予算と実績の差異分析で、最初に外すべきものは時期のずれである。計上する月が予算と前後しただけの差異は、翌月に反対の向きで出て消える。これを最初に外さないと、翌月には消える差異の説明に、会議の時間を使うことになる。筆者は、差異を数量や単価に分ける前に、まず時期のずれを取り除く手順を勧める。残った差異だけを分解すれば、分析する量も減る。

この記事の要点
  • 差異は、誰が動けば直るかで分ける。総量は営業と需要、価格は値決め、構成は売る商品の組み合わせ、時期は計上の前後である。
  • 売上も費用も、時期のずれを先に外す。売上は価格と数量に分け、数量をさらに総量と構成に分ける。費用は数量と単価に分ける。
  • 全部の差異を分析しない。金額の大きさと、翌月以降も続くかどうかで、手を付ける差異を絞る。

予算実績差異分析とは何を出す作業か

予算実績差異分析とは、予算と実績の差異を要因に分け、次に誰が何をするかを決めるための作業である。予算と実績を比較して差額を出すところまでは、予実管理表があれば済む。差異分析はその先で、差額がなぜ生じたかを、打ち手の違う要因に分ける。

出すものは3つある。差異の金額、差異の原因、そして対策と担当である。「売上が予算に8,000万円届かなかった」は金額にすぎない。「販売数量は予算どおりだが、値引きで単価が下がった」まで分かれば原因になる。「値引きの承認の基準を営業部長が見直す」まで決まれば、分析は終わりである。

決算で前年や着地見込みとの差を説明する進め方は決算の差異分析の型、予算・前年・着地見込との比較を意思決定につなげるで扱った。この記事は、予算と実績の差異から次の月の対策を決める手順に絞る。

総額の差異だけでは、対策が決まらない。同じ8,000万円の未達でも、数量が足りないのか、単価が下がったのか、利益率の高い商品が売れなかったのかで、動く部署が違う。差異の種類と、計算式、動く部署の対応を表にまとめた。

差異の種類計算式主に動く部署
価格差異(売上)(実績単価 − 予算単価)× 実績数量営業、値決めの責任者
数量差異(売上)(実績数量 − 予算数量)× 予算単価営業(下の2つに分ける)
総量差異(数量差異の内訳)(実績の総数量 − 予算の総数量)× 予算の加重平均単価営業、マーケティング
構成差異(数量差異の内訳)数量差異の合計 − 総量差異営業、商品企画
時期のずれ(売上・費用)計上月が前後した金額計上部門、経理
数量の差異(費用)(実績数量 − 予算数量)× 予算単価費用を使う部門
単価の差異(費用)(実績単価 − 予算単価)× 実績数量購買、費用を使う部門

予実管理の全体の進め方は予実管理が形骸化する3つの理由と、差異を打ち手につなぐ進め方で、比較に使う表の作り方は予実管理表の作り方、科目・部門・月の並べ方と差異の見せ方で扱った。

有利差異と不利差異

差異には向きがある。利益を増やす向きの差異を有利差異、減らす向きの差異を不利差異と呼ぶ。売上は実績が予算を上回れば有利差異、費用は実績が予算を下回れば有利差異である。

符号の付け方は、資料の中で1つに決めておく。売上も費用も「実績 − 予算」で計算すると、売上のプラスは有利、費用のプラスは不利になり、読む人が混乱する。利益への影響でそろえ、有利をプラス、不利をマイナスで示す方法が読み違えにくい。

有利差異は、良い知らせとは限らない
費用の有利差異は、使う予定だった費用を使わなかったことを意味する。広告費や採用費、研修費、修繕費の有利差異は、やるはずだった活動が遅れているか、止まっている合図でもある。売上の有利差異も、値引きで数量を増やした結果なら、利益は予算より減っていることがある。有利差異にも原因を書く。

売上の差異を分ける

売上の差異も、最初に時期のずれを外す。出荷や検収が翌月になっただけの売上は、翌月に同じ金額が計上されて差異が消える。該当する案件と金額を一覧から抜き、解消する月を書いておく。そのうえで、残った差異をまず価格と数量に分け、数量をさらに総量と構成に分ける。最後に残るのは、価格差異、総量差異、構成差異の3つである。設例で計算する。時期のずれは外した後の数字とする。製品Aと製品Bを売る会社の、ある月の予算と実績である。

予算の数量予算の単価予算の売上実績の数量実績の単価実績の売上
製品A1,000個100円100,000円1,400個105円147,000円
製品B1,000個200円200,000円700個210円147,000円
合計2,000個平均150円300,000円2,100個平均140円294,000円
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

売上は予算より6,000円少ない。数量は100個増え、どちらの製品も単価は上がっている。それでも売上が減った理由は、総額を見ても分からない。

価格差異

価格差異は、単価が予算と違ったことによる差異である。実績単価と予算単価の差に、実績の数量を掛ける。

製品Aは(105円 − 100円)× 1,400個で、7,000円の有利差異になる。製品Bは(210円 − 200円)× 700個で、7,000円の有利差異になる。合計は14,000円の有利差異である。値上げは効いている。

