社外CFOの助言は、月次の数字が締まっていない会社では使えない。資金調達の設計も、管理会計の立ち上げも、銀行との交渉も、直近の実績が月ごとにそろっていることが前提になるからだ。数字が2か月遅れで、部門別の内訳も出ない状態で頼むと、社外CFOの時間は数字の確認に使われやすい。筆者は、頼む前に確かめるべきことは人選よりも、自社に数字を作る体制があるかどうかだと考えている。そのうえで、任せる範囲と自社に残す責任を分ける。

この記事の要点
  • 社外CFOの助言は、月次の数字が締まっていないと使えない。頼む前に、月次決算がいつ、どの粒度で出ているかを確かめる。
  • 頼めるのは、設計と助言と交渉の支援である。資金調達の組み立て、管理会計の設計、IPO準備の論点整理は、成果物として定義できる。
  • 決裁と説明の責任は社内に残る。社外CFOの案を誰が選び、誰が社内に説明するかを、契約の前に決める。

社外CFOとは

社外CFOとは、会社に常勤せず、業務委託などの契約で財務の設計と助言を担う外部の専門家である。法令に定義はなく、呼び方は事業者によって違う。非常勤CFO、CFO代行、シェアードCFOといった名前も使われるが、月に数日関わり、資金調達や管理会計、上場準備を支援するという中身はおおむね重なる。この記事では、まとめて社外CFOと呼ぶ。

名前にCFOと付いていても、制度上の位置づけは常勤のCFOと違う。確かめておく点が2つある。

1つ目は、会社に対する責任である。会社法は、取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人を「役員等」と呼び、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定めている(第423条第1項)。業務委託で関わる社外CFOは、取締役などに選任されていない限り、この「役員等」に入らない。負うのは、契約で引き受けた業務についての責任である。業務委託が委任や準委任に当たる場合、受任者は善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負う(民法第644条、第656条)が、その対象は引き受けた事務に限られる。

2つ目は、開示の制度での扱いである。内部統制報告書の様式(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令、以下「内部統制府令」の第一号様式)には【最高財務責任者の役職氏名】の欄があり、会社が財務報告に関し代表者に準ずる責任を有する者として最高財務責任者を定めている場合に記載する。金融庁のガイドラインは、この最高財務責任者について、単に財務を担当している者は含まないとしている。上場会社でこの欄に名前が載る人と、月に数日関わる社外CFOは、同じCFOという語でも指すものが違う。

出典:会社法第423条第1項、民法第644条・第656条、内部統制府令 第一号様式 記載上の注意(4)(e-Gov法令検索。会社法、民法、内部統制府令、2026年10月17日確認)。内部統制府令ガイドライン(令和5年6月)4-1(金融庁、2026年10月1日確認)

つまり、社外CFOに頼んでも、判断の責任を負う人は社内に残る。ここを曖昧にしたまま契約すると、社内では「あの人が見てくれている」という認識だけが生まれ、決める人がいなくなる。

任せてよい業務

社外CFOに期待する仕事は、2種類に分けて考える。作る仕事と、通す仕事である。

作る仕事は、材料と経験があれば外から持ち込める。資金調達の組み立てを設計する、管理会計の科目体系と配賦の基準を設計する、銀行に出す資料の型を作る、といった仕事である。成果物として定義でき、納品されたかどうかを判定できる。

通す仕事は、社内の関係の上にしか成り立たない。事業部長に配賦の基準を受け入れてもらう、営業に与信の期限を守ってもらう、社長に投資の見送りを進言する、経理の担当者に新しい手順を定着させる、といった仕事である。これは専門性よりも、その会社での信用と決裁の権限で動く。月に数日関わる人に、社内の信用は積み上がりにくい。

任せてよいのは、作る仕事である。代表的な3つの領域で、任せる成果物の例を挙げる。

領域任せる成果物の例社内に残すこと
資金調達調達手段の比較、銀行への提出資料と想定問答、返済計画の複数案どの案を選ぶか、金融機関との最終的な合意
管理会計科目体系と配賦基準の定義書、月次報告の雛形、実データでの試算事業部への説明、基準の適用、月次の運用
IPO準備準備の工程表、資本政策の案、監査法人や証券会社から問われる論点の整理上場するかどうかの判断、社内体制の整備の実行

