管理会計は、共通費の配賦を精緻にするところから始めると止まりやすい。配賦の基準は部門の利害がぶつかる論点で、全員が納得する基準を先に決めようとすると、数字が1枚も出ないまま時間が過ぎる。筆者は、配賦をしない段階の損益を先に出し、その数字で判断を1つ変え、足りない精度だけを後から足す進め方がよいと考えている。この記事では、管理会計の意味と財務会計との違いを確かめたうえで、導入の順序と、判断に使う具体例を示す。

この記事の要点
  • 管理会計は、社内の判断のために数字を組み替える仕組みである。外部への報告を目的とする財務会計とは、目的も、読む人も、数字の区切り方も違う。
  • 導入は、部門別の損益、予算との比較、製品・顧客の採算、KPIの順に進める。筆者は、配賦をしない段階の損益から始めるのがよいと考えている。
  • 筆者は、管理会計の成果を、変わった判断の数で測るのがよいと考えている。資料が増えたことは成果に数えない。

管理会計とは

管理会計とは、経営者や部門の責任者が判断を下すために、社内の数字を目的に合わせて組み替える仕組みである。値上げをするか、どの製品に人を寄せるか、設備に投資するかといった意思決定に、数字の根拠を与える。もう1つの役割は業績評価で、部門や責任者が計画に対してどこまで達成したかを測る。

材料になる数字の大半は、財務会計と同じ帳簿から出てくる。違うのは区切り方である。決算書は会社全体を1年や四半期で区切るが、判断に使うには、部門、製品、顧客といった単位に分け、月ごとに見る必要がある。同じ売上と費用を、判断の単位に合わせて並べ替える作業が、管理会計の中心になる。

財務会計との違い

財務会計は、株主や債権者など外部の関係者に、会社の財産と損益の状況を報告するための会計である。管理会計との主な違いは、目的、読む人、区切り方の3点である。

同じ帳簿の数字を、違う目的で使う
外部への報告財務会計
株主、債権者、税務当局に向けて、過去の一定期間の損益と期末の財産の状況を示す。法令と会計基準に従い、会社全体を年度や四半期で区切る。
社内の判断管理会計
経営者と部門の責任者に向けて、これからの判断に使う数字を示す。形式は会社が決め、部門、製品、顧客の単位で月ごとに区切る。
財務会計は外部への報告、管理会計は社内の判断と業績評価のために数字を使う。

この3点にほかの違いも加えて表にすると、次のようになる。

財務会計管理会計
目的外部の関係者への報告社内の意思決定と業績評価
読む人株主、債権者、税務当局経営者、部門の責任者
従うもの法令と会計基準会社が自分で決めた定義
区切り方会社全体、年度と四半期部門、製品、顧客。月次が基本
扱う時間過去の実績実績に加えて、予算と見込み
求められること誰が作っても同じ結果になること判断に間に合い、判断の単位に合っていること

読み違えやすいのは「従うもの」の行である。管理会計の形式は会社が決めてよいが、何でもよいわけではない。利益の定義や費用の分け方を月ごとに変えると、前月と比べられず、判断に使えなくなる。自社で決めた定義を文書にし、同じ定義で続けることが要る。

制度会計との関係

制度会計とは、一般に、会社法、金融商品取引法、法人税法といった法令に基づいて行う会計を指す。たとえば会社法は、株式会社に対し、適時に正確な会計帳簿を作成すること(第432条第1項)と、各事業年度に係る計算書類を作成すること(第435条第2項)を義務づけている。財務会計の大部分は、この制度会計として行われる。

管理会計には、これに当たる法令の定めがない。作るかどうかも、どんな形にするかも、会社が決める。ただし、制度会計と無関係ではない。接点が2つある。

1つ目は原価計算である。企業会計審議会の「原価計算基準」は、原価計算の主たる目的として5つを挙げている。財務諸表に表示する原価の集計、価格計算に必要な原価資料の提供、原価管理に必要な原価資料の提供、予算の編成と予算統制に必要な原価資料の提供、経営の基本計画の設定に必要な原価情報の提供である。筆者の整理では、1つ目は主に財務会計の側の目的で、残りの4つは管理会計の側の目的に当たる。基準は、原価計算制度を、財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序だとしている。原価計算制度は、財務諸表の作成と経営管理の両方に役立てるものとして定められている。一方で基準は、基本計画や予算編成での選択に使う差額原価や機会原価などを随時に調べる特殊原価調査を、制度としての原価計算の範囲外に置いている。この記事の後半で扱う値引きや投資の計算は、こちらの側に当たる。

