情報の入り方は、だいたい三通りである。内部通報窓口に匿名で入る。監査法人の担当パートナーから、ある取引について確認したいと連絡が来る。取引先の経理から、残高が合わないという照会が来る。どの入り方でも、最初に社内で出る言葉は同じである。まず事実を確かめよう。 経理部の中で担当者に聞き、証憑を見て、それから経営に上げる。
この手順が、後で最も高くつく。社内で確かめた事実は、後から独立性を問われて、もう一度ゼロから確かめ直すことになる。 三週間かけて作った社内の調査メモが、第三者委員会の設置後に「参考資料」としてしか扱われない。そのあいだ、有価証券報告書の提出期限は近づいている。
初動で決めるべきは、誰がやったかではない。誰が、どの範囲を、どんな独立性で調べるかである。
POINT
最初に潰れやすい選択肢を一つ挙げる。顧問弁護士に調査を任せると、第三者委員会には転換できない。 日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年7月15日、改訂2010年12月17日)は、第2部第2の5で「企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない」と定め、その脚注で 「顧問弁護士は、『利害関係を有する者』に該当する」 と明記している(企業等の業務を受任したことがある弁護士や社外役員については直ちに該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断されるとする)。同ガイドラインが対象とする第三者委員会は、「企業等から独立した委員のみをもって構成され」 るものであり、その使命は「経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復すること」にある。発覚の当日にいちばん頼りたい相手が、いちばん任せてはいけない相手だという構造になっている。顧問弁護士の役割は、調査の実施ではなく、調査体制の設計と会社側の助言に置く。
監査法人へ伝えないという選択肢は、制度上ない#
社内で確かめてから、という発想がまず壊れるのはここである。
監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」の第38項は、監査人が入手すべき経営者確認書の記載事項として四つを挙げ、その(4)に 「従業員、元従業員、投資家、規制当局又はその他の者から入手した財務諸表に影響する不正の申立て又は不正の疑いがある事項に関する情報を監査人に示した旨」 を置く。(3)は、経営者による不正または不正の疑い、内部統制において重要な役割を担っている従業員による不正または不正の疑い、それ以外の者による財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある不正または不正の疑いに関する情報を示した旨である。
通報を受けた事実そのものが、経営者確認書の対象になっている。 調査が終わるまで伏せておくという判断をした場合、その期の確認書は事実と異なる内容で署名されることになる。CFOがサインする書面である。
伝えた後に何が起きるかも、先に読んでおく。監基報240の第39項は、監査人が不正を識別した場合または不正が存在する可能性を示す情報を入手した場合、法令により禁止されていない限り、適切な階層の経営者に適時にコミュニケーションを行わなければならないとする。第F39-2項は、経営者の関与が疑われる不正または不正の疑いを発見した場合、第40項に従って監査役等とコミュニケーションを行い、協議の上、経営者に問題点の是正等適切な措置を求めなければならない、とする。第40項は、経営者による不正等について適時に監査役等とコミュニケーションを行うことを要求し、不正または不正の疑いに経営者の関与が疑われる場合には、監査を完了するため必要となる監査手続の種類、時期及び範囲についても協議しなければならないとしている。
そして決算が止まる条文がある。第F38-3項は、監査責任者が不正による財務諸表の重要な虚偽表示の疑義があると判断した場合、当該疑義に係る監査チームの対応について適切な審査担当者による審査を受け、審査が完了するまでは意見を表明してはならないと定める。「疑義」の入口も明文化されていて、第F35-3項は、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況について経営者の説明に合理性がないと判断した場合、または追加的な監査手続を実施してもなお十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合を、疑義として扱わなければならないとしている。説明に合理性がないと判断されるか、証拠を出せないかのどちらかで、監査意見が止まる。 初動で会社側が「確認中です」を繰り返す運用は、後者に直結する。
