平和堂が2026年10月1日に発表した2027年2月期中間期(2026年2月21日から8月20日まで)の連結決算は、経常利益が前年同期比17.6%減の61.9億円だった。同じ決算短信のセグメント情報では、報告セグメントとその他を合わせたセグメント利益が82.8億円から91.2億円に増えている。部門の合計は増え、連結は減った。差を生んだのは、セグメント利益と連結の経常利益をつなぐ調整額で、前年同期の7.7億円の減額から29.3億円の減額に広がった。会社は調整額の中身を「受取配当金の取引消去等」と注記している。筆者は、法人ごとに利益を測るグループでは、部門の利益の合計と連結の利益の差を説明する行を、社内の月次報告にも先に用意しておくべきだと考えている。グループ内の配当を部門の業績として扱うかどうかも、その行とは別に決めておく必要がある。この記事では、何が起きたか、数字の出どころ、CFOの論点、自社に置き換えるとどうなるかの順に整理する。
- 中間期の連結の経常利益は約13.2億円減ったが、セグメント利益の合計は約8.4億円増えた。差は調整額が約21.6億円広がったことで説明できる。調整額の注記は「受取配当金の取引消去等」である。
- 平和堂のセグメント利益は経常利益をもとにした数値で、セグメントは法人別に組んでいる。単体の経常利益は子会社からの配当の増加で15.2%増えたと会社は説明しており、この配当は連結では消去される。調整額の広がりは、ほぼ第1四半期に集中している。
- 筆者は、部門の利益に入れるグループ内取引を項目ごとに決め、部門の合計から連結の利益までをつなぐ調整の行を、予算と月次報告に置くことを勧める。
何が起きたか:連結の経常利益は減り、セグメント利益の合計は増えた
平和堂のグループは、食料品、衣料品、日用雑貨品などを売る小売事業を中心に、惣菜や生鮮品の製造加工、ビル管理、外食の会社を持つ。中間期の連結は、営業収益が3.1%増えた一方、営業利益、経常利益、中間純利益は前年同期を下回った。
| 項目(単位:百万円) | 前年同期 | 当期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 223,539 | 230,489 | 3.1%増 |
| 営業総利益 | 81,153 | 83,676 | 3.1%増 |
| 販売費及び一般管理費 | 74,320 | 78,011 | 5.0%増 |
| 営業利益 | 6,833 | 5,665 | 17.1%減 |
| 経常利益 | 7,512 | 6,190 | 17.6%減 |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 4,904 | 3,580 | 27.0%減 |
会社は決算短信で、既存店の伸びや前年に開いた5店舗の成長で営業収益が増えた一方、前年の米の需給や商品の値上げの反動で粗利益率の確保が厳しくなったと説明している。決算説明資料では、単体の粗利益率が社内の計画に届かず、営業総利益が計画を下回ったことを減益の理由に挙げている。
ここまでは、増収で減益の決算である。目を引くのは、同じ決算短信の後ろにあるセグメント情報の数字が、連結とは逆の向きに動いていることだ。
数字の出どころ:差は調整額の1行で説明できる
セグメント利益は、法人別の経常利益で測っている
平和堂の報告セグメントは「小売事業」と「小売周辺事業」の2つで、報告セグメントに含まれない外食などの事業を「その他」に置いている。2026年2月期の有価証券報告書によると、セグメントは小売業を中心に法人別に組まれており、報告セグメントの利益は経常利益をもとにした数値である。つまり各セグメントの利益には、営業外収益の受取配当金も入る。
次の表は、中間期のセグメント利益を前年同期と並べたものである。
| 項目(単位:百万円) | 前年同期 | 当期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 小売事業 | 6,842 | 7,748 | 906 |
| 小売周辺事業 | 883 | 958 | 75 |
| その他 | 553 | 410 | △143 |
| セグメント利益の合計 | 8,278 | 9,117 | 839 |
| 調整額 | △765 | △2,927 | △2,162 |
| 連結の経常利益 | 7,512 | 6,190 | △1,322 |
注記によると、調整額は前年同期が△765百万円、当期が△2,927百万円で、どちらも「受取配当金の取引消去等」である。セグメント利益は中間連結損益計算書の経常利益と調整されている。
単体の経常利益は、子会社からの配当で増えた
調整額が広がった理由は、親会社である平和堂の単体の数字から読める。決算説明資料によると、単体の営業利益は52.1億円から41.7億円に減った。一方で単体の営業外収益は14.1億円から35.1億円に21.0億円増え、単体の経常利益は65.0億円から74.9億円へ15.2%増えた。会社は、単体の経常利益と中間純利益の増益は連結子会社からの配当の増加によるもので、連結では消去されると説明している。