2つ目はセグメント情報である。企業会計基準第17号は、事業セグメントの要件の1つを、企業の最高経営意思決定機関が、配分すべき資源に関する意思決定を行い、また、その業績を評価するために、経営成績を定期的に検討する構成単位であることとしている。経営者が社内で見ている区分を、外部への開示にも使う考え方である。この基準に従ってセグメント情報を開示する会社では、管理会計の区分が開示の区分の土台になる。

出典:会社法第432条第1項、第435条第2項(e-Gov法令検索。会社法、2026年10月17日確認)。企業会計審議会「原価計算基準」(昭和37年11月8日)前文「原価計算基準の設定について」、第1章 1「原価計算の目的」、2「原価計算制度」(企業会計基準委員会 会計基準検索システム、2026年10月1日確認)。企業会計基準委員会 企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」第6項(企業会計基準委員会、2026年10月1日確認)

管理会計の主な業務

管理会計の業務は、答える問いによって4つに分けられる。予実管理、原価管理、採算管理、KPIである。

業務答える問い主な成果物
予実管理計画と実績はどこで、なぜずれたか予算、月次の予算実績対比表、差異の要因と対応の記録
原価管理製品やサービスをいくらで作っているか。標準からどれだけ外れたか製品別の原価、標準原価、原価差異の分析
採算管理どの製品、顧客、部門が利益を出しているか部門別の損益、製品別・顧客別の採算表
KPI利益につながる日々の活動は、どの水準にあるか指標の定義書、月次や週次の指標の報告

予実管理は、予算と実績を比べ、差異の原因を分析し、次の対応を決める業務である。差異を数量、単価、費用に分けると、誰が何をすればよいかが見えてくる。

原価管理は、製品やサービスの原価を把握し、標準と実際の差を分析する業務である。標準原価と差異分析の進め方は原価管理の基本、標準原価と差異分析で製造原価を意思決定に使える形にするで扱った。

採算管理は、利益を部門、製品、顧客の単位に分けて見る業務である。ここでは、売上高から変動費を引いた限界利益と、そこからその部門や製品に固有の固定費を引いた貢献利益を使う。2つの利益の使い分けは限界利益と貢献利益の違いと使い方、値引きの下限と撤退ラインを決めるにまとめている。

KPIは、月次の損益に表れる前の活動を測る指標である。受注件数、稼働率、解約率などを、利益との関係が説明できる形で選ぶ。選び方は管理会計KPIの設計、測ると行動が変わる指標と変わらない指標の違いで扱った。財務の数字から指標を組み立てる手順は、KPIツリーの作り方にまとめた。

管理会計の導入の順序

制度会計しか無い会社が管理会計を入れるとき、筆者は次の4段階で進めるのがよいと考えている。前の段階の数字が、次の段階の材料になる。

導入は4段階。前の段階の数字が、次の段階の材料になる
STEP 1
部門別の損益を出す
配賦をせず、部門に直接ひも付く売上と費用だけで出す
→
STEP 2
予算と比べる
部門別の損益に予算を置き、差を数量、単価、費用に分ける
→
STEP 3
製品・顧客の採算を出す
差の大きい部門から、製品別、顧客別に分ける
→
STEP 4
KPIにつなぐ
採算を左右する活動を指標にし、月次より短い周期で見る
最初の段階の数字で判断を1つ変えてから、次の段階へ進む。