さらに第37項は、不正または不正の疑いにより虚偽表示が行われ、監査契約の継続が問題となるような例外的な状況において、監査人が職業的専門家としての基準および法令上の責任を判断し(企業、監査役等または規制当局等の第三者への報告が必要かどうかを含む)、契約の解除の当否を考慮するとしている。第42項は、不正を識別した場合に法令により適切な規制当局へ報告することが求められているか、職業倫理規程により追加的な対応として例示されているかを判断しなければならないとする。監査法人の側にも、会社と別に動く歯車がある。
発覚から最初の三日で決めるのはこの五つ。事実関係の解明はこの後に始まる。順序を入れ替えると、後戻りが発生する。STEP 1
証拠を保全する
第三者委員会ガイドラインは、調査開始に当たって調査対象となる証拠を保全し散逸・隠滅を防ぐ手立てを講じるべきだとし、企業等は証拠の破棄・隠匿等に対する懲戒処分等を明示すべきだとする。端末・メール・システムログの保全指示を最初に出す
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STEP 2
報告先と順序を決める
監査役等(監査役会・監査等委員会・監査委員会)へ先に上げる。経営者の関与が疑われる場合、監基報240第F39-2項と第40項は監査人と監査役等の協議を前提に組み立てられている
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STEP 3
調査主体を決める
社内調査、弁護士を入れた内部調査委員会、第三者委員会の三択。顧問弁護士は第三者委員会の委員になれない。ここを誤ると後から転換できない
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STEP 4
監査法人へ連絡する
第38項の経営者確認書は不正の申立てに関する情報を監査人に示した旨を含む。調査が終わるまで伏せるという選択肢は制度上ない
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STEP 5
開示の枠を置く
調査スコープ、開示先の範囲、結果を開示する時期を先に出す。ガイドラインは、期間内に終わらない場合は合理的な調査期間を再設定して開示すべきだとする
土台土台=初日に「犯人探しをしない」と決めること。第三者委員会ガイドラインは、事実認定の権限は第三者委員会のみに属するとし、関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多いとする。
初動で決めるのは事実ではない。誰がどの範囲を、どんな独立性で調べるかである。
第三者委員会を置くなら、置いた瞬間に手放すものがある#
三択のうち第三者委員会を選ぶと、会社側が手放すものがはっきりしている。日弁連ガイドラインの第2部第2は、独立性・中立性についての指針としてこう並べる。調査報告書の起案権は第三者委員会に専属する。 判明した事実とその評価は、企業等の現在の経営陣に不利となる場合であっても記載する。第三者委員会は、調査報告書提出前に、その全部又は一部を企業等に開示しない。 調査の過程で収集した資料等については、原則として第三者委員会が処分権を専有する。
ドラフトを事前に見せてほしい、という要望は制度の設計上通らない。 ここを理解しないまま設置すると、報告書の提出直前に社内が混乱する。
会社側の義務も具体的である。同第3は、第三者委員会が受任に際して企業等に求める事項として、所有するあらゆる資料・情報・社員へのアクセスの保障、従業員等に対する調査への優先的な協力の業務命令、そして求めがある場合の事務局の設置を挙げる。事務局は第三者委員会に直属するものとし、事務局担当者と企業等の間で厳格な情報隔壁を設ける。 経理部の誰かを事務局に出したら、その人物からは社内に情報が流れてこない。人員計画をそこまで含めて組む。
報酬の建て付けも決まっていて、弁護士である委員および調査担当弁護士に対する報酬は時間制を原則とし、脚注は委員の著名性を利用する「ハンコ代」的な報酬も、企業等が期待する調査結果を導こうとする動機につながりうる成功報酬型も、不適切な場合が多いとする。総額が読めない契約を、資金繰りの中に置く必要がある。
委員数は3名以上が原則で、委員となる弁護士は当該事案に関連する法令の素養があり、内部統制・コンプライアンス・ガバナンス等の企業組織論に精通した者でなければならないとされる。事案の性質により、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が加わることが望ましい場合も多い。会計不正であれば、公認会計士とデジタル調査の専門家が実質的に必須になる。
