連結パッケージは、項目を足すほど回収が遅くなる。項目が1つ増えれば、子会社の経理は元資料を探し、集計し、検算する作業を1つ増やすからだ。筆者は、提出の遅れと差し戻しの多くは子会社の能力の問題というより、項目の多さと、科目を読み替える手間から生じると見ている。注記のためだけに集めている項目は四半期ごとに要否を見直し、様式を減らす。
- 連結パッケージは、子会社の単体決算を連結処理へ渡す入口である。ここが遅れると、親会社の作業は始められない。
- 遅れと差し戻しを減らす設計は3つある。科目の対応表を様式に組み込むこと、入力チェックを提出前に効かせること、項目を増やさないことである。
- 提出期日は全社一律にしない。親会社の締めから逆算し、子会社ごとに置く。
連結パッケージとは
連結パッケージとは、親会社が連結決算に必要な情報を子会社から集めるために定めた、共通の報告様式である。子会社は自社の帳簿で単体決算を締めたあと、その数字を親会社の勘定科目と様式に置き換えて提出する。親会社は全社分を合算し、グループ内の取引や債権債務を消去して、連結財務諸表を作る。
連結決算の流れの中で見ると、連結パッケージは単体決算と連結処理の間に位置する。
親会社が合算に取りかかれるのは、全社のパッケージがそろってからである。たとえば子会社が20社あり、19社が第3営業日に提出しても、残る1社が第7営業日なら、連結処理の開始は第7営業日になる。親会社の集計をどれだけ速くしても、この待ち時間は縮まらない。
上場会社の場合、後ろの日程には取引所が示す目安がある。法律上の期限ではなく、取引所による開示の要請である。東京証券取引所は、年度の決算について、遅くとも決算期末後45日以内に内容を取りまとめて開示することが適当であり、30日以内の開示がより望ましいとしている。50日を超えた場合は、その理由と翌年度以降の開示時期の見込みを開示するよう求めている。
この日数の中で、子会社の単体決算、パッケージの作成、親会社の連結処理、開示資料の作成を進めることになる。連結の日程を縮めたいなら、最も遅い子会社のパッケージを何日早く、誤りの少ない状態で受け取れるかを先に考える。連結決算が遅れる原因の全体像は連結決算が遅れる3つの原因、子会社のデータを早く集める仕組みで扱った。
載せる項目
連結パッケージに載せる項目は、使い道で3つに分けられる。合算に使う財務諸表、消去に使う内部取引と債権債務の明細(未実現利益を消去するための内訳を含む)、開示に使う基礎資料である。開示に使う基礎資料には、注記のための情報と、連結キャッシュ・フロー計算書を作るための増減明細が入る。構成の例を表にまとめた。
| シート | 載せる内容 | 親会社での用途 |
|---|---|---|
| 貸借対照表・損益計算書 | 親会社の連結科目に置き換えた残高 | 合算 |
| 株主資本の増減 | 資本金、剰余金、配当の増減 | 投資と資本の消去、株主資本等変動計算書 |
| 内部取引 | 相手会社別の売上、仕入、利息、配当 | 取引高の消去 |
| 債権債務 | 相手会社別の売掛金、買掛金、貸付金、借入金 | 債権債務の消去 |
| 棚卸資産・固定資産の内訳 | グループ内から仕入れた在庫、購入した資産 | 未実現利益の消去 |
| 増減明細 | 固定資産、引当金、借入金の増減 | 連結キャッシュ・フロー計算書 |
| 注記の基礎資料 | セグメント、リース、金融商品、税効果など | 注記の作成 |
財務諸表
貸借対照表と損益計算書は、親会社の連結科目に置き換えた残高で提出してもらう。子会社の帳簿の科目のまま受け取ると、親会社が1社ずつ読み替えることになり、子会社の数だけ作業が増える。
会計方針の差もここで拾う。連結財務諸表に関する会計基準は、同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社と子会社の会計方針を原則として統一するとしている(第17項)。会計方針が親会社と違う子会社には、差を調整した金額か、調整に必要な情報を出してもらう欄を設ける。
内部取引と債権債務
グループ会社どうしの売上と仕入、貸付と借入は、連結では消去する。消去するには、どの会社に対する金額かが分かる明細が要る。相手会社は社名の手入力にせず、会社コードから選ぶ形にする。取引の種類も選択式にする。自由記入の欄があると、同じ相手が別の名前で書かれ、照合が手作業になる。
消去の仕訳そのものの進め方は連結消去仕訳が止まる原因は照合の段取り、内部取引と未実現利益の実務にまとめた。相手先のコードがそろっていても照合が合わない場合の原因は内部取引の消去が毎期ずれる原因は、取引先コードの不統一より伝票の空欄にあるで扱っている。
注記のための情報
注記のための情報は、様式の中で最も増えやすい。セグメント情報、リース、金融商品、退職給付、税効果、関連当事者との取引と、開示の種類ごとに基礎資料が要るからだ。
増えた項目は減りにくい。一度だけ使った項目、年度末にしか使わない項目、親会社の誰が使っているか分からなくなった項目が、様式に残り続ける。子会社は、使われているかどうかを知らないまま毎回埋めている。