以下、同じ設例で4段階を追う。3つの部門を持つ会社で、数値は年間、単位は万円である。

部門別の損益を出す

最初に出すのは、部門に直接ひも付く売上と費用だけで作った損益である。本社の人件費や全社のシステム費といった共通費は、部門に配らず、全社の欄に置く。

A部門B部門C部門全社
売上高12,0008,0005,00025,000
変動費7,2005,6003,00015,800
限界利益4,8002,4002,0009,200
部門の固定費3,0002,0002,3007,300
部門の貢献利益1,800400△3001,900
共通費1,800
営業利益100
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

この段階で、C部門が自部門の費用も賄えていないことが分かる。共通費をどんな基準で配っても、C部門の貢献利益が赤字である事実は変わらない。配賦の基準を決めなくても、C部門の価格と固定費を見直すという判断には進める。

共通費を売上高の比で配った場合も見ておく。配賦額はA部門864、B部門576、C部門360で、配賦後の利益はA部門936、B部門△176、C部門△660になる。B部門とC部門がどちらも赤字に見えるが、中身は違う。B部門は貢献利益が400の黒字で、共通費の一部を負担している。

配賦後の赤字で、部門をやめる判断をしない
設例のB部門は、配賦後は176の赤字だが、貢献利益は400の黒字である。B部門をやめると売上、変動費、部門の固定費がすべて消え、共通費1,800は減らないとすると、全社の営業利益は100から△300へ、400だけ悪くなる。部門の固定費の一部が残るなら、その分だけさらに悪くなる。やめるかどうかを考えるときは、配賦後の利益を使わず、やめれば消える売上と費用だけで比べる。部門別の損益を段階に分けて示す方法は部門別損益(事業部別P&L)の作り方、管理可能性で段階表示して共通費配賦の対立を防ぐで扱った。

予算と比べる

部門別の損益が出たら、予算を同じ形で置き、実績と比べる。C部門の予算と実績が次のとおりだったとする。

C部門予算実績差
売上高6,0005,000△1,000
変動費3,6003,000△600
限界利益2,4002,000△400
部門の固定費2,2002,300+100
部門の貢献利益200△300△500
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

貢献利益の差は500で、内訳は、売上の未達による限界利益の減少が400、固定費の超過が100である。原因の8割は売上の側にあり、固定費を削るだけでは埋まらない。次に知りたいのは、売上の未達が数量の減少なのか、単価の下落なのか、どの製品や顧客で起きたのかである。この問いが、次の段階の入口になる。

製品・顧客の採算を出す

3段階目では、差の大きい部門から、損益を製品別、顧客別に分ける。全部門を同時に分ける必要はない。設例ではC部門だけを対象にする。

ここで初めて、費用を製品や顧客に割り当てる作業が要る。配送費、営業担当者の人件費、返品の処理費など、顧客によって大きく違う費用から割り当てる。割り当ての根拠が弱い費用は、無理に配らず、部門の欄に残す。精度を足すのは、判断に必要な範囲に限る。

KPIにつなぐ

採算を分けると、利益を左右する活動が見えてくる。C部門の売上の未達が既存顧客の受注回数の減少によるものなら、受注回数や訪問件数が指標の候補になる。月次の損益は翌月にならないと分からないが、活動の指標は週ごとに見られる。

KPIを最後に置くのは、採算の数字が無いと、どの活動が利益につながるのかを説明できないからである。指標を先に並べると、測りやすいものが選ばれやすいと筆者は見ている。

管理会計の具体例

管理会計の数字は、判断の場面ごとに、使うものと外すものが違う。3つの場面を設例で示す。

判断ごとに、使う数字と外す数字が違う
値引きの下限変動費と、受注で増える費用
1個あたりの変動費に、その受注のために新しくかかる費用を足す。すでに発生している固定費の配賦額は外す。
不採算の顧客顧客別の貢献利益
粗利から、その顧客のためにかかっている配送費、営業の人件費、返品の処理費を引く。粗利率だけでは判断しない。
投資の可否増える現金と割引率
投資によって増える現金の収支を年ごとに置き、現在の価値に直して投資額と比べる。配賦される共通費は外す。
どの場面でも、その判断で変わる売上と費用だけを数える。