上場会社であれば、日本取引所自主規制法人が2016年2月24日に公表した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の四原則、すなわち不祥事の根本的な原因の解明、第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保、実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行、迅速かつ的確な情報開示が、社外からの評価軸になる。四つのうち二つが、調査の設計そのものについて述べている。
過年度に遡るかどうかが決まらないと、当期の決算も出せない#
遡及の要否は、会計処理の論点として語られることが多いが、実務上の効き目は日程に出る(会計方針の変更・見積りの変更・誤謬の訂正|どれに当たるかで遡及も開示も変わる)。
金融庁企画市場局「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の24-13は、有価証券報告書等の提出期限の延長承認における「やむを得ない理由」の類型として、「過去に提出した有価証券報告書等のうちに重要な事項について虚偽の記載が発見され、当事業年度若しくは当連結会計年度の期首残高等を確定するために必要な過年度の財務諸表若しくは連結財務諸表の訂正が提出期限までに完了せず、又は監査報告書を受領できない場合であって、発行者がその旨を公表している場合」 を挙げる。次の類型は、監査法人等による監査により重要な虚偽の表示が生じる可能性のある誤謬または不正による重要な虚偽の表示の疑義が識別されるなど、追加的な監査手続が必要なため提出期限までに監査報告書を受領できない場合で、やはり**「発行者がその旨を公表している場合」**という条件が付いている。
両方とも、公表していることが要件である。 隠しながら期限を延ばすことは、制度が許していない。
添付書類も重い。同24-13の⑵は、これらの類型に該当する場合、理由を証する書面に加えて、新たな提出期限の妥当性に係る監査法人等の見解を記載した書面を確認するとし、その内容として、原因となった事実に関して監査法人等が実施した監査手続、発覚後に実施予定の追加的な監査手続の内容、そして虚偽記載などの発覚の前後における発行者の財務報告に係る内部統制に対する認識を含むとする。加えて、発行者の代表者による当該申請を行うことについての認識および有価証券報告書を早期に提出するために実施する方策について記載した書面も求められる。
提出期限を1か月以上延長する場合には、さらに条件が乗る。同⑶のなお書きは、企業情報が開示されないことによる投資者への悪影響に配慮し、発行者が取引所等の規則に基づく開示等において、重要な虚偽の表示が生じる可能性のある誤謬または不正についての確認を行っているか、過去の虚偽記載を自認し、その解決及び是正に向けた真摯な取組みを投資者に対して早期に表明しているかなど、情報開示の状況も考慮して期間の妥当性を判断するとしている。
つまり、開示の質が延長の長さを左右する。 発覚から開示までの日数、開示文で自認した範囲、再発防止に向けた表明。これらが後の日程を決める。適時開示の判定そのものは平時のルールに従うが、判定できないことは開示しない理由にならない(適時開示の判断|「決まった」といつ言うかを事前ルールにする)。
現場では
売上高520億円の専門商社で、七月の内部通報から始まった。海外子会社の営業責任者が、期末に売上を先行計上しているという内容である。CFOの最初の反応は速かった。その日のうちに、当該子会社と本社の関係部署に対して、メールとファイルサーバーの保全を指示している。 前年に第三者委員会ガイドラインを読んでいて、調査開始に当たって証拠を保全し散逸・隠滅を防ぐ手立てを講じるべきだという指針を覚えていた。二日目に監査役会へ報告した。三日目、CFOは顧問弁護士に電話をしたが、依頼したのは調査ではなく体制の設計である。「先生には委員になっていただけません」と先に言った。 顧問弁護士は同ガイドラインの脚注を確認し、利害関係を有する者に該当することを認めたうえで、候補となる法律事務所を三つ挙げた。四日目に監査法人へ連絡している。担当パートナーの最初の質問は、通報の受領日と、それまでに社内で誰が何を確認したかだった。この質問が、経営者確認書の記載事項に直結していることをCFOは知っていた。 調査の設計では二つを争点にしている。一つは範囲で、当該子会社の当該営業責任者だけを見るのか、他の海外子会社にも同種の取引がないかを見るのか。