連結の損益計算書は、親会社と子会社の個別の損益計算書を基礎に、連結会社相互間の取引を相殺消去して作る。親会社が子会社から受け取った配当は、グループの外から入ったお金ではないので、連結の利益には残らない。
単体の営業外収益の増加21.0億円と、調整額の広がり21.6億円は、ほぼ同じ大きさである。筆者は、小売事業のセグメント利益の増加9.1億円は、平和堂単体が受け取った子会社からの配当の増加で説明できる大きさだと読んでいる。根拠は、小売事業に平和堂単体が含まれること、セグメント利益が経常利益をもとにしていること、会社が単体の増益を配当で説明していることの3つである。ただし、調整額の注記は「受取配当金の取引消去等」であり、配当以外の消去も含まれる。中間期の決算短信と決算説明資料に、配当の金額そのものの記載は無い。
四半期に分けると、差は第1四半期に集中している
累計の数字を四半期ごとに分けると、調整額がいつ動いたかが分かる。次の表は、第1四半期の決算短信と中間期の決算短信のセグメント情報から、筆者が差を取って計算したものである。
| 四半期(単位:百万円) | セグメント利益の合計 | 調整額 | 連結の経常利益 |
|---|---|---|---|
| 前期 第1四半期(2025年2月21日〜5月20日) | 4,052 | △716 | 3,335 |
| 前期 第2四半期(2025年5月21日〜8月20日) | 4,226 | △49 | 4,177 |
| 当期 第1四半期(2026年2月21日〜5月20日) | 5,663 | △2,888 | 2,774 |
| 当期 第2四半期(2026年5月21日〜8月20日) | 3,454 | △39 | 3,416 |
当期の第1四半期は、セグメント利益の合計が前年同期より16.1億円多いのに、連結の経常利益は5.6億円少ない。小売事業だけを見ると、セグメント利益は33.8億円から50.1億円に増えている。調整額は7.2億円の減額から28.9億円の減額に広がった。第2四半期に入ると、調整額は前期も当期も1億円に満たず、セグメント利益の合計と連結の経常利益はほぼ同じ向きに動いている。決算説明資料も、単体の第1四半期は、関連子会社からの配当金で経常利益以下が増益になったと書いている。
CFOの論点
ここからは、この決算を材料にした筆者の見方である。会社の業績の良し悪しを評価するものではない。
セグメント利益の測り方は、会社が決めている
セグメント情報は、経営者が社内で使っている数字に基づいて開示する仕組みである。企業会計基準第17号の第23項は、セグメントの開示を、資源の配分を決め業績を評価するために最高経営意思決定機関に報告される金額に基づいて行うよう求めている。第26項は、セグメント利益の合計と調整する損益計算書の利益として、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益などのうち、適当と判断される科目を選ぶとしている。セグメント利益をどの段の利益で測るかは、第23項により、最高経営意思決定機関に報告される数字で決まる。平和堂は経常利益をもとにした数値を使い、連結の経常利益と調整している。
ただし、測り方を選ぶと、そこに入る数字も決まる。法人別に組んだセグメントを経常利益で測れば、親会社が子会社から受け取る配当は親会社を含むセグメントの利益に入り、連結の段階で消える。平和堂のセグメント情報で部門の合計と連結が逆に動いたのは、この仕組みが表に出た結果だと筆者は見ている。
前年比は、配当を受け取る時期と金額に左右される
子会社からの配当は、子会社の利益の配分である。筆者の見方では、いつ、いくら配当するかは子会社の利益と親会社の資金の方針で決まり、親会社の店舗の売上や粗利とは別の理由で動く。平和堂では、前年同期の第1四半期の調整額は7.2億円の減額で、当期は28.9億円の減額だった。筆者の読みでは、この差の多くが、小売事業のセグメント利益の前年比を押し上げている。
セグメント利益の前年比だけを見て、小売事業が伸びたと読むと誤りやすい。実際、単体の営業利益は前年同期より約10.4億円少ない。筆者は、セグメント利益を経常利益で測る会社では、調整額の前年比も合わせて読むことが欠かせないと考えている。
調整額の注記は「等」まで読む
平和堂の注記は「受取配当金の取引消去等」で、配当以外の消去も含む書き方である。調整額のすべてが配当だとは言い切れない。単体の営業外収益の増減や、会社の説明の文と照らして、はじめて主な中身が見えてくる。外から読む側にとっても、社内で説明する側にとっても、調整額を1行のまま置くと、何が部門の合計と連結の差を生んだのかが伝わりにくい。
通期の予想は据え置いている
会社は通期の連結業績予想を変えておらず、経常利益は前期比4.1%増の152億円を見込んでいる。中間期の経常利益61.9億円は、通期予想の40.7%にあたる。第1四半期の決算短信で示した中間期の予想は経常利益72億円だった。
自社に置き換えると