設計のポイント
様式の設計で目指すのは、子会社の担当者が、判断に迷わず、一度で、誤りなく入力できる状態である。そのための設計を3つ挙げる。
科目の対応表
子会社の帳簿の科目と、親会社の連結科目の対応を、毎回子会社の担当者の頭の中で読み替えさせない。対応表を作り、様式に組み込む。子会社は自社の試算表を貼り付け、対応表に従って連結科目へ集計された結果を確かめる。次の表は対応表の設例である。
| 子会社の科目 | 連結科目 | 補足 |
|---|---|---|
| 売掛金(グループ外) | 売掛金 | そのまま集計 |
| 売掛金(グループ内) | 売掛金 | 債権債務シートの売掛金の合計と一致させる |
| 未収入金 | その他流動資産 | 金額が大きい場合は内容を記入 |
| 工具器具備品 | 有形固定資産(その他) | 取得と除却は増減明細シートにも記入 |
| 雑収入 | 営業外収益(その他) | グループ内からの受取があれば内部取引シートにも記入 |
対応表の持ち主は親会社にする。子会社が科目を新設したときは、対応表への追加を親会社に届け出る手順を決めておく。届け出がないまま新しい科目が使われると、対応のない残高が生じ、合算で貸借が合わなくなる。
入力チェック
差し戻しの中には、提出前に機械的に確かめられる誤りがある。貸借が一致しない、内部取引の明細の合計が財務諸表の金額と合わない、期首残高が前期末の残高と違う、といった誤りである。これらの検算式を様式に入れ、誤りが残っていれば先頭の一覧に表示される形にする。
- 貸借対照表の資産合計と、負債・純資産合計が一致する
- 損益計算書の当期純利益と、株主資本の増減の当期純利益が一致する
- 内部取引シートの合計が、損益計算書のグループ内取引の金額と一致する
- 債権債務シートの合計が、貸借対照表のグループ内残高と一致する
- 期首残高が、前期に提出した期末残高と一致する
- 増減明細の期末残高が、貸借対照表の残高と一致する
一覧がすべて一致になってから提出する、という決まりにしておく。子会社の担当者が提出前に自分で直せるので、親会社とのやり取りが減る。
項目を増やさない
3つの中で、筆者が最も効果が大きいと考えるのがこれである。様式の項目は、足すときには理由があるが、減らすきっかけがない。そこで、見直しを決算の日程に組み込む。
進め方は単純である。四半期ごとに、親会社の連結担当が様式の全項目を並べ、項目ごとに「誰が、どの資料に使ったか」を書き出す。使い道を書けない項目は、次の四半期から外す候補にする。年度末だけ使う項目は、年度末用の様式へ移す。新しい項目を足すときは、使う人と使う資料、いつまで必要かを台帳に書いてから足す。
親会社の側には、念のため集めておきたいという動機が働く。ただ、子会社が1項目を埋める時間は、項目数と子会社数の掛け算で積み上がる。たとえば使われていない項目が10個あり、子会社が20社あれば、四半期ごとに200か所の入力と検算が生じている計算になる。
回収の運用
様式が整っても、期日と差し戻しの運用が決まっていなければ回収は早まらない。
期日の決め方
提出期日は、親会社の締めから逆算して決める。開示日から、開示資料の作成と監査人への対応に要る日数を引き、親会社の連結処理の日数を引くと、全社のパッケージがそろっていなければならない日が出る。その日を全社一律の期日にはしない。子会社ごとに置く。
先に提出してもらうのは、グループ内取引の金額が大きい会社である。内部取引の相手が多い会社のパッケージが早くそろえば、照合を早く始められる。規模が小さく内部取引も少ない会社は、期日を後ろに置いても連結処理の開始には響きにくい。
子会社の決算日が親会社と違う場合は、前提を様式に書いておく。連結財務諸表に関する会計基準は、子会社の決算日が連結決算日と異なる場合、子会社は連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行うとしている(第16項)。そのうえで、決算日の差異が3か月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができるとし、この場合は決算日が異なることから生じる連結会社間の取引に係る会計記録の重要な不一致について、必要な整理を行うとしている(注4)。どちらの扱いで提出するのかが決まっていないと、毎期その場で確認が発生する。詳しくは子会社の決算日が親会社と違うとき、決算期の統一と仮決算の比較を参照してほしい。
差し戻しの減らし方
差し戻しは、原因ごとに打つ手が違う。原因と対策を表にまとめた。
| 差し戻しの原因 | 起きる場面 | 対策 |
|---|---|---|
| 貸借や明細の合計が合わない | 入力の誤り、貼り付けの漏れ | 検算式を様式に入れ、誤りを先頭の一覧に表示する |
| 科目の読み替えが前回と違う | 担当者の交代、科目の新設 | 対応表を様式に組み込み、新設は届け出てもらう |