第三者委員会ガイドラインが、調査対象は不祥事を構成する事実関係にとどまらず、経緯、動機、背景及び類似案件の存否、内部統制やガバナンス上の問題点、企業風土にも及ぶとしていることを踏まえ、類似案件の探索を範囲に含めた。もう一つは事務局で、経理部から二名を出す案に対し、CFOはその二名を調査期間中は経理の業務から完全に外した。事務局は委員会に直属し、事務局担当者と会社の間に厳格な情報隔壁を設けるという指針に従ったためである。九月の第一週に第三者委員会を設置し、調査期間を十一月末までとして開示した。実際には十二月中旬までかかっており、期間内に終わらないことが見えた時点で、合理的な調査期間を再設定して再度開示している。設定した期間内に終わらせることに固執して不十分な調査で終わるべきではないという指針が、この判断を支えた。 有価証券報告書の提出期限は延長承認を得ている。申請にあたっては、監査法人から新たな提出期限の妥当性についての見解を書面で受け、代表取締役名で早期提出のための方策を記載した書面を添えた。開示から申請までの段取りが逆であったなら、この書面は作れなかった。 翌年、CFOは社内の危機対応マニュアルを書き換えている。追加した項目は多くない。証拠保全の指示文の雛形、顧問弁護士に頼めることと頼めないことの一覧、そして経営者確認書の該当条項の写し。三ページである。 CFOはこう言っている。あの三日間でやったことは、調べることではなく、調べる人を決めることだった。決めるのに三日かかったのではなく、決め方を前の年に読んでいたから三日で済んだ、と。
決めるのは三つ#
第一に、調査主体を、発覚から三日以内に決める。 日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」は、企業等と利害関係を有する者は委員に就任できないとし、顧問弁護士がこれに該当すると脚注で明記している。顧問弁護士に調査を任せた案件は、第三者委員会へ転換できない。顧問弁護士に頼むのは調査ではなく体制の設計である。 第三者委員会を選ぶなら、調査報告書の起案権は委員会に専属し、提出前に会社へ開示されず、収集資料の処分権も委員会が専有することを、設置の前に社内で共有しておく。事務局は委員会直属で、会社との間に厳格な情報隔壁が要る。
第二に、監査法人への連絡を、調査の結論より前に置く。 監基報240第38項の経営者確認書は、従業員・元従業員・投資家・規制当局その他の者から入手した不正の申立てに関する情報を監査人に示した旨を含む。伝えないという判断は、確認書を虚偽にする。伝えた後、第F39-2項と第40項により監査人は監査役等と協議し、経営者の関与が疑われる場合には監査手続の種類・時期・範囲まで協議の対象になる。第F38-3項により、疑義があると判断された場合は審査が完了するまで意見を表明できない。決算が止まる条文が、監査基準の側にある。
第三に、開示を、期限延長の前提として設計する。 企業内容等開示ガイドライン24-13が挙げる過年度訂正型と追加監査手続型の類型は、いずれも「発行者がその旨を公表している場合」を要件とする。⑵は監査法人等の見解を記載した書面と、代表者による早期提出のための方策の書面を求める。⑶のなお書きは、1か月以上の延長にあたって、虚偽記載の自認と是正に向けた真摯な取組みの早期表明を含む情報開示の状況を考慮するとしている。開示の速さと自認の範囲が、そのまま日程の余裕になる。
そのうえで、初日に犯人探しをしないと決める。同ガイドラインは事実認定の権限が第三者委員会のみに属するとし、関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多いとする。責任の話を調査に混ぜると、調査の独立性と、社内からの協力の両方が同時に落ちる。
まとめ
会計不正の発覚直後に社内だけで事実確認を進めると、後から独立性を問われて調査をやり直すことになる。初動で決めるのは犯人ではなく、調査主体・調査範囲・過年度への遡及要否・監査法人への連絡順序の四点である。最も取り返しがつかないのが調査主体で、日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年7月15日公表、2010年12月17日改訂)は第2部第2の5で企業等と利害関係を有する者は委員に就任できないとし、脚注で顧問弁護士がこれに該当すると明記する(企業等の業務を受任したことがある弁護士や社外役員は直ちに該当するものではなくケース・バイ・ケースで判断される)。同ガイドラインの第三者委員会は企業等から独立した委員のみで構成され、すべてのステークホルダーのために調査を実施し結果を公表することで企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする。