経理のAI導入の効果を、仕訳の入力件数がどれだけ減るかで測ると、小さく見える。自動仕訳やシステム間の連携が進んだ会社では、定型の仕訳はすでに人の手を離れており、残る手入力は月の作業時間の一部になるからである。締めの後半に残る、差異の原因を調べる時間と、結果を文書や回答で説明する時間で測ると、対象は大きくなる。筆者は、どちらの物差しを使うかで、AIに投資する順番が変わると考えている。

この記事の要点
  • 筆者の見方では、経理でAIの効果が出やすいのは、突合で出た差異の調査、文書の作成、規程と基準の検索である。人が調べて書いている工程に当てる。
  • 仕訳の自動化は、ERPや会計ソフトがすでに持つ機能で足りる場合がある。先に既存の機能を確かめる。
  • 入れる前に、入力してよい情報の範囲を決める。公表前の数字と個人情報の扱いを、利用ルールに書く。

経理の生成AIに何ができるか

生成AIは、翻訳、要約、質問への応答、文章の初稿といった、言葉を扱う作業に使える道具である。経理業務に当てはめると、明細を読んで差異の原因の候補を挙げる、数字の増減を説明する文章を起こす、規程や会計基準から該当する箇所を探す、といった使い方になる。

一方で、出力が正しいとは限らない。個人情報保護委員会は、生成AIサービスの応答結果について、確率的な相関関係に基づいて生成されるため不正確な内容が含まれることがある、という趣旨の注意を出している。この性質があるので、経理のどの工程に当てるかは、工程の件数と、誤りが会計処理に届く前に人が気づけるかの2つの軸で決めるのがよいと筆者は考えている。

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)別添1(3)②(個人情報保護委員会、2026年10月1日確認)。原文は個人情報を取り扱う場面についての留意点である
AIを当てる工程は、件数と、誤りが人の確認を経るかどうかで分ける
件数が多い →
件数が多く、出力がそのまま処理になる
定型の仕訳の起票。ERPの自動仕訳や読み取りの機能がすでにある
件数が多く、人が確認する
差異の原因の候補出し、規程の検索と問い合わせの一次回答。最初に試す候補
件数が少なく、出力がそのまま処理になる
引当や収益認識など、判断を要する仕訳。AIに決めさせない
件数が少なく、人が確認する
注記や説明文の初稿、手順書の起こし。対象は小さいが始めやすい
誤りが人の確認を経る →
筆者の整理である。対象の大きさより先に、誤りがそのまま会計処理にならない工程かどうかを見る。

物差しの違いを、設例で示す。経理5人の会社で、月次の締めに関わる作業が月400時間あるとする。

工程月の時間内訳
仕訳の入力と取込の確認120時間手入力の仕訳30時間、自動で連携された仕訳の確認90時間
残高の照合30時間補助元帳や相手先の残高との突合
差異の原因調査50時間明細をたどって原因を特定する
文書の作成70時間増減の説明、報告資料、手順書の更新
問い合わせへの回答60時間社内の各部門と監査人からの質問に、規程や基準を調べて答える
レビューと承認70時間上長による確認
合計400時間
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

入力件数の削減で測るなら、対象は手入力の仕訳30時間で、月400時間の7.5%である。調査と説明の時間で測るなら、差異の原因調査50時間、文書の作成70時間、問い合わせへの回答60時間を足した180時間が対象になり、45%に当たる。問い合わせへの回答は、あとで述べる規程と基準の検索に対応する。対象の大きさは6倍違う。減らせる上限は、対象の大きさで決まる。

同じ月400時間でも、物差しで対象の大きさが変わる(設例)
入力件数で測る対象は30時間
手入力の仕訳30時間が対象になる。月400時間の7.5%に当たる。
調査と説明の時間で測る対象は180時間
差異の原因調査、文書の作成、問い合わせへの回答の180時間が対象になる。月400時間の45%に当たる。
対象の時間は設例の数値である。削減できる割合は示していない。

