採算の悪い事業を手放す方針が固まる。財務アドバイザーに相談すると、まず事業別の損益を出してほしいと言われる。管理会計の数字を渡す。買い手候補との初回の面談で、必ず同じ質問が返ってくる。この共通費は、切り出した後にいくらになりますか。答えられない。そして、答えられなかった分だけ価格が下がる。買い手は、分からないものを高く買わないからである。

POINT
カーブアウトの実務で最初に決めたくなるのがスキームだが、スキームは最後に選ぶ。 先に決めると、労働・契約・許認可の制約が後から効いて日程が壊れるからである。三つの選択肢は、自由度と手続の重さが逆方向にある。事業譲渡 は、会社法第467条第1項が事業の全部の譲渡および事業の重要な一部の譲渡について株主総会の決議による承認を要するとし、第309条第2項第11号によりこれは特別決議となる。ただし第467条第1項第2号は、事業の重要な一部の譲渡のうち 譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないもの を除くとしている。事業譲渡は個々の資産・契約・従業員を個別に移す取引であるため、切り出す範囲を自由に設計できる代わりに、契約は相手方の同意、労働契約は労働者本人の同意、許認可は原則として取り直しが要る。 会社分割 は逆である。吸収分割は会社法第757条以下、新設分割は第762条以下に置かれ、権利義務は分割契約または分割計画の定めに従って包括的に承継されるが、第789条および第810条の債権者異議手続が要る。労働契約は包括承継されるものの、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律 が第2条の通知、平成12年商法等改正法附則第5条に基づく協議(5条協議)、同法第7条の措置を求める。最高裁平成22年7月12日第二小法廷判決(日本アイ・ビー・エム事件)は、5条協議が特定の労働者との関係で全く行われなかったとき、または協議の際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分で法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、当該労働者は労働契約の承継の効力を争うことができる とした。株式譲渡 は最も軽いが、切り出す対象がすでに独立した法人になっていることが前提になる。そして三つのいずれであっても、独占禁止法第16条の届出基準に当たれば、公正取引委員会が届出を受理した日から30日を経過するまで実行できない。

買い手が値をつけられないのは、三つの穴があるから

売り手が「事業別損益は出しています」と言うとき、買い手が見ているのは別のものである。買い手が値をつけるために必要なのは、切り出した後にその事業が単独で稼ぐ利益 であって、社内の管理数字ではない。両者の間には三つの穴がある。

第一に、共通機能の負担額。経理、人事、法務、情報システム、購買、品質保証。これらを単独で持つといくらかかるかは、社内の配賦額とは別の数字である。

第二に、移転しない資産と契約。親会社名義のソフトウェアライセンス、グループ全体で結んだ調達契約の単価、共有している工場設備や検査機器、親会社が保証している賃貸借契約。これらは売却と同時に失われるが、事業別損益にはその費用が今の条件で載っている。

第三に、移行期間の設計。渡せないものを、いつまで、いくらで借りるのか。移行サービス契約(TSA)の範囲と期間と対価である。ここが決まっていないと、買い手は自分でシステムを立ち上げる前提で費用を積み、その分を価格から引く。

三つのうち、売り手が自力で潰せるのは第一と第二である。第三は交渉事だが、範囲の候補を先に整理しておけば議論の入口が変わる。

配賦額とスタンドアロンコストは、別物である

ここが実務で最も誤解されている。事業別損益の共通費は 配賦額 である。配賦は、全社で実際に発生した費用を、何らかの基準で事業に割り振る計算である。「その事業が単独で必要とする額」を計算しているのではない部門別損益(事業部別P&L)の作り方:共通費配賦で揉めない設計)。

買い手が知りたいのは後者である。そして両者は一致しないだけでなく、ずれの方向が機能ごとに逆になる。

単独のほうが安くなる機能がある。 法務がその例である。全社の法務部門は、上場会社としての開示対応、グループ全体の契約審査、係争対応まで抱えている。売却対象事業が必要とするのはこのうち一部で、切り出せば人数も要らない。配賦額のほうが実態より高い。