したがって顧問弁護士の役割は調査の実施ではなく体制の設計と会社側への助言に置く。監査法人への連絡を後回しにする選択肢は制度上存在しない。監査基準報告書240第38項の経営者確認書は、経営者による不正または不正の疑い、内部統制において重要な役割を担っている従業員による不正または不正の疑い、それ以外の者による財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある不正または不正の疑いに関する情報を監査人に示した旨に加え、従業員、元従業員、投資家、規制当局又はその他の者から入手した財務諸表に影響する不正の申立て又は不正の疑いがある事項に関する情報を監査人に示した旨を含む。第39項は不正または不正の可能性を示す情報を入手した場合の適切な階層の経営者への適時のコミュニケーションを、第F39-2項は経営者の関与が疑われる場合に第40項に従って監査役等とコミュニケーションを行い協議の上で経営者に是正等適切な措置を求めることを要求する。第40項は経営者の関与が疑われる場合、監査を完了するために必要となる監査手続の種類、時期及び範囲についても監査役等と協議しなければならないとする。第F35-3項は、示唆する状況について経営者の説明に合理性がないと判断した場合、または追加的手続を実施してもなお十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合を不正による重要な虚偽表示の疑義として扱うこととし、第F38-3項は疑義があると判断した場合、審査が完了するまで意見を表明してはならないと定める。第37項は監査契約の継続が問題となる例外的な状況における対応を、第42項は適切な規制当局への報告の要否の判断を求める。第三者委員会を設置する場合、会社側が手放すものは明確である。調査報告書の起案権は委員会に専属し、判明した事実と評価は現在の経営陣に不利であっても記載され、委員会は提出前に報告書の全部または一部を企業等に開示せず、収集した資料等の処分権を専有する。企業等は所有するあらゆる資料・情報・社員へのアクセスを保障し、従業員等に調査への優先的協力を業務として命令し、求めがあれば委員会直属の事務局を設置して事務局担当者と企業等の間に厳格な情報隔壁を設ける。委員数は3名以上を原則とし、報酬は時間制を原則として成功報酬型やハンコ代的報酬は不適切とされる。上場会社であれば、日本取引所自主規制法人が2016年2月24日に公表した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の四原則、すなわち不祥事の根本的な原因の解明、第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保、実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行、迅速かつ的確な情報開示が社外の評価軸になる。過年度への遡及の要否は日程に効く。金融庁企画市場局「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」24-13は、過去の有価証券報告書等に重要な虚偽記載が発見され当期の期首残高等を確定するために必要な過年度財務諸表の訂正が提出期限までに完了しない場合と、監査により重要な虚偽の表示が生じる可能性のある誤謬または不正による重要な虚偽の表示の疑義が識別されるなど追加的な監査手続が必要な場合を延長承認の類型として挙げるが、いずれも「発行者がその旨を公表している場合」を要件とする。⑵はこれらの類型について、理由を証する書面に加えて、新たな提出期限の妥当性に係る監査法人等の見解(実施した監査手続、実施予定の追加的手続、発覚の前後における発行者の財務報告に係る内部統制に対する認識を含む)を記載した書面と、発行者の代表者による申請についての認識および早期提出のために実施する方策を記載した書面を確認するとする。⑶のなお書きは、1か月以上延長する場合、虚偽記載の自認と解決・是正に向けた真摯な取組みの早期表明を含む情報開示の状況も考慮して期間の妥当性を判断するとしている。開示の速さと自認の範囲が、そのまま日程の余裕になる。最後に、初日に犯人探しをしないと決める。事実認定の権限は第三者委員会のみに属し、関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多いとされる。責任追及を調査に混ぜると、調査の独立性と社内からの協力が同時に落ちる。
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