どの領域でも、前提になるのは月次の数字である。資金調達の資料は直近の試算表から作る。管理会計の試算は実データが要る。IPO準備では、月次決算を期日どおりに締める体制づくりそのものが課題になる。数字が出ていなければ、社外CFOは設計の前に数字の整備から始めることになり、頼んだ仕事に時間を割けない。

任せる範囲は、専門性の高さより、社内の合意形成が要るかどうかで分ける
社内の合意形成が要る度合い 高 →
社内に残す
投資の見送り、配賦基準の適用、人事評価。外部は材料だけを出す
設計を任せ、自社で通す
資金調達の組み立て、管理会計の設計。設計は外部に任せ、説明と決裁は自社の役員
社内で運用する
月次の締め、支払、日常の税務。外に出すなら経理代行やBPOの契約が合う
外部で完結する
銀行や監査法人に向けた論点整理、他社の進め方の紹介、管理職への技術指導
外部にしかない知見の度合い 高 →
右上が社外CFOの主な持ち場である。左上を任せると、案は出ても決まらない。

自社に残す責任

自社に残るのは、決める責任と、説明する責任である。

決める責任は、社外CFOが出した複数の案から1つを選ぶことである。返済計画の3案のうちどれを取るかは、事業の計画と照らして社長と担当役員が決める。社外CFOが推す案と違う案を選んでもよい。大事なのは、選んだのが自社だと社内で明確になっていることである。

説明する責任は、決めたことを社内と社外に伝えることである。配賦の基準を変えるなら、事業部長に説明するのは自社の役員である。銀行に返済計画を説明する場に社外CFOが同席しても、会社として約束するのは代表者である。

もう1つ、頼む前に自社で整えておく責任がある。数字を作る体制である。次の点を確かめておく。

頼む前に確かめる、数字を作る体制
  • 月次決算が、翌月の決まった日までに締まっているか
  • 試算表が、部門別か事業別に分かれて出ているか
  • 売掛金、買掛金、借入金の残高が、明細と合っているか
  • 資金繰り表が、少なくとも3か月先まで作られているか
  • 経理の日常業務に指示を出す管理職が、社内に決まっているか

満たしていない項目があるなら、社外CFOより先に、経理の体制を整える。経理の担当者を採る、経理代行を使う、会計事務所との分担を見直す、といった手当てである。経理の一人目に任せる範囲はスタートアップの一人目の経理に任せる仕事は、記帳より資金と契約の入口で、管理部長が経理を兼ねている会社の進め方は管理部長が経理を兼務する会社で、経理機能を自立させるまでの順番と二人目の要件で扱った。

体制が整っていないまま頼むと起きること
月次が締まっていない会社が社外CFOを入れると、最初の数か月が数字の整備に使われやすい。それ自体は必要な仕事だが、頼んだはずの資金調達や管理会計の設計は進みにくくなる。数字の整備を頼むのか、設計を頼むのかを、契約の前に分けておく。数字の整備は、経理の実務を担う別の契約で頼むほうが合う。

契約の形と働き方

社外CFOとの関わり方は、大きく3つの形に分けられる。

契約の形によって、買うものと責任の範囲が変わる
時間で決める月額の顧問契約
月に何日、月額いくらで契約する。相談には応じてもらいやすいが、何が納品されたかを判定しにくい。
成果物で決める期間と成果物の契約
3か月から6か月の期間と、その間に納める成果物を列挙して契約する。更新の判断がしやすい。
役員に就く取締役への就任
株主総会で取締役に選任する。会社法上の役員としての責任を負う。取締役会を置く会社では、その決議に加わる。
成果を判定しやすいのは、成果物で決める形である。

筆者が勧めるのは、成果物で決める形である。時間で契約すると、成果を判定できず、更新するかどうかも判断しにくい。期間を区切り、納める成果物を先に列挙する。資金調達なら、銀行への提出資料の一式と想定問答、返済計画の複数案。管理会計なら、科目体系と配賦基準の定義書、月次報告の雛形、初回の実データでの試算である。成果物を定義できない依頼は、外に出しにくい依頼だと考えてよい。