子会社を持ち、法人ごとに利益を測って部門の業績を見ている会社なら、同じ形の数字は社内の月次報告でも起こりうる。親会社が子会社から配当を受け取る月に、親会社を含む部門の利益だけが大きく増える。備えは、部門の利益に入れるグループ内取引を先に決め、部門の合計から連結までの差を毎月同じ行で示すことだと筆者は考えている。
部門の利益に入れるグループ内取引を、項目ごとに決める
最初に、グループ内の取引を項目ごとに並べ、部門の利益に入れるか、調整の行に置くかを決める。配当だけでなく、グループ内の貸付の利息、経営指導料、業務委託料、賃料も同じ問いの対象になる。
| グループ内取引 | 部門の利益に入れる場合に起こること | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 子会社からの配当 | 受け取る月に、親会社を含む部門の利益が大きく増える | 業績評価に含めるか。含めない場合は調整の行に置く |
| グループ内の貸付の利息 | 貸す側と借りる側の部門の利益が、金利の水準で動く | 社内の金利をどう決めるか |
| 経営指導料、業務委託料 | 本社の費用が料金の形で部門に移る | 料金の算定方法と見直しの時期 |
| グループ内の賃料 | 不動産を持つ会社と使う会社の利益が、賃料の水準で動く | 賃料を市場の水準に合わせるか |
グループ内の取引価格をどう決めるかは、グループ内取引価格の決め方、移転価格と管理会計を二本立てにして評価をずらさないで扱った。部門別の損益をどの段階まで表示するかは、部門別損益(事業部別P&L)の作り方、管理可能性で段階表示して共通費配賦の対立を防ぐにまとめた。
部門の合計から連結までを、調整の行でつなぐ
次に、月次報告の様式を決める。部門の利益の合計の下に、調整の行を中身ごとに分けて置き、最後に連結の利益と一致させる。
予算に配当の月を置くのは、予実の差を読み違えないためである。配当を予算に入れずに実績だけで受け取ると、その月の部門の利益は予算を大きく上回って見える。逆に、予定の配当が翌期にずれれば、事業に問題が無くても予算に届かない。管理会計と財務会計の数字の差を毎月説明する表の作り方は、管理会計と財務会計の数字が合わない原因と、毎月説明できるブリッジ表の作り方で扱った。
業績評価の物差しは、開示の物差しと分けて決めてよい
筆者は、社内の業績評価で、部門の責任者に配当の増減の責任を負わせるのは筋が通りにくいと考えている。配当の時期と金額は、部門の責任者が動かせる売上や費用とは別の判断で決まるからである。そこで、開示のセグメント利益は経常利益のままでも、部門の業績評価には配当を除いた利益を使い、両者の差を調整の行で示す形を勧める。セグメントの区分と社内の報告単位の関係は、セグメント情報の区分は開示だけの話ではない、社内の報告単位がそのまま外に出るを先に読んでほしい。
よくある質問
セグメント利益が増えたのに連結の経常利益が減ったのはなぜか
セグメント利益の合計と連結の経常利益の間に、調整額があるからである。平和堂の2027年2月期中間期では、セグメント利益の合計が約8.4億円増えた一方、調整額の減額が約21.6億円広がり、連結の経常利益は約13.2億円減った。会社は調整額の中身を受取配当金の取引消去等と注記している。
子会社から受け取った配当は連結の利益にならないのか
ならない。連結の損益計算書は、親会社と子会社の個別の損益計算書を基礎に、連結会社相互間の取引を相殺消去して作る。親会社が受け取る配当は子会社の利益の配分であり、グループの外から入った利益ではないため、連結の段階で消去される。
セグメント利益はどの利益で測ってもよいのか
企業会計基準第17号は、セグメントの開示を、最高経営意思決定機関に報告される金額に基づいて行うよう求めている。セグメント利益の合計と調整する損益計算書の利益は、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益などのうち、適当と判断される科目とされている。平和堂は経常利益をもとにした数値を使っている。
四半期ごとの数字はどう計算したのか
決算短信のセグメント情報は、期首からの累計で作られている。この記事では、中間期の累計から第1四半期の値を引いて、第2四半期の値を求めた。開示値は百万円未満を切り捨てているため、セグメント利益の合計に調整額を足した値と連結の経常利益が1百万円ずれる期がある。
- 平和堂の2027年2月期中間期は、セグメント利益の合計が増え、連結の経常利益が減った。差は、受取配当金の取引消去等を含む調整額の広がりで説明できる。
- 平和堂のセグメントは法人別で、利益は経常利益をもとに測っている。単体の経常利益は子会社からの配当で増えたと会社は説明しており、調整額の広がりは第1四半期に集中していた。
- 筆者は、部門の利益に入れるグループ内取引を項目ごとに決め、部門の合計から連結までをつなぐ調整の行を、予算と月次報告に置くことを勧める。
次に読むなら、部門別の損益の組み立てを扱った部門別損益(事業部別P&L)の作り方、管理可能性で段階表示して共通費配賦の対立を防ぐと、グループ内の取引価格を扱ったグループ内取引価格の決め方、移転価格と管理会計を二本立てにして評価をずらさないを勧める。