数量差異

数量差異は、売れた数量が予算と違ったことによる差異である。数量の差に、予算の単価を掛ける。

製品Aは(1,400個 − 1,000個)× 100円で、40,000円の有利差異になる。製品Bは(700個 − 1,000個)× 200円で、60,000円の不利差異になる。合計は20,000円の不利差異である。総数量は100個増えているのに、数量差異は不利に出ている。この食い違いを説明するのが、次の構成差異である。

構成差異

数量差異は、総量の差異と構成の差異に分けられる。総量差異は、総数量の増減に、予算の加重平均単価を掛けて出す。(2,100個 − 2,000個)× 150円で、15,000円の有利差異になる。

構成差異は、数量差異の合計から総量差異を引いた残りである。△20,000円 − 15,000円で、35,000円の不利差異になる。単価200円の製品Bが300個減り、単価100円の製品Aが400個増えた。個数は増えたが、売れた商品の組み合わせが単価の低い側へ寄った。

設例の売上差異は、3つの差異の合計になる
価格差異
+14,000円(値上げが効いた)
+
総量差異
+15,000円(総数量が100個増えた)
+
構成差異
△35,000円(単価の低い製品へ寄った)
=
売上の差異
△6,000円(294,000円 − 300,000円)
総額の△6,000円からは、構成の悪化という原因は読み取れない。

価格差異を実績の数量で計算するか、予算の数量で計算するかで、価格差異と数量差異の金額は変わる。価格差異を予算の数量で計算する場合は、数量差異を実績の単価で計算する。この組み合わせを守れば、どちらの方法でも合計は同じになる。設例では、予算の数量で取ると価格差異は15,000円の有利差異、数量差異は実績の単価で21,000円の不利差異になり、合計は同じ6,000円の不利差異である。どちらで計算するかを資料の注記に1行で書き、毎月同じ方法を使う。計算の順序と、構成差異を品目ごとに出す方法は売上増減を価格・数量・ミックスに分解する手順と、交差項の扱いで変わる差異で扱った。

費用の差異を分ける

費用の差異も、最初に時期のずれを外し、残りを数量と単価に分ける。費用は構成に分けないので、分け方は売上より単純になる。

時期のずれを先に外す

費用の差異には、計上する月が前後しただけのものが混ざる。予算では4月に計上するはずだった広告費が、納品の遅れで5月の計上になれば、4月は有利差異、5月は同じ金額の不利差異になる。年間で見れば差異は無い。

時期のずれを先に外す理由は、説明しても何も決まらないからである。翌月に反対の向きで出て消える差異に、原因の説明と対策を求めても、打つ手が無い。差異の一覧に「時期のずれ」の欄を設け、該当する金額と、解消する見込みの月を書く。見込みの月を過ぎても解消しない差異は、時期のずれではなく、計画そのものの遅れか中止である。その時点で扱いを変える。

設例で示す。ある部門の4月の費用である。

費目予算実績差異うち時期のずれ残る差異
広告費300万円100万円有利200万円有利200万円(5月に計上の見込み)0
外注費400万円520万円不利120万円0不利120万円
修繕費50万円110万円不利60万円不利60万円(6月の予算分を前倒し)0
合計750万円730万円有利20万円有利140万円不利120万円
設例。数値は説明のために置いた架空のもので、特定の会社の実績ではない。

総額では20万円の有利差異で、問題が無いように見える。時期のずれを外すと、外注費の120万円の不利差異が残る。会議で扱うのは、この120万円だけでよい。

数量と単価

残った差異を、数量と単価に分ける。費用の数量は、費目によって違う。外注費なら作業の日数、人件費なら人数と時間、物流費なら出荷の件数である。

設例の外注費を分ける。予算は100人日 × 4万円で400万円、実績は125人日 × 4.16万円で520万円とする。数量の差異は(125人日 − 100人日)× 4万円で、100万円の不利差異になる。単価の差異は(4.16万円 − 4万円)× 125人日で、20万円の不利差異になる。120万円のうち100万円は、作業の日数が増えたことによる。対策を考える相手は、単価を交渉する購買ではなく、作業の範囲を決めている部門である。

製造原価の差異を材料費・労務費・経費に分ける方法は標準原価と原価差異分析の使い方、差異を責任部署と改善行動に変える読み方で扱った。

どの差異から手を付けるか

差異を全部分析すると、分析する側が先に疲れる。手を付ける差異は、金額と再発性の2つの軸で絞る。再発性とは、同じ差異が翌月以降も続くかどうかである。

手を付ける順は、金額の大きさと、翌月以降も続くかで決める
金額 大 →
原因を確かめて記録する
金額は大きいが一度きり。大口の失注、臨時の費用など
最優先で対策を決める
金額が大きく、続く。構成の悪化、単価の下落、数量の減少
記録だけ残す
金額が小さく一度きり。原因を1行で書いて終える
まとめて原因を探す
1件は小さいが毎月出る。積み上がると大きい
再発性 高(翌月以降も続く)→
右上の差異に、会議の時間の大半を使う。