相手が、従業員を使わない個人か、代表者1人だけで従業員のいない法人の場合は、契約の書き方に法律の定めがある。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律は、業務委託事業者が特定受託事業者に業務委託をした場合、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により明示しなければならないとしている(第3条第1項)。公正取引委員会と厚生労働省の「考え方」は、役務の提供を委託した場合の給付の内容を「提供されるべき役務」とし、品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要があるとしている。何の役務を提供するのかを書く必要があり、「月に2日」という日数だけでは足りないと筆者は考える。

出典:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)第2条第1項、第3条第1項(e-Gov法令検索、2026年10月17日確認)。公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」第2部「特定受託事業者の給付の内容」の項(公正取引委員会、2026年10月1日確認)

働き方では、指示の経路を決めておく。経理の担当者への日常の指示は、自社の管理職が出す。社外CFOは、その管理職に対して手順を設計し、技術を指導する。管理職が自分の言葉で説明できない手順は、社外CFOの契約が終わった後に続かない。

契約の終わり方も最初に書く。「常勤のCFOを採れるまで」は期限にならない。採れる時期が読めないから外部に頼んでいるのであり、この書き方では契約がいつまでも続く。書くのは2つである。1つは内製化の条件で、どんな人を採れたら、あるいは社内の誰が何をできるようになったら契約を終えるのかである。もう1つは引継ぎの成果物で、設計書、手順書、銀行や監査法人とのやり取りの記録、想定問答を社内に残すことを、契約の成果物に含める。

費用の見方

社外CFOの費用について、統計として公表された相場は見当たらない。事業者が公開している料金も、月に関わる日数と任せる範囲の条件がそれぞれ違い、金額だけを並べても比べられない。ここでは、見積もりを比べるときの見方を示す。

費用を左右するのは、主に4つである。月に関わる日数、成果物の範囲、案件の難しさ、成功報酬の有無である。資金調達の支援では、調達額に応じた成功報酬が付く契約もある。この場合、月額が低くても、調達が成立したときの総額は大きくなる。

見積もりは、月額ではなく成果物に対する金額で比べる。同じ月額でも、3か月で提出資料の一式と返済計画の3案を納める契約と、月に2回の会議に同席する契約では、得られるものが違う。成果物ごとの金額に直すと、比べやすくなる。

顧問税理士、社外CFO、常勤CFOの違いを、役割と費用の形で整理した。

顧問税理士社外CFO常勤CFO
主な役割税務書類の作成と申告の代理、税務相談資金調達、管理会計、上場準備の設計と助言財務の方針の決定、社内外への説明、組織の運営
関わり方月次または決算期月に数日、期間を区切る常勤
決裁への関与助言まで案の提示まで権限の範囲で決裁する
会社に対する責任契約した業務の範囲契約した業務の範囲取締役または執行役に就いていれば会社法上の責任を負う。執行役員や従業員の場合は契約上の責任
費用の形月額の顧問料と決算料月額、または成果物ごと。成功報酬が付く場合がある役員報酬または給与。採用の費用がかかる
表は一般的な関わり方を整理したもので、契約の内容によって変わる。

選ぶときに確かめること

社外CFOを名乗る人の経歴は幅が広い。上場会社のCFO経験者、公認会計士、金融機関の出身者、投資会社の出身者などがいる。経歴の華やかさより、自社が頼みたい成果物を作った経験があるかを確かめる。

契約の前に確かめること
  • 頼みたい成果物と同じ種類のものを、自社と近い規模の会社で作った経験があるか
  • 成果物の見本、または目次を見せてもらえるか(守秘義務に反しない範囲で)
  • 月に関わる日数と、質問への返答にかかる時間の目安
  • 同業の他社と同時に契約していないか。している場合の情報の扱い
  • 契約を終えるときに、何を社内に残してもらえるか
  • 取締役への就任を前提にするのか、業務委託にとどめるのか