単独のほうが高くなる機能もある。 情報システムがその例である。基幹システムの保守料、ライセンス、データセンターの費用は、事業の規模に比例していない。単独で同等の環境を持てば、売上高比の負担は跳ね上がる。人事も同様で、給与計算や社会保険の実務は、対象人数が減っても固定的に人が要る。配賦額のほうが実態より安い。

だから「共通費の配賦額はこれです」という説明は、買い手にとって答えになっていない。 高く出ている機能では売り手が損をし、安く出ている機能では買い手が後から気づいて価格の再交渉を持ち出す。どちらに転んでも、売り手の側に不利にしか働かない。

作るべきは、機能ごとに、単独で成立させるために必要な人員数・システム・外部委託費を積み上げた表 である。人事なら給与計算を外部に委託した場合の見積り、情報システムなら必要なライセンス数と保守契約の見積り。この積み上げが、TSAの対価の根拠にもなり、買い手が自社に取り込む場合のシナジーの根拠にもなる。 一枚で二つの交渉に効く。

順番を逆にすると必ず手戻りする。スキームの選択は最後に置く。
STEP 1
① 事業の輪郭を法的な単位で確定する
移す資産・契約・許認可・従業員を一件ずつ列挙する。親会社名義のもの、グループ契約に紐づくもの、共有しているものに印を付ける
STEP 2
② スタンドアロン損益を作る
共通機能ごとに単独で必要な人員・システム・外部委託費を積み上げる。配賦額の付け替えではない
STEP 3
③ 移行サービスの範囲と期間を設計する
渡せないものを何を何年借りるか。対価の根拠は②の積み上げをそのまま使う
STEP 4
④ スキームを選ぶ
事業譲渡・会社分割・株式譲渡。①で洗い出した契約と許認可と従業員の中身が、どれを選べるかを規定する
土台順番の土台=スキームの制約は、移す対象の中身によって決まるから。許認可が引き継げないなら事業譲渡は選べず、チェンジオブコントロール条項の多い契約を抱えていれば会社分割でも個別の同意が要る。中身を見る前にスキームを決めると、後から日程が壊れる。
①②③を終えた会社だけが、④を選択肢として扱える。

スキームの選択は、自由度と手続の重さの交換である

四つ目の工程を、もう少し具体的に見ておく。

事業譲渡の利点は、切り出す範囲を設計できることである。簿外債務や係争を持つ資産を外すことができ、買い手にとってもリスクが読みやすい。代わりに、移転は個別対応になる。契約は債権譲渡・債務引受として相手方の同意が要り、許認可は原則として承継されず取り直しになる。労働契約は当然には承継されず、労働者本人の同意が必要である。 承継対象の従業員が数百人規模なら、この同意の取得だけで日程が決まる。

会社分割の利点は包括承継である。契約も許認可も原則として承継され、個別の同意は要らない。ただし三つの重さが付く。ひとつは債権者異議手続で、会社法第789条および第810条により、異議を述べることができる債権者に対して官報公告と各別の催告を行い、一定の期間を置く必要がある。もうひとつは労働契約承継法の手続で、第2条の通知、5条協議、第7条の措置を踏む。日本アイ・ビー・エム事件の最高裁判決が示したとおり、5条協議を欠けば承継の効力そのものを争われる。 手続の不備が、クロージング後に効いてくる種類のリスクである。三つめは、契約に置かれたチェンジオブコントロール条項である。包括承継でも、条項があれば相手方に解除権が生じる。主要な取引先の契約に条項があるかどうかは、工程①の段階で確認しておく。

株式譲渡は最も軽いが、対象事業が既に独立した法人になっている場合に限られる。逆に言えば、売却を数年先に想定しているなら、先に会社分割で法人を立て、単独決算を数期作ってから株式を譲渡する という順序が取れる。この形なら、買い手に渡す数字が管理会計の推計ではなく、実際の法人の決算になる。価格の説得力が変わる。