時期のずれは、金額にかかわらず、解消する月を記録するだけでよい。この図で仕分けるのは、時期のずれを外した後に残った差異である。

再発性は、1か月の数字では判断できない。差異の内訳を3か月分並べ、同じ向きの差異が続いているかを見る。単月の差異にそのつど反応すると、現場は毎月の説明に追われる。3か月続く数量の減少を見過ごせば、対策が遅れる。

金額の基準は、あらかじめ決めておく。予算に対して何%、または何円を超えた差異に原因の説明を求めるかを、費目や部門の規模に応じて置く。基準が無いと、分析の範囲が担当者によって変わる。

差異を打ち手と担当に変える

分析の結果は、差異の一覧に対策と担当を書いたところで完成する。会議に出す資料には、差異ごとに次の項目を書く。

  • 差異の金額と種類(価格、総量、構成、時期、数量、単価)
  • 原因(確かめた事実と、推定を分けて書く)
  • 翌月以降も続くかどうかの見立て
  • 対策と担当者、期日
  • 年間の着地見込みへの影響

差異の種類によって、対策の向きが変わる。続いている数量の減少と構成の悪化は、予算の前提が外れている合図なので、着地見込みを見直し、営業の重点を決め直す。価格差異は、値引きの承認の基準を確かめる。時期のずれは、解消する月を確かめるだけでよい。

差異の記録は、翌期の予算の材料になる。数量の伸び、想定の単価、商品の構成のうち、どの前提が外れたかが分かっていれば、翌期はそこを置き直せる。予算を作る工程の設計は予算管理の進め方、編成・統制・見直しを一つの年間サイクルにするで扱った。

陥りやすい誤り

陥りやすい誤りを4つ挙げる。

1つ目は、差異のコメントが事実の言い換えで終わることである。「売上が減少したため未達」は、表を読めば分かることしか書いていない。コメントには、表からは読み取れない原因を書く。

2つ目は、計算の方法が毎月変わることである。価格差異を実績の数量で出す月と、予算の数量で出す月があると、前月との比較ができない。担当者が替わっても同じ数字が出るように、計算式を資料に書いておく。

3つ目は、分けすぎることである。品目、顧客、地域、担当者のすべての軸で差異を出すと、資料は厚くなるが、読む人が減る。毎月出す軸は1つか2つに絞り、ほかの軸は、説明の付かない差異が出た月にだけ使う。

4つ目は、原因を外部の環境で止めることである。「市況が弱かった」は原因の1つだが、それだけでは対策が決まらない。市況が弱い中で、数量、価格、構成のどれに影響が出たかまで分ける。

よくある質問

差異分析の計算式は

売上の価格差異は「(実績単価 − 予算単価)× 実績数量」、数量差異は「(実績数量 − 予算数量)× 予算単価」で出す。数量差異は、総数量の増減に予算の加重平均単価を掛けた総量差異と、残りの構成差異に分けられる。費用も、数量と単価の差異を同じ形の式で出す。価格差異を予算の数量で計算する方法もあり、その場合は数量差異を実績の単価で計算する。どちらを使うかを決めて、毎月同じ方法で計算する。

有利差異が出ていれば問題ないか

問題が無いとは限らない。費用の有利差異は、予定していた活動が遅れているか止まっていることを示す場合がある。売上の有利差異も、値引きで数量を増やした結果なら、利益は予算を下回ることがある。有利差異にも原因を書き、時期のずれであれば解消する月を確かめる。

どこまで細かく分けるか

対策を決められる細かさまでである。動く部署と担当者が決まるところまで分ければ、それより細かくする必要はない。毎月の定例では、売上は価格・総量・構成、費用は時期・数量・単価までにとどめ、品目別や顧客別の分解は、説明の付かない差異が出たときに行う。

決算の差異分析との違いは

目的が違う。決算の差異分析は、前年や予算、着地見込みとの差を説明し、数字に誤りが無いことを確かめる意味を持つ。予算と実績の差異分析は、次の月に何を変えるかを決めるために行う。使う計算は共通している。

まとめ
  • 予算と実績の差異は、時期のずれを先に外してから分ける。翌月に消える差異の説明に時間を使わない。
  • 残った差異を、売上は価格・総量・構成、費用は数量・単価に分ける。計算式は資料に書き、毎月同じ方法で計算する。
  • 手を付ける差異は、金額と再発性で絞る。差異の一覧に対策と担当、期日を書いたところで分析は完成する。

次に読むなら、売上の分解を詳しく扱った売上増減を価格・数量・ミックスに分解する手順と、交差項の扱いで変わる差異と、予実管理の全体を扱った予実管理が形骸化する3つの理由と、差異を打ち手につなぐ進め方を勧める。