探し方は、紹介、専門の事業者、仲介のサービスに分かれる。取引銀行や監査法人、株主からの紹介は、自社の状況を知っている人が間に入る利点がある。どの経路でも、最初の契約は短い期間と少ない成果物で始め、納品物を見てから範囲を広げるのが安全である。経理や財務の専門人材を業務委託で入れるときの分担は経理に業務委託や副業のプロ人材を入れるとき、任せられる業務と社員が担う業務でも扱った。

常勤のCFOを採る時期の見極め

社外CFOは、常勤のCFOの代わりを続けるための仕組みではない。会社の段階が進めば、社内で決めて説明する人が要る。筆者は、段階を次のように整理している。

会社の段階が進むと、財務の体制の中心が外から内へ移る
STEP 1
数字を作る段階
経理担当と顧問税理士で、月次を期日どおりに締める
→
STEP 2
設計を借りる段階
社外CFOに、資金調達と管理会計の設計を頼む
→
STEP 3
社内で決める段階
常勤のCFOが、方針の決定と社内外への説明を担う
段階の区切りは売上の規模では決まらない。決める事項の量と頻度で見る。

常勤を採る時期の目安になるのは、通す仕事の量である。金融機関や投資家との交渉が毎月のように続く、事業部との予算の調整が常にある、上場準備で監査法人や証券会社への説明が増える、といった状態になると、月に数日の関与では足りなくなる。社外CFOの成果物が増えているのに、社内で決まらない事項が積み上がっているなら、常勤を採る時期に来ている。

筆者の見方では、社外CFOを入れると、採用の緊急度が下がりやすい。外部を入れた月に、常勤を採る期限と、期限までに採れなかった場合の代替案を決めておく。代替案には、社内の経理責任者を財務の責任者に登用して育てる道もある。候補の見極め方はCFO候補の見極めと育成、経理部長との違いを5つの判断軸で整理するで、着任した後の進め方は新任CFOの最初の90日は制度を直す期間ではない、先に確保する三つのことで扱った。常勤のCFOと経理、FP&Aの役割の分け方はFP&Aの役割と組織、経理・経営企画との境界を実務から引くにまとめている。

よくある質問

社外CFOの費用相場は

統計として公表された相場は見当たらず、事業者が公開している料金も条件が違うので、一つの金額では答えにくい。金額は、月に関わる日数、成果物の範囲、案件の難しさ、成功報酬の有無で変わる。複数の候補から見積もりを取り、月額ではなく成果物ごとの金額に直して比べることを勧める。

どんな会社に向くか

月次の数字が期日どおりに締まっていて、資金調達、管理会計の立ち上げ、上場準備のように、期間と成果物を区切れる課題がある会社に向く。月次が締まっていない会社は、先に経理の体制を整える。社内で決まらないことが課題の会社には、外部の助言を足しても解決しにくい。

顧問税理士との違いは

顧問税理士は、税務書類の作成と申告の代理、税務相談を主に担う。社外CFOは、資金調達や管理会計、上場準備といった、これからの判断のための設計と助言を担う。過去の数字を正しくまとめる役割と、その数字を使って先の計画を組む役割の違いである。両方を1人が担うこともあるので、契約でどこまでを頼むかを書き分ける。

どこで探すか

取引銀行、監査法人、株主、同業の経営者からの紹介のほか、社外CFOを専門にする事業者や、専門人材を仲介するサービスがある。どの経路でも、頼みたい成果物を先に書き出し、同じ種類の成果物を作った経験があるかを確かめてから契約する。

まとめ
  • 社外CFOに頼む前に、月次の数字が期日どおりに、部門別に出ているかを確かめる。出ていなければ、先に経理の体制を整える。
  • 任せるのは、資金調達、管理会計、IPO準備の設計と助言である。契約は期間と成果物で決め、終わる条件と引継ぎの成果物を最初に書く。
  • 決める責任と説明する責任は社内に残る。社内で決まらない事項が積み上がってきたら、常勤のCFOを採る時期である。

次に読むなら、候補を社内から見つけるCFO候補の見極めと育成、経理部長との違いを5つの判断軸で整理するを勧める。