そして、いずれのスキームでも独占禁止法の届出が絡む可能性がある。事業等の譲受けについては、譲受会社の国内売上高合計額が200億円を超え、かつ、全部の譲受けの場合は国内売上高が30億円を超える会社の事業の全部の譲受け、事業の重要部分または事業上の固定資産の譲受けの場合は当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合 に届出が必要とされる。届出が必要なとき、会社は届出受理の日から30日を経過するまで実行してはならない。 クロージング日程を先に相手と握ってしまうと、この30日が入らない。

会計と税務は、結論ではなく期をずらす

売る・売らないの判断そのものを会計処理が動かすことは少ないが、いつ損益が出るかは動く。

企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」は、分離元企業の会計処理を、移転した事業に関する投資が清算されたとみるか継続しているとみるかで分けている。投資が清算されたとみる場合 には、受け取った対価となる財の時価と移転した事業に係る株主資本相当額との差額を 移転損益として認識 し、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする。受取対価が現金等の財産のみである場合がこれにあたる。 一方、子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを対価として受け取る場合 には、その株式を通じて移転した事業に関する事業投資を引き続き行っていると考えられるため、投資が継続しているとみなし、移転損益を認識しない。

実務上の含意はひとつである。現金で売り切るのか、株式を持ち続けるのかで、売却益が出る期が変わる。 合弁の形で一部を残す設計にすると、狙っていた特別利益が立たない。中期計画の数字を売却益の計上前提で組んでいるなら、スキームの選択が計画の数字を直撃する。この確認は、条件交渉に入る前に済ませておく。

残る側の話を、同じ会議でする

最後に、売り手側にしか関係しないが、価格交渉には確実に出てくる論点がある。残る事業に乗り移る共通費である。

売却対象事業が負担していた配賦額は、売却と同時に消えるわけではない。本社機能の実額は、事業がひとつ減ってもすぐには減らない。その分は、残った事業の配賦額として上乗せされる。 売却の翌期に、残った事業の採算が理由もなく悪化したように見えるのはこのためである(事業撤退で消えないコスト|残った事業に共通費が乗り移る前に測る)。

この金額を先に測っておく理由は二つある。ひとつは、売却の経済性の判定に要るから。 売却益と、残る事業の悪化分を並べて初めて、この取引が本当に価値を生むかが分かる。もうひとつは、買い手との交渉で必ず話題になるから。 買い手はTSAの対価を値切りたい。売り手はTSAを長く続けるほど本社機能の削減が遅れる。TSAの期間は、売り手にとっては残る側のコスト削減の開始時期そのものである。 期間を延ばす譲歩は、価格の譲歩と同じ重さで扱う。

現場では
売上高1,180億円の産業機器メーカーで、四事業のうち計測機器事業(売上高190億円、営業利益率1.8%)の売却方針が取締役会で承認された。従業員は420名、うち約半数が一つの工場に所属し、同じ工場で別事業の製品も作っている。方針決定から最初の半年は、スキームの議論に費やされていた。事業譲渡か会社分割かで社内が割れ、法務と人事と経理が別々の理屈を出し合ったまま結論が出ない。 経理担当役員が議論を止め、順番を入れ替えた。まず移す対象を一件ずつ列挙する作業に切り替えている。列挙して分かったことが三つあった。第一に、計測機器事業が使っている校正設備のうち二台が、別事業と共用の資産だった。第二に、主要顧客六社のうち四社との基本契約にチェンジオブコントロール条項が入っており、包括承継でも相手方の解除権が生じる。第三に、事業が保有していると思われていた計量法関係の登録が、実際には全社の事業所単位で受けられていた。この三点は、どのスキームを選ぶかを議論する前に確定しておくべき事実だった。 次にスタンドアロン損益を作った。それまでの事業別損益では、本社共通費の配賦額が年間14.2億円だった。機能ごとに単独で必要な体制を積み上げ直したところ、総額は16.8億円になっている。内訳の方向は一定ではなかった。法務・広報・IR関連は配賦額2.6億円に対して単独では0.9億円で足り、逆に情報システムは配賦額3.1億円に対して単独では6.4億円を要した。基幹システムのライセンスと保守が事業規模に比例していないためである。人事も配賦額1.8億円に対して単独では2.4億円だった。この差の総額2.6億円が、それまで買い手に説明できていなかった部分である。 営業利益率1.8%の事業にとって、2.6億円は営業利益3.4億円の大半にあたる。次にTSAを設計した。情報システムについては、買い手の環境が立ち上がるまでの24か月を上限とし、対価は積み上げた6.4億円を基礎に置いた。この数字が交渉の基準線になったため、対価の議論が印象論にならなかった。 スキームは最後に選んでいる。許認可が事業所単位であったこと、チェンジオブコントロール条項が主要顧客四社にあったこと、共用設備が二台あったことを踏まえ、先に会社分割で計測機器事業を子会社化し、単独決算を二期作ってから株式を譲渡する 形とした。共用設備は分割時に親会社に残し、有償の使用契約とした。労働契約承継法の手続については、分割契約の締結の九か月前から5条協議を開始している。対象者420名に対し、部門ごとの説明会に加えて個別面談を全員に実施した。日本アイ・ビー・エム事件の最高裁判決を人事部門と法務部門で読み合わせたうえで、協議の記録を全件残す運用にしている。 残る側の試算も並行して行った。売却後に残る三事業に乗り移る共通費は年間9.1億円と見積もられ、本社機能の削減計画を売却実行と同時に着手する前提で取締役会に諮っている。方針決定から株式譲渡契約の締結まで、結果として二年八か月を要した。担当役員の総括はこうである。最初の半年でスキームを決めていたら、たぶん一年後に決め直していた。決められなかったのは、決めるための材料が無かったからだった。