値引きの下限を決める

定価1,000円の製品に、1,000個を1個850円で買いたいという引き合いが来たとする。1個あたりの変動費は620円で、この受注には専用の治具15万円が新しく要る。生産能力には余裕があり、ほかの顧客への販売価格には影響しないものとする。

この受注で増える利益は、次のように計算する。1個あたりの限界利益は850円から620円を引いた230円で、1,000個で23万円になる。ここから治具の15万円を引くと、8万円が残る。受けたほうが、全社の利益は8万円増える。

下限の価格は、変動費620円に、治具の費用を1個あたりに直した150円を足した770円である。1,000個の受注で770円を下回ると、受けたほうが全社の利益は減る。

設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

この計算が成り立つのは、前提がそろっている場合に限られる。生産能力に余裕が無ければ、この受注のために断る別の受注の利益を、費用として数える。値引きがほかの顧客に伝わるなら、既存の売上の減少も数える。下限の価格は、これより下では受けないという価格であり、受けてよい価格の目安とは違う。

不採算の顧客を見つける

粗利率が高い顧客が、利益を出している顧客とは限らない。2社の顧客を比べる。単位は万円、年間の数値である。

顧客X顧客Y
売上高1,200800
粗利360200
粗利率30%25%
小口配送の費用15030
営業担当者の人件費18030
返品の処理費6010
顧客別の貢献利益△30130
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

粗利率では顧客Xが上だが、顧客ごとにかかっている費用の合計は、顧客Xが390、顧客Yが70である。これを引くと、顧客Xは30の赤字、顧客Yは130の黒字になる。

この数字から、すぐに取引をやめるという結論にはならない。顧客Xについて検討するのは、小口配送の最低数量を決める、訪問の頻度を見直す、返品の条件を改める、といった取引条件の変更である。営業担当者の人件費は、取引をやめてもすぐには減らないので、やめた場合に消える費用だけで比べ直すことも要る。

投資の可否を決める

2,000万円の設備を入れると、5年間、毎年500万円ずつ現金の収支が増えると見込まれるとする。単純に足すと2,500万円で、投資額を500万円上回る。回収にかかる期間は4年である。

将来の現金は、今の現金と同じ価値ではない。割引率を年5%とすると、5年分の500万円の現在の価値は合計で約2,165万円になり、投資額を約165万円上回る。割引率を年8%とすると約1,996万円で、投資額を約4万円下回る。同じ計画でも、求める利回りによって、可否が入れ替わる。

割引率5年分の現在価値投資額との差
5%約2,165万円約+165万円
8%約1,996万円約△4万円
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。現在価値は、毎年末に500万円が入るものとして計算した。

ここで数えるのは、投資によって増える現金の収支である。投資をしてもしなくても発生する本社の共通費は、配賦額が増えるとしても、数に入れない。割引率の決め方は、計算の前に会社として決めておく。案件ごとにその場で決めると、通したい案件に合う数字を選べてしまうと筆者は見ている。

資料作りで終わらせない

管理会計を入れると、資料は増える。部門別の損益、予算実績対比表、採算表、指標の報告が毎月作られるようになる。資料が増えても、判断が変わらなければ、作る手間が増えただけである。

筆者は、管理会計の成果を、変わった判断の数で測るのがよいと考えている。確かめ方は単純で、月次の会議のあとに、その月の数字を見て変えた判断を書き出す。価格を改めた、受注を断った、人の配置を変えた、投資を見送った、といった記録である。何も書けない月が続くなら、数字の出し方か、会議の進め方を見直す。

資料ごとに、誰のどの判断のための数字なのかを決めておくことも役に立つ。答えられない資料は、やめる候補になる。差異についても、原因の説明で終えず、誰がいつまでに何をするかまでを決める。この切り替え方は管理会計が資料作りで終わる原因と、意思決定を変える管理会計への切り替え方で詳しく扱った。

財務会計の数字と合わないとき

管理会計を始めると、経営会議で見ている利益と、決算の利益が合わないという問題が起きる。区切り方と定義が違うので、差が出ること自体は誤りではない。問題になるのは、差の理由を説明できないときである。