効果が出やすい工程

効果が出やすいと筆者が見ているのは、人が調べて、文章にまとめている工程である。3つ挙げる。どれも、AIの出力を人が確かめてから使う形にできる。

突合の差異調査

勘定残高を照合して差異が出たあとは、明細を突き合わせて原因を特定する。ここで原因の候補を先に挙げさせると、担当者の仕事は、ゼロから調べることから、候補を明細で確かめることに変わる。候補が誤っていても、担当者が明細で裏を取るまでは会計処理に届かない。

前提になるのは、両側の明細がデータで取り出せることである。照合と証憑の突合の進め方は勘定残高の証憑突合と明細レビュー、四半期レビューに耐える残高保証の手順で扱った。

文書の作成

決算の増減理由の説明文、監査人からの質問への回答案、経営会議の報告資料、手順書の初稿が対象になる。事実と数字は人が与え、文章に起こす部分を任せる。日本公認会計士協会の研究文書は、監査人の業務について、生成AIで文書のドラフトを作成し、その後に監査人が監査調書として仕上げる利用が想定されると述べている。経理の文書でも、同じ分担が取れると筆者は考えている。

上場会社と上場準備中の会社では、公表前の財務情報を入力しない。その場合は、数字を入れずに構成と言い回しの初稿を作らせ、数字は人が後から書き入れる。公表後の数字を使う説明資料や、手順書の初稿は、この制約を受けない。

手順書に何を書くかは使われる決算マニュアルの書き方、判断基準・例外処理・更新責任を入れた手順書にまとめた。

規程と基準の検索

勘定科目の使い分け、旅費規程の解釈、締め切りの確認といった社内からの問い合わせは、答えが既存の規程に書いてある。規程と会計方針を参照させ、該当する箇所を示させる。同じ研究文書は、監査人による監査基準や会計基準に関する質問に対し、生成AIが該当する基準を提示する利用も想定され、すでに監査現場での導入が開始または検討されているとしている。

この使い方は、参照させる文書の版が管理されていることが前提になる。回答には参照した条文を示させ、担当者が原文を確かめてから返す。

出典:日本公認会計士協会「テクノロジー委員会研究文書第11号 監査におけるAIの利用に関する研究文書」(2024年8月13日)Ⅱ 3. 生成AIの利用(日本公認会計士協会、2026年10月1日確認)。監査人の業務について書かれた文書である

工程ごとの向き不向きと、前提になるデータ、出力を確かめる作業者を表にまとめた。承認者は、作業者とは別に置く。

工程向き不向き前提になるデータ出力を確かめる作業者
定型の仕訳の起票自動仕訳、取込、読み取りといった既存の機能を先に使う取引データ、マスタ、仕訳のルール起票の担当者
判断を要する仕訳向かない。判断の材料を整理させるところまで契約書、会計方針、過去の判断の記録経理の責任者
残高の照合会計システムや照合ツールの機能を先に使う補助元帳、相手先の残高照合の担当者
差異の原因調査向く。原因の候補を挙げさせる両側の明細、過去の差異の記録照合の担当者が明細で確かめる
文書の作成向く。初稿を書かせる確定した数字、事実のメモ、現行の手順文書の作成者
規程と基準の検索向く。参照する文書の版の管理が前提最新版の規程、会計方針、過去の回答回答の担当者が原文を確かめる
筆者の整理である。向き不向きは、会社のシステムとデータの状態によって変わる。

効果が出にくい工程と理由

仕訳の起票に生成AIを当てても、効果は出にくいと筆者は考えている。理由は3つある。

1つ目は、仕訳には同じ取引に同じ処理が返ることが求められる点である。出力に不正確な内容が含まれうる道具とは、相性がよくない。2つ目は、判断を要する仕訳の性質である。引当金、収益認識、資産計上の可否といった論点は、金額が大きく開示に関わる。ここでAIの出力をそのまま採ると、減る手間に比べて、誤ったときの影響が大きい。3つ目は、定型の仕訳にはすでに手段があることである。ERPの自動仕訳、経費精算システムからの連携、請求書の読み取りとデータ化といった機能を使い切っていないなら、先にそちらを確かめる。

