諸表規則は、損益計算書の科目の例を挙げている。第58条が営業外費用の例に挙げるのは、支払利息、リース負債に係る利息費用、有価証券売却損、持分法による投資損失などである。第63条が特別損失の例に挙げるのは、固定資産売却損、減損損失、災害による損失などである。工場の操業休止に伴う費用や工場閉鎖費用は、どちらの例示にも名前が無い。
つまり、工場を止めることに伴う費用をどの段に出すかは、出来事の性質と金額を見て会社が判断する部分が大きい。わらべや日洋ホールディングスの開示を読むと、火災で失った資産や在庫は特別損失、休止中に生じた費用の一部は営業外費用、休止による生産の減少などは営業利益の中に表れている。筆者が気にするのは分かれ方の当否ではない。読む側が3か所を自分で探して足さないと、出来事の影響の全体が見えないことである。
段の選び方で、前年比の見え方が変わる
当中間期の営業外費用は、前年同期より2.5億円少なかった。前年同期にあった工場閉鎖費用2.1億円が当期はほぼ無くなり、代わりに操業休止関連費用1.77億円が加わった。工場の費用が営業外にある分、経常利益の前年比は営業利益の前年比と違う動きをする。当中間期の減益率は、営業利益が25.0%、経常利益が19.7%だった。
同じ費用を営業費用の中に入れれば、その分は営業利益の前年比に乗る。どちらが正しいという話ではない。段の選び方は、どの利益の前年比に出来事の影響が乗るかを決める。だから選び方の基準を社内で持ち、毎期同じ基準で選ぶことが大事になる。
稼働前の設備は、計画の変更が段階を追って開示される
オハイオ工場は、開示を順に追うと、計画が段階的に変わったことが分かる。
| 時点 | 開示された内容 |
|---|---|
| 2023年3月 | 工場の建設に着手 |
| 2025年2月末 | 完了予定は2026年夏 |
| 2026年2月末 | 帳簿価額は148.17億円。投資予定額8,800万米ドルのうち8,400万米ドルを支払い済み |
| 2026年4月8日 | 取引先の7-Eleven, Inc.が北米のサプライチェーンの見直しを検討することになり、稼働時期を2026年夏から未定に変更 |
| 2026年10月7日 | 稼働の中止を決定。保有資産は売却に向けて交渉中。約7億円の特別損失を見込む。新工場で予定していた生産はバージニア工場に集約する |
稼働前の設備は売上を生む前なので、営業損益の悪化という形では減損の兆候が表に出にくい。そのため企業会計基準適用指針第6号の第13項は、使用の範囲や方法の変化を兆候の例に挙げ、建設仮勘定に係る建設について計画の中止や大幅な延期が決定されたことや、当初の計画に比べ著しく滞っていることも含めている。筆者は、稼働前の設備を持つ会社では、計画の変更を開示するたびに、減損の兆候をどう検討したかを記録に残しておく運用を勧める。開示の段階と会計の検討の段階がそろっていれば、損失を計上する期について社内外へ説明しやすい。資産のまとまりの決め方で減損の結論が変わる点は、固定資産の減損は資産グルーピングで結論が変わる、兆候判定を期末に持ち込まないで扱った。
予想修正の説明は、段ごとに理由を分けている
10月7日の業績予想の修正で、会社は営業利益の下振れと純利益の下振れの理由を分けて書いている。営業利益と経常利益は、長期化する中東情勢の影響で包装材料価格やエネルギーコストが想定を上回る見込みとなり、主に国内食品関連事業で下振れる。純利益は、これに加えてオハイオ工場の稼働中止に伴う特別損失を見込む。決算説明資料の期初予想比の分解では、営業利益の17.0億円の下方修正のうち、国内食品が15.5億円、海外が1.2億円、関連事業が0.3億円である。
| 項目(単位:百万円) | 期初予想 | 修正予想 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 241,000 | 238,000 | △3,000 |
| 営業利益 | 7,700 | 6,000 | △1,700 |
| 経常利益 | 7,650 | 6,050 | △1,600 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 4,800 | 3,500 | △1,300 |
本業の段の下振れと、一度きりの損失を、理由の文の段階で分けている。理由の文が段ごとに分かれているので、純利益の下方修正13億円のうち、事業の段の下振れと一度きりの損失を分けて読める。
自社に置き換えると
工場や店舗、物流拠点を多く持つ会社なら、火災、操業の休止、閉鎖、建設中の設備の計画変更は、どの期にも起こりうる。起きてから科目と段を考えると、費用が月ごとにばらばらの段に入り、後から合計を出すのに手間がかかる。備えは、段の基準を先に決めることと、出来事ごとに費用を束ねる仕組みを用意することだと筆者は考えている。