決めるのは三つ

第一に、スキームを最後に選ぶ。移す対象の列挙から入る。 資産・契約・許認可・従業員を一件ずつ並べ、親会社名義のもの、グループ契約に紐づくもの、他事業と共有しているものに印を付ける。この中身が、選べるスキームを規定する。 事業譲渡は切り出す範囲を設計できる代わりに、契約は相手方の同意、労働契約は本人の同意、許認可は原則として取り直しになる。会社分割は包括承継だが、会社法第789条および第810条の債権者異議手続に加え、労働契約承継法の第2条通知・5条協議・第7条措置を踏む必要があり、最高裁平成22年7月12日判決は5条協議を欠く場合に労働者が承継の効力を争えるとしている。包括承継でもチェンジオブコントロール条項があれば相手方に解除権が生じる。

第二に、配賦額ではなく、機能ごとの積み上げでスタンドアロン損益を作る。 配賦は全社の実額を分ける計算であって、その事業が単独で必要とする額ではない。ずれの方向は機能ごとに逆で、法務のように単独のほうが安くなる機能と、情報システムや人事のように単独のほうが高くなる機能が同居する。配賦額をそのまま出すと、高く出ている機能では売り手が損をし、安く出ている機能では買い手が後から価格の再交渉を持ち出す。 積み上げた表は、そのまま移行サービス契約の対価の根拠になり、買い手にとってのシナジーの根拠にもなる。

第三に、移行サービスの期間を、価格と同じ重さで扱う。 期間は買い手にとって移行の猶予だが、売り手にとっては残る側のコスト削減の開始時期である。売却対象が負担していた配賦額は売却と同時には消えず、残った事業に乗り移る。この金額を先に測っていない会社は、売却益だけを見て取引の経済性を判断することになる。

そのうえで、会計と税務は結論を変えないが期をずらす。企業会計基準第7号は、受取対価が現金等の財産のみで投資が清算されたとみる場合には受取対価の時価と移転した事業に係る株主資本相当額との差額を移転損益として認識するとし、子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを受け取る場合には投資が継続しているとみなして移転損益を認識しないとする。合弁の形で一部を残す設計にすると、狙っていた特別利益が立たない。 そして独占禁止法第16条の届出に当たる場合、届出受理の日から30日を経過するまで実行できない。クロージング日程を相手と握る前に、この30日を入れておく。