差が生まれる場所は、あらかじめ分かっている。部門に配っていない共通費、部門間の取引の扱い、費用を計上する月の違い、管理会計だけで使う社内の単価などである。これらを項目に分け、管理会計の利益の合計から財務会計の利益までを毎月つなぐ表を作っておくと、差を説明できる。

セグメント情報を開示する会社には、これに近い対応づけの開示が基準で求められている。企業会計基準第17号は、報告セグメントの利益の合計額と損益計算書の利益計上額について、差異調整に関する事項を開示しなければならないとしている。開示をしない会社でも、同じ考え方で社内の表を作っておけば、管理会計の数字への信頼を保ちやすい。表の作り方は管理会計と財務会計の数字が合わない原因と、毎月説明できるブリッジ表の作り方で扱った。

出典:企業会計基準委員会 企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」第25項(企業会計基準委員会、2026年10月1日確認)

システムの選び方

システムを選ぶのは、導入の順序でいえば、部門別の損益と予算との比較を表計算で何か月か続けたあとでよいと筆者は考えている。製品より先に、数字の定義を決める。予実管理のシステムを選ぶ前に決めることは、予実管理システムを選ぶ前に決める5つのことにまとめた。

決めておくことは3つある。1つ目は区切りで、部門、製品、顧客のどの単位で損益を見るかである。2つ目は利益の段階で、限界利益、貢献利益、配賦後の利益をどう定義するかである。3つ目は周期で、月次で足りるのか、週次の指標が要るのかである。この3つが決まっていないと、どの製品を入れても、表計算で作っていた表を置き換えるだけになりやすいと筆者は見ている。

会計システムの側では、仕訳に部門や製品のコードを付けて入力できるかが出発点になる。入力の時点で区分が付いていない数字は、あとから分けるのに手間がかかる。ERPを使う会社では、管理会計の機能が会計と同じデータの上に用意されていることがある。SAPの場合の考え方はSAP COの設計、原価と採算を見る構成とFIとの違いで扱った。

よくある質問

管理会計と財務会計の違いは

財務会計は、株主や債権者など外部の関係者に、会社の財産と損益の状況を報告するための会計である。管理会計は、経営者や部門の責任者が社内で判断を下し、業績を評価するための会計である。財務会計は法令と会計基準に従って会社全体を年度や四半期で区切る。管理会計は会社が決めた定義に従い、部門、製品、顧客の単位で月ごとに区切る。

管理会計は義務か

管理会計そのものを作ることを義務づける法令の定めはない。会社法が義務づけているのは、会計帳簿と計算書類の作成である。ただし、企業会計基準第17号に従ってセグメント情報を開示する会社は、経営者が意思決定と業績評価に使っている区分をもとに開示するので、社内の管理の数字が開示の土台になる。

何から始めるか

配賦をしない部門別の損益から始めるのがよいと筆者は考えている。部門に直接ひも付く売上と費用だけで損益を出し、共通費は全社の欄に置く。その数字で判断を1つ変えてから、予算との比較、製品・顧客の採算、KPIへと進む。配賦の基準は、判断に必要になった範囲で後から決める。

必要な資格は

管理会計の業務に就くために、法令で求められる資格は無い。学ぶ入口としては日商簿記2級がある。日本商工会議所は、2級を、高度な商業簿記と、原価計算を含む工業簿記を修得する水準だと説明している。資格よりも、自社の事業で何が変動費で何が固定費なのかを、現場に聞いて確かめられることのほうが役に立つと筆者は考えている。

まとめ
  • 管理会計は、社内の判断と業績評価のために数字を組み替える仕組みである。形式は会社が決めるが、決めた定義は続ける。
  • 導入は、部門別の損益、予算との比較、製品・顧客の採算、KPIの順に進める。筆者は、配賦をしない段階の損益で判断を1つ変え、足りない精度を後から足すのがよいと考えている。
  • 筆者は、成果を変わった判断の数で測るのがよいと考えている。財務会計の数字との差は、毎月説明できる表でつなぐ。

次に読むなら、資料が増えても判断が変わらないときの見直し方を扱った管理会計が資料作りで終わる原因と、意思決定を変える管理会計への切り替え方を勧める。