費用の種類ごとに、出す段の基準を決めておく
最初に、出来事に伴って出る費用を種類ごとに並べ、どの段に出すかの基準を決める。次の表は、筆者が勧める整理の例である。
| 費用の種類 | 出す段の候補 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 災害で失った固定資産と棚卸資産 | 特別損失 | 災害による損失として集める範囲 |
| 休止中も続く減価償却費や人件費 | 営業費用、または営業外費用 | 営業外に移すなら、移す期間と費用の範囲 |
| 代わりの生産や外注で増えた費用 | 営業費用 | 増えた分を管理上どう測るか |
| 工場の閉鎖に伴う撤去や移転の費用 | 営業外費用、または特別損失 | 金額の目安と、毎期起こるかどうかの見方 |
| 稼働前の設備の減損や売却損 | 特別損失 | 計画変更のたびに減損の兆候を検討する手順 |
| 受け取る保険金 | 特別利益など | 受取額が確定する時期の見込みと、損失とは別の期に出る場合の説明の仕方 |
わらべや日洋ホールディングスは、札幌工場の火災について火災保険を付保しており、2026年5月27日の時点で保険会社が被害状況を調査中で、受取額は未確定と開示している。損失と保険金が別の期に出れば、出来事の影響は期をまたいで2回表れる。保険でどこまで手当てするかの考え方は、企業保険のリスク移転と自家保有、一撃で耐えられる損失額からの判断基準にまとめた。
出来事ごとの合計を、段ごとの表示と並べて示す
次に、月次報告に出来事ごとの表を足す。損益計算書の段ごとの数字はそのままにして、出来事の名前を行に、段を列に置き、合計を右端に出す。
筆者の考えでは、印を付けるのは仕訳を入れる時点が最も手間が少ない。後から総勘定元帳を読み返して拾うと、営業費用の中に紛れた費用、たとえば休止中の工場の人件費や、代わりの生産で増えた運賃は拾い漏れやすい。一度きりの項目をどう判定し、誰が決めるかは、調整後利益の「一過性」は誰が判定すべきか、除外項目を社内規程で定める理由で扱った。
計画変更の開示と、会計の検討の記録をそろえる
最後に、建設中や稼働前の設備について、計画を変えるたびに確かめる手順を決める。稼働時期を延ばす、生産の計画を見直す、稼働を止める、売却を検討する。どの段階でも、開示の要否の判断と、減損の兆候の検討を同じ会議で行い、結論を記録に残す。計画の「決定」の時点をどう決めるかは、適時開示の判断基準、「決定」の時点を事前ルールにする方法を先に読んでほしい。
よくある質問
工場を止めた費用は、損益計算書のどこに出るのか
出来事と費用の性質によって、営業費用、営業外費用、特別損失のいずれにも出うる。連結財務諸表規則は特別損失の例に減損損失や災害による損失を挙げているが、工場の操業休止に伴う費用は例示に無い。わらべや日洋ホールディングスでは、札幌工場の火災の損失が特別損失に、操業休止関連費用が営業外費用に出ており、操業休止による減益は営業利益の中にも表れている。
決算期末の直前に起きた火災の損失は、どの期に出るのか
わらべや日洋ホールディングスの場合は、火災が起きた期に計上されている。札幌工場の火災は2026年2月16日に起き、2月28日を期末とする2026年2月期に、火災損失566百万円が特別損失に計上された。火災のあとに続く休止中の費用は、翌期の損益に出ている。
稼働前の工場の稼働中止による損失は、いつ計上されるのか
わらべや日洋ホールディングスは、2026年10月7日に稼働中止を決め、2027年2月期に約7億円を特別損失に計上する見込みと発表した。中間期の末日は8月31日で、中間期の損益計算書にはこの損失は入っていない。
営業利益の増減分解の数字は、どこから取ったのか
会社の決算説明資料に載っている、連結営業利益の前年同期比の増減分解から取った。この記事の表では、システム、メンテナンス費用、その他の3項目を合算した。資料の億円の値は、百万円の開示値と端数の扱いが異なる。
- わらべや日洋ホールディングスの2027年2月期中間期は、製造コストの増加と札幌工場の操業休止で、営業利益が25.0%減った。
- 札幌工場の火災の影響は、前期の特別損失、当期の営業利益の減益要因、当期の営業外費用に分かれて表れている。オハイオ工場の稼働中止の損失約7億円は、今期の特別損失に計上する見込みである。
- 筆者は、一度きりの費用を出す段の基準を先に決め、出来事ごとの合計を段ごとの表示と並べて示す表を、月次報告と予想修正の説明に置くことを勧める。
次に読むなら、一度きりの項目の判定を扱った調整後利益の「一過性」は誰が判定すべきか、除外項目を社内規程で定める理由と、減損の判定単位を扱った固定資産の減損は資産グルーピングで結論が変わる、兆候判定を期末に持ち込まないを勧める。