まとめ
売却価格が伸びない原因は交渉力ではなく、切り出した後の単独損益と共通機能の負担額を売り手自身が示せないことにある。買い手が値をつけるために必要なのは切り出した後にその事業が単独で稼ぐ利益であり、社内の管理数字ではない。両者の間には三つの穴がある。共通機能の負担額、移転しない資産と契約、そして移行期間の設計である。最も誤解されているのが第一の穴で、事業別損益に載る共通費は配賦額であり、全社の実額を何らかの基準で割り振った計算にすぎず、その事業が単独で必要とする額ではない。しかも、ずれの方向は機能ごとに逆になる。法務のように全社機能の一部しか要らない機能では配賦額のほうが実態より高く、情報システムや人事のように費用が事業規模に比例しない機能では配賦額のほうが実態より安い。したがって配賦額をそのまま提示すると、高く出ている機能では売り手が損をし、安く出ている機能では買い手が後から価格の再交渉を持ち出す。作るべきは機能ごとに単独で成立させるために必要な人員・システム・外部委託費を積み上げた表で、これはそのまま移行サービス契約の対価の根拠にもなり、買い手にとってのシナジーの根拠にもなる。工程の順番は、事業の輪郭を法的な単位で確定し、スタンドアロン損益を作り、移行サービスの範囲と期間を設計し、最後にスキームを選ぶ。スキームを先に決めると、労働・契約・許認可の制約が後から効いて日程が壊れる。事業譲渡は会社法第467条第1項が事業の全部の譲渡および事業の重要な一部の譲渡について株主総会の決議による承認を要するとし、第309条第2項第11号によりこれは特別決議となる。ただし事業の重要な一部の譲渡のうち、譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えないものは除かれる。事業譲渡は個々の資産・契約・従業員を個別に移すため切り出す範囲を自由に設計できるが、契約は相手方の同意、労働契約は労働者本人の同意、許認可は原則として取り直しが要る。会社分割は吸収分割が会社法第757条以下、新設分割が第762条以下に置かれ、権利義務は包括的に承継されるが、第789条および第810条の債権者異議手続が要る。労働契約は包括承継されるものの、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律が第2条の通知、平成12年商法等改正法附則第5条に基づく協議、同法第7条の措置を求める。最高裁平成22年7月12日第二小法廷判決(日本アイ・ビー・エム事件)は、5条協議が特定の労働者との関係で全く行われなかったとき、または協議の際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分で法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、当該労働者は労働契約の承継の効力を争うことができるとした。包括承継であっても、契約にチェンジオブコントロール条項があれば相手方に解除権が生じる。株式譲渡は最も軽いが対象が既に独立した法人であることが前提で、逆に売却を数年先に想定するなら、先に会社分割で法人を立て単独決算を数期作ってから株式を譲渡する順序が取れる。この形なら買い手に渡すのが管理会計の推計ではなく実際の法人の決算になる。いずれのスキームでも、独占禁止法第16条の届出基準に当たれば公正取引委員会が届出を受理した日から30日を経過するまで実行できない。事業等の譲受けについては、譲受会社の国内売上高合計額が200億円を超え、かつ全部の譲受けの場合は国内売上高が30億円を超える会社の事業の全部の譲受け、事業の重要部分または事業上の固定資産の譲受けの場合は当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合に届出が必要となる。会計は売る売らないの結論を変えないが損益の出る期を動かす。企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」は、移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には受け取った対価となる財の時価と移転した事業に係る株主資本相当額との差額を移転損益として認識し改めて受取対価の時価にて投資を行うものとし、受取対価が現金等の財産のみである場合がこれにあたる。子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを対価として受け取る場合には、その株式を通じて事業投資を引き続き行っていると考えられるため投資が継続しているとみなし、移転損益を認識しない。最後に、売却対象事業が負担していた配賦額は売却と同時には消えず、残った事業の配賦額として上乗せされる。売却の翌期に残った事業の採算が理由もなく悪化して見えるのはこのためで、この金額を先に測っていない会社は売却益だけを見て取引の経済性を判断することになる。移行サービス契約の期間は、売り手にとっては残る側のコスト削減の開始時期であり、期間を延ばす譲歩は価格の譲歩と同じ重さで扱う。

関連記事