| 内部取引の金額が相手と合わない | 計上時期のずれ、為替換算の差 | 本締めの前に相手別残高を当事者どうしで照合する |
| 小さな差異の調査に時間がかかる | 許容する差の基準がない | 調査しない金額の基準と、処理する科目を親会社が決める |
| 何を書く欄か分からない | 記入要領が別ファイルにある | 欄のそばに記入内容を1行で書く |
| 前期と大きく違う数字に説明がない | 増減理由の欄がない | 一定以上の増減には理由の記入を必須にする |
内部取引の差異は、親会社が1社で原因を探すと時間がかかる。売った側と買った側の当事者に、相手別の残高を本締めの前に突き合わせてもらう。差異が出たら、当事者の2社に同時に返す。親会社は、どの取引で、いくら、どちらの金額が大きいかを添える。
許容する差の基準も先に決めておく。1円まで合わせようとすると、調査の時間が際限なく増える。一定の金額に満たない差異は調査せず、決めた科目で処理するという基準を親会社が定め、全社に伝える。
子会社の担当者への説明
期日を伝えるときは、日付だけでなく理由も伝える。開示日から逆算した日程の表を渡し、自社の提出が遅れると後ろのどの作業が止まるのかを示す。期日が親会社の都合で決まったものではないと分かれば、子会社の側でも単体決算の段取りを組み替えやすい。
様式を変えたときは、変更点だけを1枚にまとめて配る。記入要領の全文を送り直しても、どこが変わったかは伝わらない。担当者が交代した子会社には、最初の決算の前に個別に説明する時間を取る。
提出の状況は一覧で持つ。どの会社が提出済みで、どの会社が未提出かを毎日更新し、遅れそうな会社には期日の前に声をかける。全社へ一斉に催促を送るより、連結処理の開始を左右する会社に個別に連絡するほうが、限られた時間の使い方として合理的である。
システムで回すか表計算で回すか
連結パッケージの収集は、表計算ソフトの様式をメールや共有フォルダでやり取りする方法と、連結会計システムの収集機能を使う方法に分かれる。どちらが向くかは、子会社の数と様式の変更の頻度で変わる。
表計算は、子会社が少なく、様式が安定している会社に向く。費用がかからず、子会社の担当者も使い慣れている。弱点は、版の管理と集計である。古い版の様式で提出される、数式が上書きされる、親会社が1社ずつ開いて転記する、といった手間が子会社の数に比例して増える。
連結会計システムは、子会社が入力した時点で検算が働き、提出の状況が一覧で分かり、集計が自動で進む。会計システムから残高を取り込めれば、子会社の入力は補足情報だけになる。SAPの連結機能の位置づけはSAP Group Reportingの位置づけと、連結決算ツールとしての向き不向きで整理した。
ただし、項目の多い様式をそのままシステムに載せても、子会社の作業は減らない。入力先が表計算から画面に変わるだけである。システムを選ぶ前に、項目の見直しと対応表の整備を済ませておくと、導入後に様式を作り直す手間を避けられる。
海外の親会社やファンドへの報告と自社の決算を両方こなす会社は、基準の違いを読み替える列を様式に持つことになる。その設計は海外親会社・ファンド向け報告と自社決算の二重締め、基準差の読み替えを工程に組み込むで扱った。
よくある質問
連結パッケージには何を入れるか
合算に使う財務諸表、消去に使う内部取引と債権債務の明細、開示に使う基礎資料(注記と連結キャッシュ・フロー計算書のための情報)の3種類である。必要なシートは適用する会計基準と開示の範囲で変わる。作るときは、親会社が連結と開示で使う資料から逆にたどり、使い道のある項目だけを載せる。
英語の様式は要るか
海外子会社の経理担当者が日本語を読めないなら必要である。日本語版と英語版を別のファイルにすると、片方だけ更新されて内容がずれる。項目名と記入要領を1つの様式に2言語で併記するほうが、管理の手間は小さい。科目名の訳語は、対応表と同じものを使う。
提出期日はどう決めるか
開示日から、開示資料の作成と監査人への対応に要る日数、親会社の連結処理の日数を順に引いて決める。全社一律にはせず、グループ内取引の金額が大きい会社を先に置く。期日は理由とともに子会社へ伝える。
表計算での運用の限界は
件数で一律には決められない。目安になるのは、親会社の担当者が転記と版の確認に使っている時間である。様式の回収から合算の開始までに、転記と差し戻しのやり取りで何日使っているかを一度測る。その日数が連結の日程を圧迫しているなら、システムでの収集を検討する時期と考えてよい。
- 連結パッケージは連結決算の入口で、最も遅い1社の提出日が親会社の作業の開始日になる。
- 設計では、科目の対応表と検算を様式に組み込み、項目は四半期ごとに使い道を確かめて減らす。
- 運用では、期日を親会社の締めから逆算して子会社ごとに置き、内部取引の差異は当事者の2社で本締めの前に照合する。
次に読むなら、連結全体の日程を扱った連結決算が遅れる3つの原因、子会社のデータを早く集める仕組みと、消去の段取りを扱った連結消去仕訳が止まる原因は照合の段取り、内部取引と未実現利益の実務を勧める。