仕訳のほかにも、効果が出にくい場合が2つある。

手順書と規程が整っていない会社では、順番が逆になる。生成AIは与えられた文書を根拠に動くので、拠り所となる文書が古いか、存在しない状態では、もっともらしい誤答が出やすい。業務の標準化を先に済ませる。

決算が遅い理由が経理の外にある会社も同じである。他部門からのデータの到着を待つ時間が締めの日数を決めているなら、経理の中の作業を効率化しても、締め日は動かない。この構図は決算早期化はなぜ頭打ちになるのか、締め日数の限界と次の投資先で扱った。

入れる順番

入れる順番は、期待の大きさで決めるより、次の3段階で進めるのがよいと筆者は考えている。電子化から締めの短縮までの全体の順序は、経理DXの進め方にまとめた。支払や承認まで任せる範囲の決め方は、経理のAIエージェントに任せる範囲で扱った。

利用ルールを先に決め、小さな工程で試してから、統制に組み込む
STEP 1
利用ルールを決める
入力してよい情報の範囲と、使ってよいツールを決める
→
STEP 2
小さな工程で試す
差異の調査か文書の初稿を1つ選び、かかった時間を測る
→
STEP 3
統制に組み込む
作業者と承認者、記録の残し方を決め、業務の文書を書き換える
ルールが無いまま試すと、何を入力してよいかを担当者がその場で決めることになる。

利用ルール

最初に決めるのは、入力してよい情報の範囲である。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドラインは、AIを利用する事業者の重要な事項として、AIシステム・サービスに機密情報等を不適切に入力することがないよう注意を払うことと、個人情報を不適切に入力することがないよう注意を払うことを挙げている。

個人データについては、個人情報保護委員会の注意喚起がある。個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるとしている。そのうえで、サービスを提供する事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めている。従業員の給与、取引先の担当者の氏名、個人の口座情報を扱う経理では、ここを先に確かめる。

公表前の決算数値や業績予想は、区分を別に立てる。上場会社と上場準備中の会社では、会社が契約した環境であっても入力しない扱いにするのがよいと筆者は考えている。差異の調査で明細を渡すときも、その明細が公表前の財務情報に当たらないかを先に確かめる。区分の立て方は経理財務チームの生成AI利用ルール、公表前の数字をどこまで入力してよいかにまとめた。

出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)第5部 AI利用者に関する事項 U-4)i、U-5)i(総務省)。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)別添1(1)②(個人情報保護委員会)。いずれも2026年10月1日確認

小さな工程で試す

次に、工程を1つ選んで試す。差異の原因調査か、増減説明の初稿が候補になる。試す前に、その工程にいま何時間かかっているかを測っておく。試したあとは、AIの出力を確かめる時間も含めて、同じ測り方で比べる。測るのは入力の件数より、調査と説明にかかった時間である。

ERPや会計ソフトに載るAIの機能を使う場合は、追加の費用と効果の測り方を契約の前に決めておく。その進め方はERPに載るAI機能に追加費用を払う前に、経理の工数削減効果を稟議で示す方法で、効果を測りにくい投資を段階に分けて審査する方法は生成AI投資の承認基準、効果が測れない投資を段階ゲートで審査する方法で扱った。

統制に組み込む

続けると決めたら、筆者は次の4点を導入と同時に決めることを勧める。

導入と同時に決める記録の型
  • 入力した指示と出力を保存する。どのツールのどの版を使ったかも残す
  • 作業者の欄と承認者の欄を分ける。AIの出力を受け取って根拠と突き合わせた人と、承認した人を記録で区別し、一人に兼ねさせない
  • 会社のデータを外部のサービスに渡す範囲を規程に書く。公表前の数字と個人情報の扱いを明記する
  • 業務記述書、フローチャート、リスクコントロールマトリクスの該当する箇所を、AIを使う前提に書き換える

4点目は後回しになりやすいと筆者は見ている。ツールを入れて文書をそのままにすると、文書に書かれた業務と実際の業務がずれる。文書の更新の進め方は内部統制の3点セットの作り方と更新、形だけの文書にしない運用で扱った。

経理のAI活用事例

経理の工程に関わるAIの活用例を、公開資料2つから取り上げる。どちらも利用の広がりを整理した資料で、個別の会社の名前や効果の数字は示していない。

1つ目は、日本公認会計士協会の研究文書である。監査を受ける会社でのAIの利用について、現時点ではまだ限定的な範囲で利用されている状況であるとしたうえで、現在利用されているものと今後利用が見込まれるものを合わせて、次の4つを紹介している。

  • AI-OCRとその情報を利用した請求書等の処理。請求書から取引先、金額、日付を読み取って入力する、領収書等の摘要から費目を判断して仕訳を起票する、リース契約書から契約条件を抽出する、といった取組である
  • AIによる開示書類の作成。決算情報を入力して、財務指標の分析や決算概況を作成する取組である
  • AIによる不正取引の検出
  • 生成AIによる業務フローチャートの作成。業務記述書やマニュアルから作らせる取組である

2つ目は、金融庁のAIディスカッションペーパーである。金融庁が2024年10月から11月に金融機関等へ行ったアンケート(130社が回答)をもとに、生成AIの用途ごとの導入状況を示している。用途の選択肢には、文書の要約、ドラフト作成、情報検索(社内FAQなど)と並んで「会計・経理関連」がある。文章の要約や翻訳といった汎用的な用途は、すでに7割超の金融機関等が導入済みであったとしている。一方、図表4のグラフでは、「会計・経理関連」の導入は、要約や翻訳といった汎用的な用途より低い水準にとどまっている。任意のアンケートで、回答した先に限った結果である点と、金融分野の調査である点に留意して読む必要がある。

出典:日本公認会計士協会「テクノロジー委員会研究文書第11号 監査におけるAIの利用に関する研究文書」(2024年8月13日)Ⅱ 5. 被監査会社におけるAIの利用(日本公認会計士協会)。金融庁「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」(2026年3月)Ⅱ 1.、Ⅲ 2.(金融庁)。いずれも2026年10月1日確認

この2つを、冒頭の2つの軸に当てはめてみる。以下は筆者の当てはめである。請求書の読み取りと費目の判断は、件数が多い入力の工程であり、AI-OCRや会計ソフトの機能として提供される領域に当たる。開示書類の作成とフローチャートの作成は、人が内容を確かめて仕上げる文書の工程である。情報検索は、規程と基準の検索に当たる。入力の工程は専用の機能が受け持ち、生成AIは文書と検索の工程に向かう、という分かれ方だと筆者は読んでいる。ただし、どちらの資料から見ても、経理での導入はまだ限られている。

精度と統制

AIの精度を上げることと、統制を置くことは、別の課題である。日本公認会計士協会の研究文書は、AIを用いて経理処理や開示書類の作成を行った場合でも、会社の側がその妥当性について説明責任を負うことは従来と変わらないとしている。そのため、AIが導き出した判断や分析の結果について、十分な知識と経験を持った人間が妥当性を評価したうえで、財務諸表等の作成に利用することが求められると述べている。AIが使うデータの正確性や網羅性を検証できる内部統制を整備することも、会社が留意すべき重要なポイントになると考えられるとしている。

同じ文書は、監査人には、会社がAIを適切に利用するための内部統制を備えているか、AIの判断や分析の結果について適切なレビューが実施されているかを評価したうえで、監査を実施することが求められるとしている。この記述から、会社の側にはレビューを実施したことを示せる記録が要ると筆者は考えている。

出典:日本公認会計士協会「テクノロジー委員会研究文書第11号 監査におけるAIの利用に関する研究文書」(2024年8月13日)Ⅱ 5. 被監査会社におけるAIの利用(日本公認会計士協会、2026年10月1日確認)。研究文書であり、会社に義務を課すものではない

人が確認する箇所は、3か所に置くと筆者は整理している。入力の前と出力の後は作業者が、会計処理の前は承認者が確かめる。

人が確認する箇所は、入力の前、出力の後、会計処理の前の3か所
入力の前渡す情報を確かめる
入力してよい区分の情報か、データに誤りや漏れがないかを、作業者が確かめる。
出力の後根拠と突き合わせる
原因の候補は明細で、文章の数字は確定した帳簿で、規程の回答は原文で、作業者が確かめる。
会計処理の前承認者が根拠を見る
承認者は、作業者が確かめた根拠の資料を見て承認する。AIの出力だけを見て承認しない。
筆者の整理である。3か所とも、確認した人と日付を記録に残す。
精度の高さは、確認を省く理由にならない
試してみて出力の誤りが少なかった工程でも、作業者による突き合わせと、承認者の欄を外さない。AI事業者ガイドラインは、AIの出力について精度及びリスクの程度を理解し、様々なリスク要因を確認したうえで利用することを、利用する事業者の重要な事項に挙げている。確認を省くと、だれが何を根拠に判断したかを後から示せなくなる。
出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)第5部 AI利用者に関する事項 U-2)i(総務省、2026年10月1日確認)

経理の仕事はどう変わるか

筆者の見方では、AIを差異の調査と文書の作成に当てると、ゼロから調べて書く時間が減り、代わりに4つの仕事が増える。出力を根拠と突き合わせる検証、参照させる規程や手順書の版の管理、だれが何を確かめたかの記録、そしてAIに何を調べさせるかという質問の設計である。

出力が正しいかを判断するには、会計と自社の業務の知識が要る。仕事がなくなるかどうかより、職務の中身がどう入れ替わるかを見るほうが、人の配置と育成を決めやすい。

職務ごとに何が減り、何が増えるかは生成AI時代の経理の仕事、消える作業と増える仕事を職務単位で書き直すで詳しく扱った。

よくある質問

経理に向いているAIは

工程によって違う。請求書の読み取りや定型の仕訳の起票は、AI-OCRや会計ソフト、ERPが持つ機能の領域である。差異の原因調査、文書の初稿、規程の検索は、生成AIが向く。選ぶときは、回答の根拠を示せるか、入力した情報が機械学習に使われない契約か、入力と出力の記録が残るかを確かめる。

経理の仕事はAIでなくなるか

筆者は、職種がなくなるというより、職務の中身が入れ替わると見ている。調べて書く時間が減り、出力の検証、参照する文書の版の管理、記録、質問の設計が増える。会社の側が経理処理の妥当性について説明責任を負うことは、AIを使っても変わらない。

無料の道具でできるか

公開されている情報だけを扱う範囲なら試せる。会社のデータを入力する場合は、利用規約とプライバシーポリシーを読み、入力した情報が機械学習に使われるかどうかを確かめる。個人データを入力する用途では、利用ルールで認めたツールに限る。上場会社と上場準備中の会社では、公表前の財務情報はどのツールにも入力しない。

仕訳にAIを使うとどうなるか

定型の仕訳は、自動仕訳や読み取りといった既存の機能で処理できる場合がある。判断を要する仕訳に生成AIを使うと、出力に不正確な内容が含まれうるので、承認者が根拠の資料を確かめる手間は残る。筆者は、仕訳そのものより、仕訳の根拠になる調査と説明の文書にAIを当てるほうが、効果を得やすいと考えている。

まとめ
  • 筆者の見方では、経理でAIの効果が出やすいのは、突合で出た差異の調査、文書の作成、規程と基準の検索である。効果は、入力件数よりも、調査と説明にかかる時間で測る。
  • 仕訳の自動化は、既存の機能で足りる場合がある。判断を要する仕訳は、AIに決めさせない。
  • 入れる順番は、利用ルール、小さな工程での試行、統制への組み込みである。入力の前、出力の後、会計処理の前の3か所で人が確認し、記録を残す。上場会社と上場準備中の会社では、公表前の財務情報を入力しない。

次に読むなら、入力してよい情報の決め方を扱った経理財務チームの生成AI利用ルール、公表前の数字をどこまで入力してよいかを勧める。